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詩) 流砂

   流砂

風に吹き溜められた砂が
斜面を流れてゆく
一様に薄く均一に流れるのではなく
一筋の線を流れ
流れながら渓(たに)をつくる

吸い込まれるような無音のくぼみの中に
空を流れる雲を見上げる―――
滲むように白く
水の中に噴出された粘質な白濁液のように
触手のように拡散する雲を

僕は認識というものを
底知れぬ海の深さを
自分を大気と化すことを
陽光として溶けてしまうことを
想っている

あらゆる「表示」が消えてしまえばいい
あらゆる「標識」が消えてしまえばいい

くぼみの中を立ち上がり
遥か遠くに見渡すと
かすかな波頭の白さと
かすかな潮騒が僕を招いた

          (2004.1.9)

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