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詩) 部屋

   部屋

僕の手の届かぬ場所へ
その声の哀しさ―――

哀しさ、と
君はそれを理解できない

僕の立つこの部屋の広さを
―――戻り、振り向く

みずから見出すことを
予測することの幻滅と幻影に沈める―――

それは胸でも、掌でもない
君が差し出すそれは、ただの「時間」だろう

扉を開き
戸外の大気に融かされるがまま
ああ、そしてこの胸の奥に射し込み、拡がるにまかせる陽光よ
お前の、その―――掌こそ
・・・僕の心

空間とは何?
それは君の世界を形にするものですか?

あの木間(このま)から洩れるものを
―――流れに導き、ちりばめること

おお、間接的に君が創造した世界よ
それを迷路のように楽しんでいればいい

心の中で呟くことなど―――無感覚
大気に融け込んだ僕自身に包まれる―――そのことを

遥かに遠いようにみえたものが
いま、この胸に沁み入り、拡がっている

僕自身であることの―――その意味を体現する
僕自身であることの・・・同時に
何ものにも妨げられぬ・・・同時に
融合体であることの―――その意味を

君のその、ふるえる指をくれるなら
君自身から、かすかに融け出そうとしている・・・その指を

僕の手の届かぬ場所へ
その声の哀しさ―――

その胸の奥の
君自身の気付いていない広い部屋へ―――
―――戻ろう・・・

          (2004.1.1)

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