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恩田陸『薔薇のなかの蛇』(毎日読書メモ(289))

恩田陸『薔薇のなかの蛇』(講談社)は、水野理瀬シリーズ17年ぶりの新作である。先日、『愚かな薔薇』(徳間書店)を読んでいて(感想ここ)、先に刊行されていた『薔薇のなかの蛇』も読んでなかった、と思って慌てて借りてきた。
何しろ17年ぶり。シリーズものを書かない訳ではないが、点と点を結ぶように、細々と物語世界がつながっている感じの恩田陸のシリーズものは、間があきすぎて、どんな話だったっけ、とぼんやりした読者には思い出せなくなっていることも多いが、検索したら、三宅香帆さんの丁寧な解説ページが出てきたので、ここでおさらい。振り返ってみて、理瀬シリーズってこんなに出ていたんだっけ、と驚く。
北海道の湿原の中、全寮制の学校にやってきた水野理瀬、生徒たちをお茶会に招く校長、腹を見せずに付き合う生徒たち。深い闇。
そこから時が流れ、今回の『薔薇のなかの蛇』の舞台は、イギリス、ソールズベリーの貴族の館。一族の主に召集された親族たちが友人や恋人などを誘い、血縁のない人も含め沢山の人の集った屋敷で、猟奇的な事件が起こる。近くの村で起こった殺人事件によく似た事件と関係があるのか模倣犯なのか?
当主の娘、アリスに誘われ、このブラックローズハウスにやってきたのが、美術史を勉強しているリセ・ミズノ、紋章学に造詣が深い。
事件が起こり、何人かの主要登場人物たちが推理する。人は見た目によらない、というしごく当たり前の事実に、驚く位驚愕したりする。結局のところ被害者は誰で、謎の真相は何だったのか、それを解き明かすのは、思いもかけない人物で、しかも、恩田陸によくある、すべてがすっきりと解決したわけでなく、含みを残した終わり方。
次は17年待たずに、理瀬と再会したいものです。
これまでの水野理瀬シリーズ同様、北見隆のイラストによる装丁なのも懐かしい。

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