「ジョン・ウィック:コンセクエンス」ニューヨーク在住の私だから指摘したいポイント5つ!
「ジョン・ウィック:コンセクエンス」が日本でも、ついに公開!
ご存じ、キアヌ・リーブスが伝説の殺し屋に扮した大ヒットアクション「ジョン・ウィック」シリーズの第4弾です。
期待にたがわず、というのか、期待どおりに、ドンパチ合戦で、なんで警察が駆けつけないのか、ナゾのアクションファンタジー。
めちゃ面白い!
ここでは、アメリカ在住のライターだからこそ、気になる鑑賞ポイントを挙げていきましょう。
真田広之、ドニー・イェンのアクションシーンが見どころ
ザクッとストーリーをいうと、前作までで、裏社会の全員から追われてしまったジョン・ウィック。
裏社会の頂点にある組織、ハイテーブル(主席連合)から自由になりたいジョンなのですが、モロッコで長老を殺してしまうことで、絶体絶命のお尋ね者に。
主席連合のグラモン侯爵は、悪人を総動員して、ジョンを殺すことを手配。
ジョンが唯一見出した手段は、グラモン侯爵と一騎打ちをすることなのですが……。
共演にはイアン・マクシェーン、ローレンス・フィッシュバーンらおなじみのキャストに加えて、今回初登場がグラモン侯爵役でビル・スカルスガルド。
彼は、スウェーデンの名優ステラン・スカルスガルドの息子であり、『イット それが見えたら、終わり』の恐怖のクラウン役を演じた俳優ですが、グラモン役はまさに優雅なお貴族さまの雰囲気です。
そしてジョンの旧友で、大阪のコンチネンタルホテルの支配人が真田広之。
その娘であるアキラ役が、リナ・サワヤマ。
さらにジョンの旧友でありながら、娘の命と引き換えにジョンを追う殺し屋となるのが、ケイン。演じるのは、香港を代表するアクション俳優であり、映画界の巨匠、ドニー・イェンです。ひゅーひゅー!
前3作に続きチャド・スタエルスキ監督が監督しています。
①邦題の英語の方がむずかしいことに激しい疑問!
さて、いきなりですがアメリカ在住者としては、邦題に違和感を覚えました。
そもそも「コンセクエンス」ってフツーの日本語なんですかね?
ふだん使う?
Consequence とは「(必然的に導かれる)結果」とか「帰結」といった意味ですが、だいたい悪い結果になったときに使われる言葉。
それってフツーに使われる外来語ですかね?
原題は、「John Wick Chapter 4(チャプター4)」
つまり「第4章」です。めちゃシンプル。
原作よりも、邦題のほうがわかりにくくなるって、どうなんすか?
コンセクエンスが、カタカタ英語として通用しているほど、ふだん日本で使われているとは思えないし、実際の発音をいうなら「カンシクァンス」の方が近い。
なぜにわざわざ「コンセクエンス」?
もし「こんせくえんす」と発音したら、アメリカ人にもイギリス人にも100%伝わらない自信あり。
これはマーケティング的に、まったくわからない。
なんで日本人が使わないようなナゾ英語がタイトルなんでしょうか???
②大阪の描かれ方に、欧米のバイヤスがめちゃ表れている
さて、今回の見せ場のひとつが、大阪を舞台にした死闘。
大阪のコンチネンタルホテル(インターコンチではないwww)のデザインが、すごすぎる!
まさにハリウッドから見たエキゾチック・ジャパン感満載。
蛍光ライトがばんばんの未来的デザイン、でもガラスケースには鎧や日本刀、浮世絵が陳列されているのです。
おい!(笑)
妖しいライティングになっていますが、実は建物の外側は、東京の新国立美術館で撮影しているのですよね。
これが日本なの、という疑問が渦巻くでしょうが、まさにコレなんですね、海外から見た日本は。ハイテクと、和の伝統。
そして支配人のシマヅと、娘のアキラの出で立ちがこちら。
ホテルの支配人とコンシェルジェなんだが、めっちゃジャポネスク!
いや、こんな面白い恰好しているホテルマンがいるわけないだろ! とツッコミたくなるところですが、まあ、デザインとしてはうまく出来ているんじゃないでしょうか。
真田広之さんはハリウッド映画歴も長く、慣れているので、もはや余裕の感じの出で立ちですね。
細かく観ていくと、大阪コンチネンタルのセットはこんな感じ。
とても広大なセットを組んでいて、大がかりな桜や竹の植わった庭園も造っています。さすがハリウッドの規模。すごいねー!
