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【感想】『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』について、幼稚園からのシリーズファンがざっくり語る。

※この記事は最新作のみならず、『ジュラシック』シリーズ全体のネタバレを含みます。

それでもOK!という方のみご覧くださいませ。





30年にわたり恐竜映画の金字塔として君臨してきた『ジュラシック』シリーズの完結作として、先日『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』が公開された。​

多くのファンたち同様、僕もこの『ジュラシック』シリーズがどのような終わりを迎えるのか、広げた風呂敷をどう畳むのか、非常に楽しみにしていた。

幼稚園時代の僕は、恐竜の図鑑をひとり黙々と読みふけり、同級生の誰よりも、そして親や周りの大人たちの誰よりも恐竜を愛していた子供だった。

そんな僕にとって、『ジュラシック』シリーズは、幼稚園児の頃から何度も何度も観てきたすごく馴染み深い作品である。

皆が「ティラノサウルスかっこいい〜!」と言うのを尻目に、

幼い頃からの僕は、『ジュラシック・パークIII』での活躍もあって、

「ティラノもいいけど、やっぱり俺はスピノサウルスが好きだな。
巨大な身体に背中の帆、強靭な前脚、ワニのようにシャープな顔……!」

と通ぶっていた(御年 5歳)。

そんな恐竜と『ジュラシック』シリーズマニアの僕が、最新作を観て抱いた感想をざっくりと語っていく。

良かったところ

歴代主人公たちが勢揃い!

既に多くのファンが喚起の声を上げているに違いないが、やはりこれはアツかった。

最新作は、現実世界においても劇中においても初代『ジュラシック・パーク』から29年経過しているため、キャストの完全な続投は容易ではないはず。

ところが、誰一人として欠けることなく『ジュラシック・ワールド』シリーズの主人公たちと同じ舞台に勢揃いしたのは、やはりファンとしては胸を打たれた。

また、彼らは作品と同じ年数だけ歳を重ねているので、
「この空白の20年の間、彼らはどのような生活を送っていたのだろうか?」などとあれこれ妄想する楽しみも味わえる。

シリーズファンには嬉しい、過去作のオマージュが盛り沢山!

映画ファンが嬉しくなる瞬間のひとつに、「オマージュに気がついたとき」があると思う。

今作には、そんなシーンが数多く存在する。

例えば、初代『ジュラシック・パーク』のオマージュとして、

  • 迫り来る肉食恐竜から仲間を守るため、マルコム博士が松明を片手に一人で囮役を買って出るシーン

  • パニックの元凶はディロフォサウルスに嬲り殺しにされる

など。

また、実に29年ぶりの伏線回収にはシビれた。

というのも、今回のパニックの元凶であるドジスンは、初代『ジュラシック・パーク』の元凶ネドリーを買収した張本人だったのである。

当時は1分にも満たないほどの登場時間だったにも関わらず、このような形で既存キャラクターを上手く組み込んできたのは嬉しいファンサービスだ。

さらに、初代から続投しているウー博士の改心にも心打たれた。

彼こそが遺伝子操作により恐竜を復元させた超優秀な科学者なのであるが、純粋に技術を追究するあまり、自身の研究が及ぼす悪影響については考えが及ばなかったのだろう。

そんなマッドサイエンティストともいうべき彼が、なんと29年の歳月を経て、過ちを自覚し、自身の力で責任を取ろうと決意したのだ。

「悪人は恐竜に襲われて無惨な最期を迎える」というシリーズ定番のお約束に抗い、改心を遂げた彼の姿に衝撃を受けたファンも多いのではないだろうか。

新種の恐竜がいっぱい!!

やっぱりこれが一番嬉しい!!

世界観やストーリーもさることながら、

何より『ジュラシック』シリーズの目玉といえば、最高峰の映像技術による超リアルな恐竜たちに違いないからだ。

これまでのシリーズでもかなりの数の恐竜が登場したが、今作はそれまでよりもより特徴的な恐竜が新たに登場したように思う。

新登場した恐竜(厳密には「恐竜」とは違う分類のものも含む)たちの中で、僕が特に印象に残った者たちをいくつか紹介する。

 テリジノサウルス

人間など簡単に串刺しにしてしまいそうな、長く鋭い巨大な爪がなんとも恐ろしい。

凶悪な見た目ながらも、実は草食。
(静かに草食べてただけなのに薙ぎ払われたシカさんカワイソス……。)

 ピロラプトル

シリーズ初の羽毛恐竜!

