見出し画像

企画の立ち上げについて② - IT×お化け屋敷「怨の家」制作裏側

岐阜県大垣市の古民家をリノベーションしたイベントスペース「ennoie ミドリバシ」を貸し切って開催したお化け屋敷「怨の家」(主催:合同会社4D Pocket×カラメル、協力:HOPTER TECH SCHOOL)。
その制作の裏側をお見せします。

IT×お化け屋敷「怨の家」プロデューサーの石郷 祐介です。
前回の記事に引き続き、ITを使った無人のお化け屋敷の企画がどのように立ち上がったのか、その経緯と意図について記録していきたいと思います。

会場について

「怨の家」の企画を進める上で重要だったのは会場をどこにするのかといったことでした。お化け屋敷内のギミックのは、会場の間取りや環境に合わせて、アイデアや使用技術を決めていくので会場を決めないことには企画を進めていくことができません。

お化け屋敷の会場について、私には本企画を立ち上げたときから、ひとつの候補がありました。それは、岐阜県大垣市で多数の古民家をリノベーションされている株式会社現代設計事務所様が運営されていたイベントスペース「ennoie ミドリバシ」でした。「ennoie ミドリバシ」も古民家をリノベーションした物件で、イベントスペースとして年会費を支払うと借りることができました。
弊社4D Pocketは、設立当初に「ennoie ミドリバシ」の前身の「ennoie」にオフィスを置いており、現代設計事務所の皆様にはお世話になったこともあって、本企画でイベントスペース「ennoie ミドリバシ」を盛り上げたいという気持ちがありました。

イベントスペース「ennoie ミドリバシ」外観

そこで、イベントスペース「ennoie ミドリバシ」を前提として、IT×お化け屋敷「怨の家」を作成しました。企画書については、前回の投稿に書いています。
また、企画の途中で「ennoie(「縁の家」が由来)」と同じ読みである「怨の家(えんのいえ)」というタイトルを思いつき、「もう会場はここしかない!」と思ったのと同時に、会場の名前をネガティブな名前にすることに、現代設計事務所様から反対されるのではないかとドキドキしていたのを覚えています。

企画書の表紙

幸いにもIT×お化け屋敷「怨の家」企画は、大変面白がっていただき、イベントスペース「ennoie ミドリバシ」を会場に開催が決定しました。

定期ミーティング

【総合ディレクター/演出】青木 聖(カラメル)
【アートディレクター】中村 魁斗(HOPTER TECH SCHOOL)
【テクニカルディレクター】佐藤 宏樹(カラメル)
【演出補佐/撮影/広報】清水 亮太
【演出補佐/デザイン/Web】出口 瑞渉(HOPTER TECH SCHOOL)
【デザイン】小寺 真里亜(HOPTER TECH SCHOOL)

本企画のコアメンバーとなっているのは、私が以前教えていた専門学校の卒業生たちです。
それは学生時代から自分たちのお金で作品制作をしてきた教え子たちが、制作費が足りずに思ったことができないという姿を見てきて、今回の企画は弊社がすべて制作費を出すので、やりたかったことをすべてやってほしいという想いがありました。
そして、制作は私が共同代表を務めるフリースクール「HOPTER TECH SCHOOL」の学生たちにお願いして、学生たちにも技術力の向上や経験を積んでほしいと考えていました。

制作スタッフ集合写真(「怨の家」開催後に撮影)

メンバーが集まり、開催日を決定し、制作が始まりました。
コアメンバーの半数が社会人だったため、一定の進捗を出すために、毎週水曜日の20時〜メンバー全員で集まって定期ミーティングを開催しました。
「怨の家」は、新型コロナウイルスのまん延防止の観点から開催を延期した関係で、準備期間として1年以上かかっています。その期間、ほぼ毎週集まっていましたので、50回以上のミーティングを行ったことになります。

定期ミーティングの様子
定期ミーティングの様子
定期ミーティングの様子
定期ミーティングの様子
定期ミーティングの様子

ギミックマップ

「怨の家」のギミックアイデアは、私が専門学校やフリースクールで実施している「プロトタイピングメソッド」という手法を用いて考えました。
「プロトタイピングメソッド」の詳細については、下記の記事にまとめていますので、ご参照ください。

