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あなたはイギリス派?イタリア派?アメリカ派?「自分のあり方」から考える服の選び方

あなたは普段、どうやって自分が着る服を選んでいますか?

「服の選び方がよくわからない」「自分に似合う服の見つけ方がわからない」などの声を聞くことがよくあります。

流行のデザインや色、素材、価格など、選び方は、人によって違いますが、私は以前から服を選択する基準の中で「自分がどうありたいか」という考え方が大事だと思っているんです。

服選びの基準は、デザイン、素材、色だけでなく、「なりたい自分」や
「服の持つ考え方」を理解すれば、自分のイメージにより近づけることが
出来るようになります。

イギリス、イタリア、アメリカなど、日本にも影響を受けている各国の
服の発祥や考え方、人に与える印象を知ることで、今までとは別の服選びの視点を持てることになるのです。

国別テイスト

上の図表にあるように、服のルーツは大きく分けてイギリス、イタリア、アメリカという3ヶ国にあり、現在日本のお店に並んでいる服も、何かしら大きな影響を受けています。この3つのおもな違いは、歴史や文化的な背景からくる考え方。

そこで今回は、服を選ぶ新しい基準として提唱したい、「なりたい自分のイメージ」と「3つの国をルーツにもつ服の持つ考え方」の相関関係について、より深く考察してみたいと思います。

知的さ、誠実さをアピールしたいなら…「イギリス」

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古くから英国王室を頂点とする貴族文化が根付いているイギリスには、「他者への礼節を重んじるために装う」という考え方が根底にあります。「英国紳士」と呼ばれるように、身なりをきっちり整えて、相手に失礼のないような振る舞いが美徳とされてきました。

そのため、イギリス発祥の服にはドレッシーなものが多く、スーツをはじめ、チェスターコートやステンカラコートなど、エレガントに着こなすものが多くなっています。

軍服として生まれたトレンチコートや、乗馬服として生まれたキルティングジャケットなどにもどことなく品を感じさせるのは、他者への礼節を重んじる、という考え方が反映されているからなのです。

私がイギリスの服を着てみて感じるのは、パットがしっかり入っていて構築的だったり、生地が重たかったりすることですが、それにはイギリスの実直な国民性と関係があるのかもしれません。着て自分が楽になるのでなく、多少我慢しても相手に失礼のない、きちんとした装いをする。そんなイギリス人らしい考え方が反映されているのでしょう。

こういった文化的な背景から、例えば「知的さを感じさせたい」「誠実に見せたい」というイメージを人に与えたいなら、イギリスの服をオススメします。

色気を出して異性にモテたいなら…「イタリア」

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イタリアは、古くはイギリスやフランスの服の下請け生産地でした。下請けとして鍛えられた確かな技術力に加え、陽気で楽天的な国民性がイタリアで生み出される服のベースになっています。

イタリア人の服に対する考え方は、「いかに異性の関心を惹くことができるかです。誰もが人生を謳歌するイタリア人は、誰のためでもなく、男として、女としての自身の魅力を高めるために服を纏います。全力でセクシーさをアピールできる服を追求し、イギリスの服とは違った、柔らかくて曲線的なシルエットにこだわるのです。

イタリアの服の特徴は、「柔らかさ」や「軽さ」。例えば、肩パットのないアンコンジャケット(※1)や台衿のないイタリアンカラーシャツ(※2)など、すべてのアイテムがソフトに、しなやかに仕上げられています。これが、イタリア人らしい繊細な着こなしを生み出す源になっているのです。

※1 アンコンストラクション・ジャケットの略。 通常のジャケットと違い、裏地・芯地・肩パットなどを使用せず、ソフトで軽快な着心地が特徴。

※2 通常のシャツのように台衿がなく、身頃と衿が1枚の生地でつながって出来ている衿型。 ややカジュアル度の高いアイテムながら、エレガントでクールビズにも着用可能。

また、着こなしにもいわゆるルールがなく、実に人それぞれ。パンツの裾を折り返して少し短めにはいたり、長袖シャツの袖をわざとまくったりするなど、ただ着るのではなく、服に動きや表情をつける細やかなこだわりが色気として感じられるのです。

こういった背景から、フェロモンを全開にして「異性にモテたい」という願望があるなら、イタリアの服がオススメです。

飾らず自然体でありたいなら…「アメリカ」

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アメリカは、イギリスの服の影響を受けながらも貴族階級がなく、一般階級の人たちが力を合わせて国を作り上げてきました。アメリカの服には、裕福な東部の大学生たちから生まれたアメリカントラッドスタイルや、労働者のための作業着として誕生したリーバイスなどのデニムスタイルなど、いくつもの顔があります。

