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月の魔法「英語のそこのところ」第117回

【前書き】

 今回、投稿するエッセイは7年前の2016年9月15日に水戸市の「文化問屋みかど商会」のファクシミリ配信誌に掲載されたものです。時節にそぐわない内容はご容赦ください。
 前の会社で「お月見イヴェント」をやろうとして、Native English Speakerたちに猛烈に反対されたことがあります。みなさん、なぜだと思われますか? それを思い出して書いてみた話です。(著者)

拙著「英語の国の兵衛門」のkindle版を出版しました。

 2008年に株式会社メディア・ポートより上梓され、その後同社の解散により入手不可能になり、みなさんにはご迷惑をおかけしておりましたが(一時は、古本が2万3万ぐらいで取引されていたようで。いやはや、私には一銭も入りませんが_| ̄|○)、kindle という形で復活させることが出来ました。
これを機にぜひお手に取ってみてください。

新展開 第4弾! 映画や小説の台詞を英語にして英語力を鍛える「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル10」発売中!

 English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト(全10巻)で、英文法を網羅しましたので、「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル7」以降では、様々なコンテンツの名言、名台詞を英語するより実践的なトレーニングをやっていきます。

映画などの日本語のセリフは、字幕作成者の素晴らしい努力のおかげで自然な日本語になっています。つまり、自然な日本語を英語にするときの最高のテキストなんです。

 この「ESM Practice 10」では、とスターウォーズでレイを演じたデイジー・リドリーのインタヴューとノッティングヒルの恋人たちのセリフを英語にすることにトライします。

画面越しでなく、素のあなたはどんな人?(from デイジー・リドリーのインタヴュー)
口が悪いわ。(from デイジー・リドリーのインタヴュー)
シュールだけど、素晴らしい。(from ノッティングヒルの恋人)
うちには防犯カメラがあるんだ。(from ノッティングヒルの恋人)
ズボンに本を隠しただろ。(from ノッティングヒルの恋人)
どんな本?What book? 君のズボンのなかの本。(from ノッティングヒルの恋人)

お愉しみに。

大好評! Kindle で一日500ページビュー 「English Sentence Maker」シリーズ

 English Sentence Maker は、あなたの感情や意見、思っていることを伝えるためにはどの時制や助動詞、文法事項を選ぶべきかがわかる実践英語・英会話力養成テキストです。

 著者の主宰する英会話スクール「英語・直観力」の企業向けテキストから、契約企業様向けの問題文などを差し替え、一般向けに手直ししました。

 7年間で100名以上のビジネスピープルを単独での海外出張や海外赴任ができるスキルを持った国際ビジネスピープルにした実績があります。

 ぜひ、この実績あるテキストを完全マスターしていただき、世界を相手にビックディールを成し遂げ、人生を愉しんでください。このテキストはその扉を開くカギになります。

 実践英語・英会話力養成テキストEnglish Sentence Maker は、3つの特色を持っています。

 ひとつ目は、能動的な学習だということ。
 English Sentence Maker は書き込み式のテキストです。各Lesson ごとの解説を読み、そのあとに掲載されている日本文をご自身のノートもしくはkindle のノートブックなどに英語にして書き入れてください。その際に、知らない単語は調べたりせずに、日本語のまま英語の文の位置においてください。そうすることで、知っている単語、知らない単語を区別し、身に着けるべき単語を浮かび上がらせることが出来ます。

 ふたつ目は、どの文法事項を使うかの判断基準を身に着けられるということ。
 小・中・高校と長い間英語を学ぶために、多くに人々は英語の現在形、過去形などの文法事項を知っています。しかし、残念ながら、その文法事項をどういう場合に使えばよいかという判断基準を身に着けていません。

 たとえば、ここ何ヶ月かフットボールに夢中になっているということを伝えたい場合に使うべき時制は、現在形でしょうか? それとも現在進行形でしょうか? 迷われると思います。
 この知ってはいるけれども使い方に迷ってしまう文法事項を使う判断基準を各Lesson ごとの解説でくわしく説明しています。それを理解することで、英語を使う際に十全にあなたの感情や意見、思っていることを伝えることが出来るようになります。

 みっつ目は、英語を英語で考えることが出来るようになるということ。
 English Sentence Maker は日本語を英語にしていくことで、英語を習得していくテキストです。しかも、どういうときに、どういうことを言いたいときに、どの文法事項を使えばよいかという判断基準が出来ていくために、日本語の文字面を英語に移していくのではなく、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを英語にするというスキルを身に着けることが出来ます。頭の中のイメージから英語を作ることが出来るということは、そこに日本語は介在しません。つまり、英語を英語で考えることが出来るようになるのです。

具体的には、

私は彼が来るだろうことを知っていた。

という日本語を英語にする際には、日本語の文字面を英語に移していくと、

I knew that he will come.

と、しがちです。「知っていた」なのでknew、「来るだろう」なのでwill comeというわけです。
 しかし、よく考えてください。「彼が来るだろう」というのは、「私が知っていた」過去の時点のことです。であれば、「彼が来るだろう」と書いてあっても、過去から見た未来のwould を使って、would come としなければなりません。日本語をその字面のまま英語にしてはいけないのです。しかし、日本語を読んでその内容をイメージして、そのイメージを、判断基準をもって英語にすることが出来れば、問題はなくなります。頭の中に時の流れのイメージがあるために、

I knew that he would come.

