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ボクは徳永進一!叔母さん盗るな!ー5ー

初回からは、こちら⬇それぞれの回の終わりに その次の回の貼り付けがあります。

前回こちら、⬇

ボクの頭のなかを 「暴れん坊将軍」の殺陣(たて)のテーマが流れていた……。チャンバラシーンの曲だ。
朝、4時からうちのじいちゃんが、テレビの真ん前に座ってじーっと観ていたのだが、ボクも時々一緒に観ていた。じつに、かっこいい。
そのなかの主人公、「徳田新之介」が、じいちゃんは気に入っていて、僕の名前もそれに近いものにしたかったらしい。せっかく苗字に「徳」があるから、名前に「しん」という音のものを入れよう、と。
だから、ボクは「徳永進一」だ。
カッコいい、ちまたのヒーローになるのだ!!


ボクは、竜二に呼ばれて 午前3時の港へ やってきた。
これから、決闘だ。
港の「はしけ(小舟)」が、ぼぼぼぼぼ……。と本船になにかを運んでいる。

竜二が、波止場に佇んでいた。
5メートルくらいの釣り竿を持って……。

なんか、このときの竜二は、どこか貫禄があるように感じた。堂々と板についている。

「おーっす!進一ぃー!来るときは歯を磨いたか?」
獲物を見つけたピラニアだ。八重歯が、ピカピカと。
「だから、磨いてます!いつも、15分磨いてます!!」

「ほいっ!」と、釣り竿をボクに投げ、
「いざ!勝負!」

キュイキュイキュイーーッ!と汽笛が鳴る。

「受けて立つ!」
勝負が、始まる!!
美奈さんを巡っての釣り対決は始まったのだが……。

…………。

ボクは、釣り針に餌の虫を付けることが……、おぞましくて出来なかった………。
「どうした?進一(にーっと笑って)」
「む、む、虫……」
「だめだなー!そんなことも出来んのかー!?」
竜二は、浅黒い肌ににっと白い歯を覗かせて「へへんっ」と、笑った。
周りが暗くてもそれが分かった。
「そんなんじゃ、美奈さんを守ろうなんざー、夢のまた夢……!」
竜二は、先に釣り糸を垂らして、
「第一キミは……」

タバコの煙をぷかーっとくゆらして、
「美奈さんとは、*『三親等』じゃないか。知ってるか?『三親等』」

「………」
ボクは、いちばん言われたくないことを言われてしまった。
餌箱のウネウネ動く虫たちを見ながら、ボクは、
「知ってます。『三親等』。血が濃すぎる。近親過ぎて結婚できないんです……」
「そうだよ、知ってたか、中坊……」
「そう」
「下手すっと」
「近親相◯!(2人同時に!)」

(わーーーーーーー!)

ボクは、大声で悲鳴を上げていた。港でよかった。誰も、これで、目を覚まさなかっただろう。この時間にも関わらず。


             つづく


*三親等ーーーー親族間の血の濃さを表す。
両親が一親等、祖父母きょうだいが二親等、おじ、おばが三親等。そのもとに生まれるいとこは四親等。四親等からは、日本の法律上結婚できるが、三親等以内は、結婚ふを禁じられている。


2023.7.19.山田えみこ


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