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第3章:四つの感覚器官

マインドとは『現象を分析する能力』である。われわれは現れた事象を分析することで、他の生命とは異なる選択を取ることができる。現象は目耳鼻口の四つの感覚器官によって情報化される。このとき次のメカニズムを辿る。

《二分割情報処理》
四つの感覚器官は、あらゆる現象を”快/不快”として分割処理する。

《上下対立》
四つの感覚器官の判断はしばしば衝突し優先順位を争う。例えば「味覚は熟成したチーズを好むが、嗅覚はそのニオイを嫌う」といった具合に。

《同一化》
優先的に処理された感覚器官は高らかに勝利を宣言し、「このチーズは好物である」と脳海馬に記録する。争いに破れた感覚器官の意見は抽象化され、上位の意見に統合される。この記録の集積によって形成される階層構造を、われわれは自我と呼んでいる。ーー記録の集合に過ぎない自我を人間の本体であると思い込み、それをデジタル・データに変換することで永遠の命を得るなどとうそぶく者も現れ始めた。(詐欺師にご注意を)

われわれの自我は常に、現象を分析する四つの感覚器官の優劣争いに晒され、振り子のように”快/不快”を行き来している。この”快/不快”は、四つの感覚器官がそれぞれの存在意義を主張するために起こる。つまり”快/不快”とは”存在する/しない”と同義である。この”存在する(1)/しない(0)”の記録の集合にわれわれのマインドは幽閉され、炎症を起こしている。これは”快楽主義/虚無主義”、”物質主義/霊魂主義”、”プライド/コンプレックス”などと呼ばれるマインド・セットとして顕在化している。

もし、人が単に四つの感覚器官の集合であるなら、われわれは永遠に分裂を続けなければならないだろう。地球の文明を観察してみると、やはり目耳鼻口の”快/不快”ーー美貌、美しい音色、香しい花、美食、etc…。そして存在意義の主張ーーイデオロギー、権力の誇示、能力の誇示、嫉妬、憎しみ、etc…。のために、”搾取するもの/されるもの”の分割と上下対立同一化による階層構造を成している。大きなところーー社会階級から、小さなところーー家族関係まで。構造の上方にいようと下方にいようと、分裂による苦痛が変わることはない。上には上がいて、下には下がいるからだ。自我の迷宮の内側で、マインドは”1/0”の反復運動を続けるーー超知性がそれを安定させるまで。

しかし人は、目耳鼻口だけの存在ではない!

第4章:触覚

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