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トウモロコシ農家が語る、やさい流通のリアル〜エマリコくにたち10周年記念オンラインイベント開催レポート

「毎年6月に入り収穫が近づくと、夢でうなされるんです。それくらい、プレッシャーを感じながらやっている。妥協はできませんね。」
ー「E探」名人/国立市中屋農園園主・遠藤充さん
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今年、エマリコくにたちは創業10周年を迎えました。
これを記念して先日行われたオンライン対談イベント『トウモロコシ農家が語る、やさい流通のリアル』
冒頭に、今回の対談の中で出てきた言葉そのままを書きました。

ご登壇いただいた遠藤充さんは、私たちの直売所「しゅんかしゅんか」に年間通してほぼ毎日出荷してくださっている、たいへんお付き合いの深い農家さんです。
対談パートナーは、弊社取締役副社長の渋谷祐輔。創業以来、農家さんの開拓に始まり、日々のやり取りの窓口を担ってきました。
今回のnoteでは、この周年イベントの模様をレポートしたいと思います!

流通がテーマの今回、まずは農産物流通の現状を概観しました。
大きく、市場流通と市場外流通に分けて見てみると、市場流通は現在も国内の総流通量の約80%を占めていることが分かります。ただし2013年にはこれが93%あり、徐々に減少傾向であることも読み取れます。
対する市場外流通には、近年人気の産直ECや、私たちが運営しているような民間の直売所やJAの直売所など、市場を通さずに流通しているものを幅広く含みます。その内訳はどんどん多様化していますね。
このように流通経路が多様化しているということは、単純に考えれば、農家さんの販路も多様化していると言えるでしょう。

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中屋農園の販路変化とその背景
遠藤充さんは、12年前ご結婚を機に中屋農園へ入られましたが、当時は市場出荷がおよそ6割を占めていました。
現在は、市場出荷は大幅に減らし、庭先での直売や、「しゅんかしゅんか」やJAの直売所、トウモロコシのもぎ取りなどがメインとなっており、大きく販路が変わっていることがわかります。
6〜7年ほど前に先代のお父様から園主を任せれ、充さんはどのような農業経営をしていくべきか悩んだそう。そこで思ったのが、「市民との距離が近い」という都市農業の強みをしっかり活かせるような販路を開拓することだったと振り返ります。
「現在1.1ヘクタールある畑の面積は、就農当時とほぼ変わらない。売り先を「分散」させていったイメージです」と充さん。
ここ中屋農園で育つ野菜は、大きく3種類。お父様の代からメインであるほうれん草。充さんが就農してから作付け量を増やした小松菜。そして、夏のトウモロコシ・ピクニックコーン。
このような「少品目多量」栽培は、東京都内の農家さんの中ではかなり珍しいんです(多くの方は市場にはあまり出さず直売がメインであり、かつ地方の産地ほど畑面積が無いため、少量多品種栽培をされる方が多い)。

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畑面積や栽培品目を変えずに「販路」を変えたことによる変化とは
充さんは、「農家として、実際にお店の方やお客様と直接やり取りできる、声が聞けるというのは大きなやりがいです」と話します。
市場外をメインに販路を変えた今、「プレッシャーはものすごく大きい」と言います。特にトウモロコシの栽培は、毎年夢でうなされるくらいプレッシャーがあるそう。
「毎年、実際に食べてみるまで、本当に甘く育っているのかは分からない。疑心暗鬼です。でも実際に食べて、あ、うまいなって。誰かに「おいしい」と言われるとまずは安心しますね」と笑います。
作付けについても、今のように「信頼関係」がベースにある直売への出荷や、庭先直売へ買いに来てくれるお客様のためになるべく長期間途切れることなく提供しようとすると、2〜3日置きに10回以上に分けて種をまくなど、かなり細かくなったそうです。
「出荷し続けるための努力は、昔と比べて今の方が圧倒的にしています。反面、市場はまとまった量を取ってくれるのはありがたいですよね。直売所はやはり取れる量が決まってきますから。」と語ります。

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農園名物・ピクニックコーン
中屋農園、夏の名物がトウモロコシ・ピクニックコーンです。
サイズは小さめですが、とにかく甘く、皮が柔らかくて食べやすいスイートコーン。
これを現在ではシーズンになると、庭先直売ともぎ取り体験の受け入れで販売しています。
今年はなんと25,000本を栽培!就農当時は4,000本ほどだったそうで、販路の拡大に伴い相当数を増やしていることが伺えます。
もぎ取りはお父様の代から近隣の幼稚園など限定で受け入れていたそうですが、今のように一般の方々向けに本格的に始められたのは充さんに代替わりされてからです。

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あまりのおいしさに、大口注文も!?
1本から販売している庭先直売では、「毎年100本単位で買ってくれる人もいる」という中屋農園のピクニックコーン。お中元利用や、「おいしいから知人にあげたくて」という方も多いそうです。口コミやSNSを通じてどんどん噂が広まり、今では1日に平均1,000〜1,500本ほどを売るまでに!
口コミが広がった背景を伺うと、「もぎ取りを始めたのが大きいですね」と振り返ります。夢中でもぎ取りを楽しむ子どもたち、そんな姿を見て「体験」の価値を実感した保護者の方々が知り合いに勧める。そうして、地域に暮らす親子や市民へ広がっていくー。
「ピクニックコーンは、一口食べるだけで感動してくれる人が本当に多い。誰かに分けたくなるみたいです。そして、今度はその分けてもらった人が買いに来てくれる。良い連鎖が生まれている気がします。」
そのために、農家として大事にすることは、妥協しないこと。「常に良い状態で収穫できるよう努力する。もちろん前日にとったものは絶対に販売しません」と強く話す姿が印象的でした。
中屋農園には、毎年シーズンを楽しみにしてきてくれる方がたくさんいます。
「正直にいろいろな声を届けてもらえます。最初の頃は特に「昨年の方が甘かったんじゃない?」とか、よくあって。でも最近はあまり言われなくなったかな。毎年努力を重ねてきて、少しは自分の腕も上達したのかなと思えるようになってきました」と笑顔で話してくれました。

中屋農園の販路の変化の歴史、そこにあった地域に密着して行う都市農業への思い。
まもなくスタートする「E探」で、最初に訪れる「名人」こそ、遠藤充さんです!
トウモロコシ畑では、さらにどんなお話を聞けるのか楽しみですね。
乞うご期待!!

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