ジャパンといえば、お決まりの相撲レスラー、ナゾ芸者、「初志貫徹」というナゾの標語、季節関係なく咲いている桜、ホテル内にあるナゾの立ち飲み、ナゾ寿司。
もう先入観アイテムのてんこ盛りで、あと足りないのは女子高生、自販機、ツインテールくらいですかね(笑)
そしてそこで繰り広げられる死闘。刀とヌンチャク、そして銃。
日本の観客のみなさんとしては、
「どこの大阪なんじゃい」
といいたくなったでしょう。
どの国にもバイヤスをかけるのが、ジョン・ウィックの世界観
しかしご安心ください(という問題ではないかもしれないが)全世界的にバイヤスがかかっていますから。
その他のロケ地であるベルリンも、そこにいるラスク・ロマーナ(ロシア系ジプシー)も、パリも、全部バイヤスかかっている設定です。
前々からふしぎだったんだけど、映画でベルリンが出る時は、必ずクラブで踊っている人たちが出ますよね。
そこに吸血鬼があらわれても、殺し屋があらわれても、ひたすら踊り続けるベルリンッ子。
そのくらい映画やドラマの世界では、
「ドイツといえばクラビング」
と決まっているようなので、そのバイヤス感がよくわかります(笑)
パリもあいかわらず凱旋門やオペラ座ガルニエ宮、サクレクール寺院といった名所ばかり。
サクレクール寺院周辺には悪者しかいないって、どういうパリ(笑)
そもそも舞台のニューヨークからして、地下鉄、ウォール街、そしてホームレスというバイヤスですね。
ホームレスが街を代表するアイコンって、どうよ(苦笑)
そういうわけで、全世界的にもれなくバイヤスがかかっているのがジョン・ウィックの世界観なのです。
ここはぜひともハリウッドが好むジャパンをお楽しみ下さい。
③チャンバラ映画へのオマージュがすごい!
作品ごとに、どんどん映画のなかで殺される悪人の人数が増えていくジョン・ウィック。
これだけ死んだら、世界の犯罪率が減りそうですが、まだまだ悪人が山ほどいるのね。
今回もどんだけー! というほど、ドンパチやってくれますが、やはり今作では、アジアのビッグなアクション俳優、二人を揃えたのがポイントでしょう。
すばらしい殺陣を見せてくれる真田広之。
演ずるシマヅが、義侠心を持つ男、という役まわりで、なにか昔のヤクザ映画のよう。
そして盲目でありながら、仕込み杖をふるう達人、ドニー・イェン。
完璧に「座頭市」へのオマージュです。
いや、それにしても座頭市の時代は、相手も刀だっからまだしも、いくらなんでも盲目で、ガンファイトはすごいよね。これだけ超人なら、殺し屋でなくても稼げそうです。
そして最後には、パリを舞台にした大階段落ちもあって、昔の日本のチャンバラ映画に対するリスペクトを感じます。
もともとアジア映画のカンフーアクションをインスピレーション源として始まったという『ジョン・ウィック』シリーズ。
カンフーと、ガンを組み合わせた「ガンフー」といわれています。
それだけにアジア映画に対するオマージュがあるのかと感じるし、この刀、ヌンチャク、銃の戦い方が観ていて楽しいところ。
④リナ・サワヤマはハリウッドでブレイク確実!
ところで、わたしがアメリカ在住目線で観ると、今作でとにかくブレイクスルー確実は、真田広之の娘を演じたリナ・サワヤマです。
彼女の本業は、ご存じのとおりミュージシャン。
わたしはリナ・サワヤマがブルックリンでライブを打ったとき、友人から誘ってもらって行ったんですね。すごい熱気でした。
リナ・サワヤマは日本の新潟生まれ。
父親の転勤にともない、ロンドンに引っ越し、そのまま母親とイギリス生活を続けた彼女。
なんとケンブリッジ大学の学生だったという優秀な頭脳の持ち主です。
けれども音楽の道を選んで、ミュージシャンとしてデビュー。
彼女の有名な曲といえば、“Chosen Family”(選んだ家族)でしょう。
「あなたと関係するのに、親戚である必要はない。
遺伝子や苗字が一緒である必要もない。
あなたは、私が選んだ家族」
という歌詞で、アメリカでは、LGBTQコミュニティのアンセムのようになっている曲。
ブルックリンンでのライブ当日も、観客たちが合唱する声がすごかったです。
日本のサマーソニックフェスティバルに出演したときも、自分がバイセクシャルであることを宣言して、同性婚が日本では合法でないことに触れていました。
「LGBTQの人たちは人間、LGBTQの人たちは日本人、愛は愛、家族は家族、ともに戦っていきましょう」
と呼びかけました。
ミュージシャンとしては、今や昇り坂にあるリナ・サワヤマですが、今回の役は好機でしょう。
なんでも監督のオファーをいったん断ったらしいですが、受けてよかった!
そしてリナ・サワヤマに目をつけた監督も炯眼!
