見出し画像

小佐野彈『車軸』(毎日読書メモ(308))

小佐野彈『車軸』(集英社)を読んだ。
とても遠い場所にいる人の話を読んでいる、という印象。
小説の登場人物にそんなに共感したり肩入れしたりすることはなく、自分との違いを認識しながら読むことが多いのだが、この小説に出てくる人たちはわたしの狭い体験では理解不可能に近い。友達になれないとかそういうフェーズで語れない遠さ。
こういう世界もあるのかな、というぼんやりしたイメージ。
自分の置かれた環境に対する怒りとか葛藤とかを、彼らがやっているようなやり方で解消できるものなのか? そこがどうにも理解出来ない。
人間関係の描き方はくっきりしていて、「車軸」というタイトルの表しているものもよくわかる。でも、真奈美の、潤の、求めているものが、彼らを幸せにするように見えず、苦しい。

全然違うのだが、真奈美の行動を見ていて思い出したのは、有吉佐和子『真砂屋お峰』(中公文庫)だった。40年以上前に読んだきりなので、細かいことは殆ど忘れているが、主人公お峰が途中で、悟ったようにある方向に突っ走っていくのを、中学生だったわたしはよく理解出来なかった(今読んだらもう少しわかるのかな?)。それは当時の自分の価値観では到底理解出来ない言動で、でもそんな自分自身は40年以上たった今も変わっていない気がする。その違和感が、『車軸』を読んだときの気持ちとちょっと似ているような。そう思うと主人公の名前(真奈美)が「まなごやおみね」と同じ音をとっているように思えてきたり(なんたる牽強付会)。

小佐野さんはもともと歌人として出てきた人なので、今度は歌集も読んでみようかな、と思う。

追記:その後有吉佐和子『真砂屋お峰』(中公文庫)再読してみた(ここ)、意外と腑に落ちる共通点があって面白かった。

#読書 #読書感想文 #小佐野彈 #車軸 #集英社 #有吉佐和子 #真砂屋お峰

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?