数年前に恐竜の羽毛の化石が発見されたことを受けてか、ついに羽毛恐竜も登場。

新たな発見や学説を反映してくれるのも、恐竜マニアには嬉しいサービスだ。

しかも、こいつは自ら氷を割って、なんと海中から人間を追い詰めるというアクロバティックな芸当を披露してみせたのも驚きだった。

 ケツァルコアトルス

ついにきた〜〜!って感じ。

翼竜といえばプテラノドンだが、ケツァルコアトルスはそれよりも大きい最大の翼竜である。

アステカ神話の「風の神」に因んで名付けられたのもうなずける。

 ディメトロドン

え!キミ「恐竜」ではないよね???
まさかまさかの登場にビックリ。

恐竜が誕生・繁栄した時代は「中生代」と言うのだが、この生物はその1つ前の「古生代」の出身なのである。

見た目はデカいトカゲっぽいし恐竜のように見えるけれども、骨格の構造とかそんな風な違いで、恐竜とは別の分類に属する。

 ギガノトサウルス

ティラノサウルス級の大型肉食恐竜を語るなら、ギガノトサウルスは外せない。

強そうな名前に違わず、見た目もしっかりと凶悪だ。

ゴジラを彷彿とさせる、ゴツゴツとした岩肌のような身体。
めちゃめちゃカッコいいぜ……。

最推し恐竜は今までの十数年間スピノサウルスだったけど、今回この姿を見て、正直グラッときた……。

次々に切り替わる舞台

これまでは恐竜が存在する場所が島の中に限られていたため、どうしてもジャングルや草原が舞台の中心になりがちだったと思う。

ところが、今作は恐竜が世界中に放たれた世界であるから、町の中や砂漠、雪山といった今までにない地を闊歩する恐竜が見られてよかった。

ずっと同じような風景が連続することもなく、視覚的にも飽きが来なかったように感じる。

また、ワールド主人公組とパーク主人公組の2つのパートに分かれて見所を分散させつつ、終盤には両者が合流を果たすのもグッド。


物申したいところ

”新たなる支配者”って、お前のことやったんかい!!!!!

イ  ナ  ゴ  ?????

既に散々言われているに違いないが、シリーズ完結作最大の脅威がイナゴというのは一体どうなんだろうか……?

我々はあくまで、大画面の中で躍動する恐竜を観にきたはず。
決して、人の顔よりも大きくて無駄にリアルなイナゴが飛び回るのを観にきたわけではない。

要素の1つとして、虫が出てくる分は全然良いと思う。

ただ、ここまでガッツリ本筋に関わるとなると話は違ってくる。

イナゴが食糧問題、ひいては人類全体の問題を引き起こすという設定はたしかに面白い。

しかし、「それ『ジュラシック』でやる必要なくね……?」と言われたらどうなんだろうか。

「イナゴ流星群」

さらに、「イナゴ流星群強すぎ問題」も存在する。

ストーリー終盤、今回の元凶バイオシン社CEOのドジスンは、自らの陰謀の証拠隠滅を図り、研究所内のイナゴを焼却処分した。

ところが、このイナゴ、ゴキブリ以上にしぶとかったのである。

なんと、イナゴは炎上しながら研究所の天井を突き破り外へ脱出!
大群で空を飛びながら、燃える身体で森を焼き尽くす!

炎上する森、煙に覆われた夜空、次々と地上へ墜ちる火球(イナゴである)、そして逃げ惑う恐竜たち。

おそらく、巨大隕石落下による恐竜絶滅のシーンのような画を撮りたかったのだろうが、元凶がイナゴと思うと、ぶっちゃけシュールなギャグにしか見えない。

目玉の「大迫力恐竜バトル」が残念

『ジュラシック』シリーズの醍醐味の一つは、恐竜同士のスペクタクルなバトルシーンに違いない。

個人的には、『ジュラシック・ワールド』終盤の、
強敵インドミナス・レックスをティラノサウルス、ヴェロキラプトル、そしてモササウルスの3頭の力で打ち破るシーンが印象に残っている。

今作では、ティラノサウルス VS. ギガノトサウルス の夢のカードの実現に心を躍らせるも、1回戦のティラノの「かませ感」にガッカリ。

終盤に期待をするも、なんとここでテリジノサウルスが乱入。
「三つ巴も面白そうじゃないか!」と気を取り直すも、

「えぇ、そんな決着っすか……。」と、ぶっちゃけ残念だった。

新登場のテリジノサウルスを活躍させたかったのかもしれないが、

謎に乱入してきただけのテリジノの爪に、まるで計画してあったかのように都合よく串刺しにして決着とは……。

ギガノトさん、ビジュが良いだけに残念だ……。

キャラクターの行動原理が謎

一般に、どんな作品でも、キャラクターにはそれぞれの「目的」が存在する。

そうでないと、キャラクターはわざわざストーリーになるような、なんらかの「障害」を乗り越える行動をする必要はない。

ところが、今作はキャラクターの「目的」や行動の「動機」がよくわからない部分が目立ったように思う。

具体的に言うと、
飛行機のパイロットのケイラ、ドジスンの部下のラムジーだ。

・ケイラについて
彼女は元々は裏稼業の運び屋として、元凶のドジスンに協力していた。
しかし、少し言葉を交わしただけの主人公クレアのピンチに際し、突然手のひらを返したかのように味方となる。