これまで私たちは問題を解決するタイプのアイデアを出したことはあっても、ホラー演出のアイデア出しは初めてで、どのように進めていくかは暗中模索状態でした。
以前の投稿でも書いた通り、今回の企画の成り立ちは私たちの技術やその応用について体験者に知っていただくことにありました。そのため、私たちがお化け屋敷ファンというわけでも、ホラー演出に慣れているわけでもありません。
ただし、企画を始めたときから「ホラー演出の専門家ではないことを言い訳にはしない」ということをコアメンバーで決めていました。お化け屋敷として充分見ごたえがあるクオリティにする。

まずは、それぞれが今回のお化け屋敷に使えそうな技術や演出をリサーチするところから始めました。X(旧:Twitter)、Youtube、Tiktok等のSNSから、ホラー演出の技法をみんなでスプレッドシートにまとめ、定期ミーティングの際に、今回の企画にどのように使えそうか話し合いました。

リサーチをまとめたスプレッドシート

リサーチをまとめていきながら、ホラー演出に必要な最低限の空間づくりにおいてもメンバーで学んでいきました。
空間づくりやギミック選定は、下記の点を基準としました。

  • 視界や移動空間を制限すること

  • 機械の稼働音はできるだけ小さくすること

  • 音による驚きを多用しない

  • 人を出演させない

この基準を決める上で、お化け屋敷プロデューサーである五味弘文さんの様々なインタビューや書かれたテキストが非常に参考になりました。

本企画時には、新型コロナウイルスが猛威を振るっており、全国のお化け屋敷もリモートや人と接触しない演出づくりが求められていました。
そのような自由度が少ない環境下では、「恐怖」演出のエッセンスが凝縮されます。つまり、人が恐怖を感じるとはどういうことなのかを、それぞれのお化け屋敷企画者が考える時期にありました。そういう「恐怖」演出について研究や言語化が進んだ時期だったのは、私たちが演出を学ぶ上で良い時期だったと思います。

アイデアスケッチ共有の様子

上記のリサーチや空間づくり基準からメンバーがそれぞれアイデアスケッチを描き、共有したアイデアスケッチの中から投票を行いました。
そして、ギミックが決定し、会場に合わせて配置図(ギミックマップ)を作成しました。

配置図(ギミックマップ)
※ ギミック名はメンバーしかわからないコードネームになっている

このギミックマップをもとに開発を進めていき、現地でのテストを繰り返し行っていくことになります(ギミックの詳細は次回)。

この家にあの子は奪われた――
ITを用いた驚かせ役がいない前代未聞の無人お化け屋敷「怨の家」
日時:8月27日(土)・28日(日)
参加:完全予約制(32組限定)
場所:ennoie ミドリバシ(岐阜県大垣市西外側町2丁目46)
https://ennoie.4dpocket.co.jp/

「怨の家」スタッフ
【プロデューサー】石郷 祐介(合同会社4D Pocket)
【総合ディレクター/演出】青木 聖(カラメル)
【アートディレクター】中村 魁斗(HOPTER TECH SCHOOL)
【テクニカルディレクター】佐藤 宏樹(カラメル)
【演出補佐/撮影/広報】清水 亮太
【演出補佐/デザイン/Web】出口 瑞渉(HOPTER TECH SCHOOL)
【デザイン】小寺 真里亜(HOPTER TECH SCHOOL)
【開発】間宮 祥太(サン企画)、石原 武流(HOPTER TECH SCHOOL)、木村 俊行(HOPTER TECH SCHOOL)、地海 斉樹(HOPTER TECH SCHOOL)、若林 亮吾(HOPTER TECH SCHOOL)、江﨑 亜美(HOPTER TECH SCHOOL)、奥村 元春(HOPTER TECH SCHOOL)、後藤 翔哉(HOPTER TECH SCHOOL)、中島 暢慎(HOPTER TECH SCHOOL)、深尾 真矢(HOPTER TECH SCHOOL)、山田 さくら(HOPTER TECH SCHOOL)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?