「これは大ブレイクするわ!」
と感じたんでした。
俳優としてはシロートのリナさんですが、撮影に先駆けてハードな訓練を積んだそうで、画面では、キビキビとした動きで、まわりと遜色ないアクションを披露。
めちゃくちゃアクション俳優として、良い出来です。
さらに彼女のスイートではなくて、辛口の顔つきがいい。
キツい顔のアジア系女優が好まれるアメリカ
アクションができて、きつい顔の女優。
そう、ハリウッドが求めているアジア系女優は、ずばりこれでしょう。
ハリウッドで大成功したアジア系女優としては、なんといってもルーシー・リュー。
全盛期には、『チャーリーズ・エンジェルズ』にも出演しました。
ルーシーはアメリカでは大人気でしたが、いっぽう日本では「えええ?」という捉えられ方だった覚えがあります。アジアでめちゃ人気になるタイプではない。
わたしはたまたま昔、ニューヨークの小さなレストランで、ルーシー・リューさんが隣のテーブルに居たことがあるのですが、その時に「うわー。やっぱり女優はちがうわ」と感じたことがありました。
所作が美しくて、色気がある。一般市民とはまったく違う。
しかし日本でウケる女優顔にしては、辛口すぎたのでは。
では、なぜセクシーで、きついアジア系美女が好まれるのか。
このあたりは、アメリカではアジア系がマイノリティであるのも関係しているかもしれません。
ルーシー・リューの出世作は、オフィスドラマ『アリー・マイラブ』に出てくる、勝ち気で毒舌な同僚、リン・ウーの役柄だったのですが、これがわりとアメリカ人にはわかりやすいアジア人のキャラだったんでしょう。
高校時代はメガネかけていて、数学ができて、会社に入ってからは仕事ができて、まわりをこきおろすみたいなね(笑)
そのきつい感じがセクシーでいい! みたいな路線なわけです。
最近だと、コメディエンヌのオークワフィナの活躍もめだつし、『エミリー、パリに行く』のアシュレイ・パーク、『クレイジーリッチ・アジアンズ』のコンスタンス・ウーなど、さまざまなアジア系女優が出ていて、幅が広がり、嬉しいところ。
そのいった流れのなかで、リナ・サワヤマの強みは、アクションをこなせて、英語がネイティブで、そして顔つきが辛口なこと。
決して「かわいい」というジャンルではなく、強い女性像というのが、ハリウッドでは好まれるポイントだと思います。
ちなみにこれはアジア系だけではなく、若手女優をめざす人たち全般にいえると思うのですが、今どきの役柄を獲得するには「かわいい」だけでは足りないはず。
じつは「かわいい」役柄が、もはやハリウッドでは少ない
かつては「かわいい」につながる役柄というのは、青春群像ドラマのヒロインだったわけです。「The.O.C」なり、「ゴシップガール」なり、青春ドラマはいつの時代もある。けれども、今どき高校ドラマでも、もはや清楚な役とかないですよね。
近頃青春ドラマで踊り出たティーンエイジスターといえば、まず『ストレンジャーシングス』のミリ−・ボビー・ブラウン。
たしかに彼女は「汚れなき」少女だけれど、そもそもシーズン1では坊主頭だし、超能力者という社会から外れた究極のファイター。
そして『ウエンズデー』のジェナ・オルテガ。
彼女はたいへんな美少女だけれど、にこりともしない、他人を徹底的に拒絶するキャラ。
さらに『ラスト・オブ・アス』のベラ・ラムジー。
もともと『ゲーム・オブ・スローンズ』のリヤンナ・モーモント役で、幼いながらも強い武人魂を持つリーダーを演じてブレイクした彼女。
私生活でもノンバイナリー(性別の区別をしない立場)を表明していて、ドラマのなかでもレズビアンという設定で、レイプしようとした成人男性をぶち殺すという役柄です。
すでに青春ドラマの世界でも、清楚で可憐なキャラはいないので、かわいいだけのアジア系女優では、オーディションで獲得できる役柄がないと思うんですよね。
その点、暗殺者としてよし、敵としてよし、味方としてよし、ヒーローとしてよし、諜報部員としてよし、帝国の幹部としてよし、研究所の冷徹な科学者としてよし、ゾンビ世界をサバイバルする人類としてよし、というリナ・サワヤマみたいなルックスと身体能力の持ち主は、めちゃオファーが来ると思うんですよ。
今、ここがラスベガスのカジノであれば、わたしはカジノチップをググッと、リナ・サワヤマに押しだして賭けたい気持ち。
そのくらい彼女のポテンシャルはあると思います!
⑤映画トリビア、コンチネンタルは実際にウォール街にある
さて、最後にニューヨークのトリビアです。
この「コンチネンタルホテル」の舞台となっている建物は実在して、ワン・ウォールストリート・コートという建物なのです。
オフィスビルディングなので、さまざまな企業が借りていますが、コンドミニアム物件も貸し出しているようです。住むことも可能かも。
そしてロビーの場面で使われたのが、同じくニューヨークにあるCunard Buildingのロビー。
現在、ピーコックチャンネルでは前日譚である「ザ・コンチネンタル」が放映中で、いかにニューヨークのコンチネンタルが出来たのかが語られています。
ここに出てくるのが70年代のニューヨークなのですが、地下鉄にスプレーで落書きしてあるといった当時の荒れたマンハッタンがうまく再現されています。
ただしウォール街は当時から金融街だったので、こういうアンダーグラウンドワールドな雰囲気はなかったでしょうね。
というわけで、色々と見どころポインツのある『ジョン・ウィック:コンセクエンス』
ナゾ展開が満載ですが、その荒唐無稽さがいいんです、ハリウッドの聖人キアヌ・リーヴスさまなのですから。
これで終わりにしないで、次作も期待していますよ!というところで、締めましょう。
みんな、まだ見たいよね!
キアヌたん、よろしくお願いいたします。