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材料を集めてから書くか走りながら考えるか

社会人として働きながら本を作っているので、時間の捻出方法についてはいつも悩みの種です。

いかに早く書くかと考えたときに、音声入力を使うなど、一時間あたりの書ける文字数を技術的に伸ばすことも重要なのですが、そもそも書くための材料を集めておく必要があるのだと思います。

プロットだけでなく、登場人物の設定、モチーフ、雰囲気……そういった情報があれば、あとは書くだけなので、時間と体力さえあれば書き上がるはずです。

逆に言えば、そうしたものがない中でいきなり書く時間だけがあっても、うまくスピードに乗って書けるはずがありません。

だから、小手先で早く書くことを考えるよりも、じっくり材料を頭の中にそろえる時間こそが大事かもしれない。

漫画家の横槍メンゴさんは〆切ぎりぎりになってネームに取りかかるまでの時間を「スピ待ち」と呼んでいるそうです。それはまさに、材料をそろえている時間なのだと思います。

ただ一方で、完全に材料が集まるまで待っていたら、プロの漫画家でもない人間の場合、いつまでも走り始められない可能性があります。

書いているうちに次のアイデアが浮かんできたりするのです。先に誰かとコミュニケーションをすることによって、脳の奥底に住んでいる内容が表に出てくると書きましたが、もしかすると自分で自分を書いているうちに何かの言葉がそうした奥底にある何かを刺激して引き出してくれたのかもしれません。上阪徹『職業、ブックライター』

ブックライターの上阪徹さんは、取材に基づくノンフィクションの本を書くときは完全に材料を集めてから書くが、自分自身の本を書くときには、見切り発車で始めることもある、といいます。

見切り発車をしてしまうことで、材料が集まっていなくても、身近なものすべてを材料にしうる見方ができるようになる可能性があります。

書き始めてしまうと自然と、書いている内容に関連したことに目が向くようになります。

全然関係のない仕事のやりとりでも、ふとしたことで小説の内容のヒントになりうる。

たまたま見たテレビやたまたま見た映画、誰かの何気ない会話や知らない人のツイート……そういったものも材料として集めたつもりではなくても、自然と材料になってくる。

そういう意味ではもちろん、何かを書くためにはインプットが必要なのですが、究極的には生きているうちの時間の全てがインプットになると言えるかもしれません。


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