毎日読書メモ(63)『田園発 港行き自転車』(宮本輝)
宮本輝『田園発 港行き自転車』(上下・集英社、現在は集英社文庫)。ちょっと地縁のある富山県の物語(そもそもが北日本新聞の連載だ)、ということもあって親近感(宮本輝も富山に住んでいたことがあったね)。本の作りも美しく、舞台(富山と京都)とか舞台回しの小道具(自転車とかゴッホとか)もきれいで、愛されやすい物語かな、と思う。
上巻:もし私が一人の生命の苦しみをやわらげ 一人の苦痛をさますことができるなら 気を失った駒鳥を 巣にもどすことができるなら 私の生きるのは無駄ではない(エミリ・ディキンソン) (下巻275ページ) たまたましおりをしたページで2回目に触れたら、忘れられなくなった。人は何故生きるか、という一つの指針になるかも。 例によって、別々の場所に住む老若男女が、運命の導きで距離を縮めていく物語。悪い人はいない、ような、そうでもないような。会話文の中の富山弁とかが頭の中で再生される。北陸街道を歩いてみたくなる。(2016年1月)
下巻:本の作りについての文句を言うとすれば、登場人物紹介、上下巻紹介している人と、いっぱい出てくる人がずれている。それから、富山の地図が載っているが、何故かポイントとなる岩瀬の地名が入っていない。 富山の入善、滑川、金沢、東京新宿、京都の宮川町、めいめいに暮らしている善男善女が運命の糸に導かれるように近づいていく。結構あからさまにお金の話が出てきたり、どろどろしている部分もあるが、今回はツーリング用自転車、ゴッホの「星月夜」といった小道具をかすがいに、結びついていく。水のきれいさ、景色の美しさが印象的。(2016年1月)
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