「人種のるつぼ」という国柄、さまざまな体型や肌の色に合う、「万人向け」を意識したスタイルが基本。ドレッシーなものよりも、ワークウェアやスポーツウェアなど、「合理性や機能性、耐久性を重視」したカジュアルなテイストの服が多いです。

私が思うアメリカの服の特徴は、誰もが無理なく着られる、程良くゆとりのあるシルエットや、時代を超えても愛される普遍性。例えば、ブルックス・ブラザーズのボタンダウンシャツや、リーバイスのデニムなど、年月が経っても着続けることができる、むしろ着古すことがカッコイイといえるアイテムがたくさんあるのです。

こういった背景からも、流行や他人の目を意識するというより、「必要以上に自分を飾ることなく自然体でありたい」なら、アメリカの服がオススメです。

気候はイギリス寄り、でも嗜好はイタリアな日本人

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このように、各国で生まれる服には、デザイナーの感性だけでなく国民性や文化が密接に関係しているのですが、加えて「気候」というのも重要なファクターになります。

例えば、イギリスの服は生地がしっかりしていて重たく、仕立てもカチッとしているという特徴がありますが、それはかの地の気候が年間を通して曇りや雨が多くて湿度が高い、ということに由来しています。

イギリスファッションの代表・スーツに使われるウール素材にとって、「湿気」は最大の敵。湿気による水分を含んだウール素材は、よれやすく型崩れの原因になるため、生地の重さやしっかりした仕立てが必要だったのです。

それに対して、地中海気候のイタリアはどうでしょう。特に南部は1年中気温が高く、カラッとしているため、ウール素材の服でもよれにくく長持ちします。そのため、南部のナポリから生み出される服は軽くて柔らかい作りのものが多いのです。

そしてここ日本といえば、気候は湿度が高くてイギリスに近いにもかかわらず、服の嗜好はなぜかイタリア寄りなんです。スーツを例に挙げても、百貨店やセレクトショップ、スーツ専門店で販売されているのは、圧倒的にイタリアの製品や生地のスーツが多い。それがなぜなのか、本当のところはわかりませんが、一つ言えるのは「体型の近さ」です。

イギリス人は男性も女性も体が大きくてガッチリしていますが、イタリア人はヨーロッパの中でも比較的小柄で、どちらかというと日本人の体型に近い。それがイタリアの服を着たときのフィット感や着心地の軽さにつながり、日本でイタリアの服が好まれるのではないかと思います。

実際に、私がアパレル勤務時代のイタリアブランドの顧客にもプロ野球選手やプロサッカー選手が多くいました。アスリートから服好きの人達まで、幅広いファン層がいるのが人気の理由ではないかとも感じています。

しかし、一つの難点として昔から、「湿度の高くなる夏にイタリアの素材のスーツやジャケットを着ていてヨレヨレになってしまった」というクレームがたまにあるのですが、それはこれまで説明した通り、ある意味当然のことでもあるのです。

「ただの消費」ではない新しいファッションの価値観

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今回、こういったテーマで書かせて頂いたのには理由があります。私が過去のnoteでも書いた「大量生産・大量消費」や「サスティナブル(=持続可能であること)」といった社会問題に対して、現在ファッション業界が世界的に取り組みはじめていますが、その中で、私も含めたユーザーにできることがあると思うのです。

それは、服を選ぶ基準がブランドや流行、価格という受動的なものでなく、自分の生き方や考え方などパーソナルなものになれば、ただの「消費」という行動に留まらないと思うのです。

ファッションとは直感的に楽しむものであり、ロジックより感性が優先されるべきなのは、重々承知しています。しかし、感覚的な部分だけを重視した選択では、その服に対する愛着は湧きにくく、流行の変化によって着ることがなくなり、捨てられてしまうこともあるのではないでしょうか。

一人ひとりが、自身のあり方や生き方のスタンスに沿った服選びをすることで、自分が選んだ服に愛着が生まれ、ただの消費ではないファッションの新しい価値観が生まれるはず。

ユーザーである私たちの小さな変化が、今の無理な低価格化や大量生産・大量消費の流れを少しづつ変え、服を作る人と買う人が幸せになる世界が実現することを切に願っています。

イベントの動画です。

2月12日に服の歴史や思想、センスの磨き方についてのトークイベントを行いました。そのときの動画が販売されています。もしイベントの内容にご興味のある方、よろしければ購入して見て下さい。どうぞよろしくお願い致します。





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