![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/55198578/rectangle_large_type_2_9e2a8c01428902ddc5ae310d4d10ad4c.jpg?width=800)
詩) To Sea of Silence water
To Sea of Silence water
はらはらとした歩み、海へと続く小径(こみち)
僕であるところの―――この隣人
君が言い出した
「曇りであれば、小径自身が海へ顔を向ける」と
祈りの風がスカートの裾を引く・・・
白いウェディングドレスの裾を捧げ持つ、ひと組の童子のように
砂浜はまだ見えない
けれど海原は望める
小径の両側を縁どる 叢(くさむら)が知っているとは思えない
理知という無用の創造物を生み出した人間の神など
遠く、そして、広い
抱くことも、抱かれることもできないほど
白く、ほの暗い雲の模様が君を先導する
生の遥か彼方に感じられるという、Sea of Silence water へ
無であるように見えるものを並べてみるという
それを繰り返してきた僕を、君は連れて行くという
陽光(ひかり)は、なぜこの丘に棲むことが適わぬのか
君の抱く、最愛の生である陽光は、なぜ近付かぬのか
止めることができるはず―――
僕の背に広がる、被造物の世界に戻ることもできるはず
が、
しかし
僕の侵した人間の世界、毒づいた世界
そこで犯した罪とは単なる冒涜でも侮辱でもない
君は微笑するのか
ああ、その、時間を揺らし、大気を薄め、僕を魅惑する君の微笑こそ、海には似つかわしくない
なのに、知っているというのか・・・
彼方にたなびく雲の、遥か向こうにあるという、Sea of Silence water を
差し出された掌の、ほのかな温かさ
そこに沈む無邪気な企みを、この小径は容認する
私達の行動の、衝動の、その意味するところ
いや、その事実そのものさえ―――沈む叢
小径を歩む、僕たちにも
いずれ砂浜が見えるにちがいない
終わらせることのできぬ「To」
その始まりとなる砂浜が
(2004.1.4)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?