
音大生の就活苦戦記
今年の3月。
社会に出てどうしても仕事に就きたかった私は「就活」をしようとした。
SNSを見ているとポンポンと流れてくる就活サイト系の広告。
なんとなく登録していた就活支援サイトのメール。
そんなモノたちに駆り立てられ、どこかしら受けなければと正直焦っていた。
けれど、いざエントリーのシーズンになった時、自分が何をしたいのかわからなかった。
音楽はスキだけど、、
旅行もスキだけど、、
うーん、地域×音楽みたいなことがしたいしなぁ。
とか色々考えた。
そんな理由でなんとなく音楽業界や旅行業界の名のあるところばかりに数箇所エントリーした。
必死に会社のホームページとにらめっこして、「就活ノート」という名のノートも作り、会社がやりたいことや理念をひたすら写し、その中で自分が少しでも共感できそうなところや、やりたそうなことをなんとなく書き出していた。
書類選考で落ちたところもあるが、なんとか書類が通った会社の面接に行ってみると、人と話したりするのは慣れていたせいか、会社に入ってやりたいことや自己PRをペラペラとはしゃべっていた。
そして順調に進んでいた。
けれど、
毎回最終面接で落ちた。
「弊社が第一志望ですか?」
面接の最後にそう聞かれたとき、
素直にうなずけない自分がいた。
✳︎✳︎✳︎
教職課程も取っていた私は、ちょうど6月上旬から教育実習だったこともあり、面接と実習が丸かぶりしていた。先生になりたいよりかは、会社で働きたい思いが強かった私は、実習を初日の朝っぱらから早退して面接に行った。
だから正直悔しかった。
実習先の先生方からは冷たい目線を浴びながら、
面接ではことごとく落ち、
でもそれに悲しんでいる暇もない程、実習は朝も早く、夜も遅く、心身ともに疲れ切った。
そして、自分が何をやりたいのかわからなくなった。
そして、自分には何ができるのかもわからなかった。
ただただどうでも良くなってしまった。
心の底では、どこかで働きたいという思いもかかえながら。
✳︎✳︎✳︎
そんな憂鬱な顔をして携帯をいじっていると、
Facebookのタイムラインに突然流れ込んだ。
「新卒募集」という字が。
普段ほとんど投稿は見ていなかったような会社である。だが、その4字に惹かれ、ホームページを見た私は、一瞬でその会社に吸い込まれた。
「自分らしく、生きる。」
そんな字が大きく書かれた会社のホームページは初めて出会ったかもしれない。
自分がなんだか分からなくなっていた私にとって、本当に唯一の救いだった。
こんなことをまさに、奇跡というのだろう。
衝動的に新卒募集にエントリーした私は、
面接を通して、本当の自分に気づかせてもらえた。
音楽も旅行もスキだけど、今はその畑で働くべき人間ではなかったことも。
そして、
これまでの就活での面接で、素を出していたつもりが、それは全然素ではなく、会社になんとなく合わせて良い人間を装って話していただけであったことも。
面接というより、対話をした。
「気になっちゃうから、もっと聞きたくなるんだよね!」
と、面接で言ってくださったことは、今でも忘れられない。
こんなに私のつまらない話に、前のめりになって下さるなんて。
そして、いつも面接は楽しかった。
なぜなら、働く方々が心底楽しんでいそうだったから。
熱意がガンガンに伝わってきた。
これまでの就活の某会社の面接で、「うちのどこに惹かれたの?」と聞かれた時に、素直に「ホームページに書いてある理念の素敵な言葉に惹かれたからです!」と言ったことがある。
けれど、面接官にあっさりと言われた。
「あんなの、表面だけかもよ。」
それから私はホームページの言葉をなるべく信じたくなかった。
けれど、この会社は違った。
本当だった。
「自分らしく、生きる。」
そうやって、働いている人たちだった。
✳︎✳︎✳︎
今日は、この会社のインターン初日だった。
4月までの間、インターンとして働かせていただけるのである。
たった一日会社にいただけだけれど、
MTGやちょっとした会話の中でも、誰もお互いを批判しない。わかり合おうとして、互いに助け合って大変なタスクをこなしていた。
そして、やっぱり誰もが笑顔で働いていた。
度々楽しそうな会話や笑い声が聞こえてくる職場。
なんて幸せだろうか。
新卒でこんなところに入っていいのかと本当に思う。
けれど、挫折を味わったからこそ、この会社に出会えた。出会いに感謝したい。
そして、この出会いを無駄にしないように、日々成長していきたい。
✳︎✳︎✳︎
最後に
これから就活をする人や周りになかなか就活生のいない音大生にも伝えたい。
もちろん、挫折を味わって、私のように自分の本当の姿や会社の良さをわかることもあるけれど、
自分の本当の姿、本当にやりたいことを見つめる
ことは忘れないでほしい。
音大生だからと言って一般企業を受けてはいけないルールなんてないし、学部や学科なんて関係ないと思うから。
そして、これも伝えておきたい。
教育実習と就活を掛け持ちすることはあまりおすすめしない。
一人でも多くの就活生が、良い会社に出会えることを願って、この苦戦記をここに残しておきたい。