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詩) 死の街

   死の街

コバルトのように青い花びらを持つバラに
朝露の滴り落ちる中を
私は無人の街をさまよう

その被造物は、この街から
ある次元を奪い尽くしているかのように
息一つしていない

光は揺らぐことなく固定され
その影はべた塗りの色のように
死んでいる・・・

右にも
そして左にも
青いバラ、バラ、そしてバラ―――

私はその花弁に触れてみる
まるでバターのような手触りと
血の気のない肌のような冷たさと

太陽はなにものをも温めることなく
色をのみ与えている
まるで全てが死んでいるようだ

私は息苦しさに締め付けられ
今にも気を失いかけ
青いバラの傍らに膝を折った

私は地面の砂を掘り
それを撒き散らしてみたが、それはまるで
破砕されたプラスチックのようだった

この青いバラを作出した者は誰なのだ
存在し得ぬと言われていた青いバラなど
誰が作り出したのだ

ふと、その鋭いとげで指を切った私は
立ち上がり、滲み出た血をその花弁に塗りつけた
するとどうだろう

光はかすかに揺らぎはじめ
空気は慄えを帯びはじめ
色彩は温かく散らばりはじめたのだ

そして青いバラは
次々と赤く染まっていった
触れるとびろうどのように暖かな赤に―――

気の遠くなるような眩暈のうちに
私は意識を取り戻しつつあった
しかし―――
既に街は死んでいた

          (2003.7.19)

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