その理由は
「クレアのメイジーを想う必死な気持ちに共感したから(ケイラも家族に仕送りをするために裏稼業に手を染めている)」
といったものかと思うが、寝返りは重大なリスクを背負う行為なので、それだけの心変わりに相応しい描写をもっと入れて欲しかったところだ。

・ラムジーについて
彼は部下としてドジスンから特に信用されていた。
しかし、ドジスンの陰謀に嫌気が差していたのか、マルコム博士に社の不正行為を密告する。

本当は味方なのだが、それを示す伏線が見られなかったため、彼が寝返って味方についたときは、てっきりこちらが騙されているのではないかと疑心暗鬼に陥った。

「目的」や「動機」とは少し違うかもしれないが、こちらにも何らかの前フリやヒントがないと、キャラクターにも物語にも没入できない、と感じた。

恐竜の生物学的考証に対する疑問

『ジュラシック』シリーズ一番の魅力は「大迫力でリアルな恐竜」であることに異論はないと思うが、それは科学的根拠に裏打ちされた緻密な設定の数々に支えられているはずだ。

ところが、恐竜の生態的な観点から、新登場のディメトロドンについて僕は疑問を抱いた。

ディメトロドンといえば、なんといっても背中に大きな帆を持つのが大きな特徴だ。

「この背中の帆、何に使うん?」と思うはずだが、
「日光や風に当てて体温調節をするため」という説が最も有力とされている。

にも関わらず、作中で登場するのは地下の真っ暗な洞窟の中なのである。

洞窟の中には日光も風も存在しないので、この描写は、科学的な観点からは矛盾があると疑わざるを得ない。

他にも、炎上するイナゴについて、

「こいつらいつまで燃えとるん!www」という感想も抱かざるを得ない。

毛皮があるわけでもない昆虫がずっと燃え続けているのも不自然だし、何より、先に翅が燃え尽きて飛ぶことはできなくなるはずだ。

そして、映画として見せる上で必要な演出もあるかもしれないとはいえ、恐竜たちがどうも舞台装置としての役割に役割に寄りすぎてしまっている感も覚えた。

例えば、
主人公たちに執拗ににじり寄って威嚇する恐竜(リアルだともう食われてるやろ、と思うようなもったいぶり方)など。

前回のラストで提示された問題に回答していない件について

イナゴのインパクトもさることながら、個人的にはこれが一番モヤモヤした。

前作『ジュラシック・ワールド 炎の王国』では恐竜たちが人間の居住圏に解き放たれ、

マルコム博士の
"Welcome to JURASSIC WORLD."
の台詞とともに、

シリーズはジュラシック・”パーク”からジュラシック・”ワールド”へと、真の意味でフェーズの移行を遂げた。

そこで投げかけられた巨大な問いこそ、
「人類の暮らす世界に恐竜が解き放たれた今、人類は恐竜とどのように関わっていくべきだろうか?」というものだ。

そのような状況では、人類は

  • 恐竜の共存を目指す

  • 恐竜を駆逐する

  • 恐竜に屈する

の大まかに3つの道を選ぶことになると思う。

この中から1つを選ぶとすれば、おそらく作中では「共存ルート」を選ぶことになるはずだが、

僕は、「なぜ、共存ルートを選んだのか」
そして、「どうやって、共存ルートを確立していくのか」

を、僕は今作に期待していたのだ。

それが、回答が腑に落ちないとかそういうレベルではなく、回答すらしてもらえないとは……!!

もしかすると、本当は答えは示されていて、僕が気付いていないだけかもしれないが。


おわりに

以上、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』について、僕の意見・感想を述べてきた。

ざっくり語る、と言いながらも、いざ書き始めると5,000字超の長文になってしまった。
自分が思っていたよりも、『ジュラシック』シリーズへの思い入れは強かったのかもしれない。

もし次のシリーズがあるとするならば、今度は一体どのような世界観、どれほどのスケールで物語が展開されていくのだろうか。

今作が完結作と言われてはいるが、次回作が作られることを祈りつつ、こちらで勝手に妄想にふけることにしよう。


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