Kenta Cobayashi

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最近の記事

Tokyo Débris

I looked out over Tokyo from the rooftop of Scramble Square and saw countless small pieces of debris that seemed to flicker in the evening sun. We live reluctantly among these concrete buildings that extend upwards with no apparent order.

    • トーキョーデブリス

      スクランブルスクエアの屋上から東京を眺めたら、無数の細かい破片が夕日に照らされてチカチカ光っているように見えた。当てもなく上に伸びていくコンクリートのビルの間で、俺たちはしぶとく生きている。 制御されたものと制御から溢れたものが編み出す眼下の光景に、写真は一体何ができるんだろう。トーキョーはデブリだらけ。再開発、SNS、イメージの氾濫、ノイローゼ、データ至上主義、NFT……。情熱の籠らない虚な瞳はスマホのディスプレイを繰り返し追ってみる。 抑圧された生がマスク越しの告白が

      • 第4章:触覚

        マインドの本来の役割は、現象を分析しその原因を知ることであった。われわれは四つの感覚器官に閉ざされた文明構造の中で、大きな遠回りを余儀なくされながらも、少しずつ真実に近づいてきた。それは己を知る長い旅路であった。われわれはそれを宗教史と呼んだり、科学史と呼んだりした。 「”有/無”は分離して存在するのか?」これが地球人類が数千年かけて、進歩と呼んでいる歴史の中で問い続けてきたことだった。そしてそれは、目耳鼻口に囚われたマインドが抱き続けた違和感であったーー「”存在する/しな

        • 第3章:四つの感覚器官

          マインドとは『現象を分析する能力』である。われわれは現れた事象を分析することで、他の生命とは異なる選択を取ることができる。現象は目耳鼻口の四つの感覚器官によって情報化される。このとき次のメカニズムを辿る。 《二分割情報処理》 四つの感覚器官は、あらゆる現象を”快/不快”として分割処理する。 《上下対立》 四つの感覚器官の判断はしばしば衝突し優先順位を争う。例えば「味覚は熟成したチーズを好むが、嗅覚はそのニオイを嫌う」といった具合に。 《同一化》 優先的に処理された感

        マガジン

        • Insectautomobilogy
          3本
        • 2018年 海賊の手紙
          4本
        • 自動車昆虫論
          3本

        記事

          第2章:新しい競争

          直立二足歩行がマインドを生み出し、マインドは道具という観念を生み出した。やがて農業革命が起こり、工業革命による科学技術の躍進を経て、情報革命ーー情報の収集量と解析力が加速度的に上昇する時代の只中を、われわれは生きている。 人間同士を始めとするあらゆる事柄の関係性が、数字によって表現される時代。数という抽象概念の解析に長けた者が、この星の権力構造の上方に座することができる。工業革命の結晶として核開発競争ーー東西を二分した冷たい戦争をみるとき、最強の解析力を担う超越的なマイ

          第2章:新しい競争

          第1章:今日の芸術

          どれだけの期間その存在によって影響を与えることできるかーーこれを文化活動の価値基準と置くならば、20世紀後期から21世紀前期における人類の代表作はフィンランドに存するオンカロとなるだろう。これは10万年の間、核廃棄物を管理する目的で建造された施設である。その圧倒的な時間感覚の前には、ピカソもウォーホルも、中世ヨーロッパや古代ギリシアの伝説の芸術家たちですら、余りにもちっぽけに思える。 『歴史に名を遺す』というゲームから脱け出して、今この時代において本当に意味のある芸術を描こ

          第1章:今日の芸術

          Low-Res Aesthetics

          Try to envision virtual reality in its ultimate incarnation. Conceivably, it’s only a matter of time before bleeding-edge hardware advances to an extent that this ultimate VR becomes indistinguishable from the “reality” we presently inhabit

          Low-Res Aesthetics

          The Grid Myth

          If asked to identify the first digital image, I would undoubtedly cite the cave paintings at Lascaux. To be clear, I’m not referring to the dynamic depictions of animals, but rather the grids present at their hooves. The above image is hou

          Insectautomobilogy

          Walking though residential Setagaya, the portmanteau “insectautomobilogy” popped into mind. It all started with an article on anthill research I had read earlier that day. In particular, termites craft mammoth mounds so intricate, the stru

          Insectautomobilogy

          低解像度の美学

          「究極のヴァーチャル・リアリティ」を想像してみよう。最先端のハードウェアは、私たちが住む「現実」と見紛うクオリティの高画質・高音質を実現するだけでなく嗅覚や味覚、触覚までも表現するだろう。接続された最先端のソフトウェアは複雑な物理演算を難なくこなし、その仮想世界独自のマテリアルを描画する。アーティストがその世界に初めてログインし、地球最先端のヴァーチャル・アートワークを創造する記念すべき瞬間が到来する…。 そのアーティストの行為は、地球に生まれた人類が地球の「土」を用いて器

          低解像度の美学

          グリッドの神話

          「デジタル・イメージ」の初出は?と訊かれたら「ラスコーの洞窟壁画」と応える。ダイナミックに描かれた動物たちではなく、その足下に記された「グリッド」を指して。 上野博物館で不意に遭遇したこの図形は、ビットマップに囲まれる私たちと二万年前のクロマニヨン人たちとを結び合わせた。「グリッド」は人類史にとってどのような意味を持つのだろう?空間を幾何学的に表現するその能力こそ、人間を人間足らしめているもの−−アダムとエヴァが食した知恵の実−−のように思えた。 私たちが世界を知るすべが

          グリッドの神話

          自動車昆虫論

          世田谷を散歩していて「自動車昆虫論」という言葉が浮かんだ。アリ塚の研究についての記事を読んだ後だった。 シロアリが創るアリ塚は、ひとつの生命のように緻密にデザインされている。内臓のようにいくつもの機能に別れた部屋があり、キノコが共生し呼吸を担い温度や湿度を一定に保っている。どうやってシロアリはこのような複雑なメカニズムを構築したのだろう?彼らは自分たちが巣のどの部分の建造を担い、それが全体にとってどのような意味を持つのか把握できるような、高度な知性を持っているというのだろう

          自動車昆虫論