#39: ここから先の映画・TV・演劇予測(アメリカ)
NPR の Pop Culture Happy Hour の4人のホストたちが、2020年9月16日のポッドキャストで『コロナ禍は、今後のテレビ・映画・演劇の作品やアーティストたちにどのような影響を及ぼすか?』をテーマに語りました。
彼ら曰く、
If you want your predictions bold and wrong, this is the place to go.
(大胆で間違った予測を聞きたければ、このポッドキャストです、(笑))
では、4人の説をみていきましょう。
演劇:バブル環境での上演、ペイ・パー・ビュー方式の導入で、ファン層が拡大する
スティーヴン・トンプソン記者は1分38秒から3分29秒で 、演劇の今後について、vaguely optimistic (漠然とだが、楽観的)と語ります。
NBAなどのスポーツの世界で導入されている”バブル”(閉鎖環境で隔離された試合形式)が演劇の世界でも取り入れられるのではないか、と予想しています。
特に、出演者が生で歌うミュージカルで、顕著になるのではないか、と。
(こちらのバブルの画像は、USA Todayから拝借しました)
例えば、ブロードウェイ・ミュージカルは今後はバブルな環境で上演され、観客はペイ・パー・ビュー方式で、自宅から作品を鑑賞する。
ミュージカルの正統派ファンからは批判もあるだろうが、高額なチケットを買えない人もペイ・パー・ビューで視聴できるようになる。
そのため、演劇ファンの裾野は最終的に拡大し、演劇の在り様そのものが新しいものに変わっていく。
テレビ:自主隔離フォーマットをNetflixが確立し、大成功を収める
リンダ・ホルムズ記者は4分3秒から5分24秒で、 Coastal Elites や Love in the Time of Corona のように、隔離対策期間に工夫を凝らして制作された作品も出始めているが、やがてはNetflix が新たな、低制作費の鉄板フォーマットを確立する、と予想しています。
その理由は、
Volume. Netflix just makes so much stuff right now. They are throwing money at all kinds of different things. They want a piece of absolutely everything that anybody is doing.
(ボリューム。Netflixはとにかく膨大な量を制作している。ありとあらゆるものに制作費を投入している。誰かが何かをやっていれば、自分たちも絶対手をつける、と決めている。)
表現全般:コロナ禍をテーマにした作品は、当分生まれない(誰も振り返りたくないから)
グレン・ウェルデン記者は5分25秒から8分57秒で、2001年9月11日の同時多発テロと比較して、表現全般に対する影響の仕方が今回のコロナ禍に関しては、全く異なってくるだろう、と予想しています。
911の場合は、事件から4~5年経ってから、映画・テレビ番組・書籍・演劇の世界で、『善 vs. 悪』の枠組みをベースにした、”制裁”や”正義”というテーマの作品が多く発表されるようになった。人々はそれらを見て当時を振り返り、自分の考えを整理し、気持ちを落ち着かせていった。
今回のコロナ禍の場合は、コロナをテーマにした作品が発表されるにはもっと時間がかかるだろう。
なぜか。コロナ禍に関して、『善 vs. 悪』のような枠組みは存在しない。大事件が起きたわけでもない。「自分はどこにいて、何をしたか」をストーリーにしようにも、日々がぼんやりしている。全ての人が同じように自主隔離しているから、特筆すべきこともない。そして辛い状況は、今もずっと続いている。
今はみんなが「早くこの自主隔離期間から抜け出したい」と思っている。
だから、かなりの時間が経っても「この時のことを振り返りたい」と考える人は出てこないのではないか。5年ではきかないと思う。
映画・テレビ:コロナ禍は通奏低音として、そこはかとなく表現される
コロナ禍そのものがテーマとなるには5年以上かかるだろう、とグレンが語ったのを受けて、アイーシャ・ハリス記者は9分5秒から12分22秒で、2020年~2021年を特定する表現要素として、さりげなくマスクが使われるようになるだろう、と予想します。
グレンも言ったように、誰もこの時代を喜んで振り返ろうとは思わない。だからこそ、アンダーカレント、通奏低音のように、さりげない表現がコロナ禍を表すようになると思う。
『俺たちに明日はない』を見れば貨物列車、移民労働者、建物差し押さえの看板から「時代は世界恐慌時代なんだ」と雰囲気で感じられる。
そのような、コロナ禍を表現するビジュアル・キュー(視覚的刺激)としては、マスク、だと思う。
例えば、地面に落ちているマスクを誰かが踏みつける。
或いは、部屋の中にいる人物が、家の外で歓声が沸くのを聞いて、窓から頭を突き出して一緒に拍手して、部屋の中に戻る、とか。
スティーヴン記者は最後に、こうまとめました。
スマッシュ・マウスの『オール・スター』の曲が流れると、「1998年~2001年の頃のことね~」とわかるように、マスクが2020年~2021年という時代を表す目印になる、ということかもね。
ということで、スマッシュ・マウスです(笑)。
いがらしじゅんこ:通訳者
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