という英文が難なく作れるようになります。 英文作成力や速読力を付けたいと思っておられる方ぜひ、手に取ってみてください。必ず、英語・英会話が出来るようになります。

☆「English Sentence Maker 実践英語・英会話力養成テキスト」および「ESM Practice 実践英語・英会話力トレーニングドリル」で使っている英文はすべて、Native English Speakerと協同で製作したものです。安心して、Native English Speakerの自然な英語を知り、習得してください。

【本文】

 この号が出るのは9月の15日ですから、今日は旧暦の八月十五日いわゆる中秋の名月です(23年は9月29日)。北半球では秋分の日あたりに月が見やすい位置に来るんで、綺麗に見える。それに、真夏より空気が安定してきてるんでこれまた月が冴えるんです。昔の人は、よく空を観察していたんでしょうねぇ。良い季節を選んでお月見という風習を作ったものだと思います。

 今はどうかは判りませんが、私の子供のころは小学校や地区のイヴェントで「お月見」がありました。ススキの穂を子供たちが持ち寄って、月見団子や里芋をつっつく。大人たちはそれにお酒が入って宴会、子供たちは夜中に友達と会えるってんで、わけもなく興奮して走り回ってのじゃれ合いというてんやわんやが繰り広げられる。
 ほんとは月を愛でながら一句、なんて風雅な催しがあってもよさそうなものですが、福岡の田舎ですから(笑)そんな文化的な感じではありませんでした。

 そう言う私は天文少年だったので、お年玉をはたいて買った口径15センチの天体望遠鏡を持って行って、里芋は食べられないから(極度の偏食でして)月見団子を頬張りながら月観測。
「あれが、ティコ・クレーターと言って月の表では1、2を争う大きさのクレーターなんだ」
 とか、
「その左下の黒い部分が嵐の大洋の海と言って一番大きい海なんだよ」
 と周りの大人たちや友人に話して、ちょっとした天文博士気分を味わっていました。
 でも、悲しいことにみんなすぐ飽きちゃうんです。はじめは、
「どれどれ、見せてみろ」
「見せてよ!」
 と私の天体望遠鏡も人気があるのですが、しばらくすると、
「ふ~ん」
 と言って去っていく。私の説明が詰まらないのもあるんでしょうけど、月観測って派手さはないですからね。じっくり月と宇宙の境目を見れば、月のクレーターにあたる光が動いて行くので、微妙に影が移り変わっていくのが面白いんですけど(そこが、月面での日の出、日の入りです)、これはこれで地味なもの。宴会やじゃれ合いには敵いません。

 そういう経験があるので、英会話スクールに勤めていた時に9月のイヴェントとして「お月見パーティ」をやろうと提案したことがあります。でも、Native English Speakerたちに猛反発を喰らってあっという間に却下されちゃった。いつもはお酒さえあれば必ずYes! と言う連中だったので、あとから一体どういうことなのかと尋ねたんですが。

「だって、月を観てどうするのさ」
「いや、月を観ながらゆったり酒を呑む。できれば、里芋になんかをつまみにして」
 子供の頃の純粋な月への好奇心を失って、すっかり汚れちまったおっさんになっている徳田がRichに答えた。
「地味だよ。ただ、月を眺めるだけでしょ?」
「まぁ、そりゃそうだけど……」
 諦めきれないのか徳田が食い下がる。
「月を眺めて、英語で俳句を作るのはどう?」
「また、そういう……いきなりハードルを上げる」
「じゃあ、あらかじめ英語の俳句を憶えて来てもいいことにして」
「無理、無理、そういう面倒なことはNative English Speakerはやんないよ。第一、月を観ること自体がさぁ……
「月を観ることが、なに?」
 突然言いよどんだRichに徳田が尋ねた。
「あれ? 徳さん知らないの?」
「知らないってなにを?」
 Richは肩をすくめて口をへの字に曲げた。
「知らざぁ言って聞かせやしょう」
 徳田と付き合うと変な日本語ばかり憶える。それはそれで、Richは愉しんでいるようだが。将来が心配だ。
「月を観ることは、Native English Speakerの間では忌み嫌われることなんだよ」
「……」
 徳田はきょとんとした顔でRichを見た。
「ほら、Luna (お月さま)の形容詞形のlunatic は『気が狂っている』っていう意味でしょ? それに、イギリスでは月光を長時間浴びると『月光病』という精神異常が起こるって言われているし」
「はぁ? でも、迷信でしょ? そんな病気きいたことないし」
「おっと、おれたちよりもずっと近代的なこと言うね。無知蒙昧な迷信は否定すべしってことだ」
「だって、そんなこと言ったら日本人なんかみんな精神異常になっちゃうしね」
「たしかに。でも、あんまり気味がいいことじゃないんだ。不快とまではいわないけど、月を観るのは緊張感がある。自分の手綱を離さないようにしなきゃと思うよ」
「あはは、Richが狼男になるってこと?」
 徳田は満月の夜に豹変する狼男の話を思い出していた。
「そう。Catherineは『黒ミサ』に参加かな」
 金髪碧眼の美人のCatherineがPCの向こうからちらっと徳田とRichを見る。
「早く仕事しなさいよ。油ばかり売ってると、ネズミにしちゃうわよ」
 Catherineは自分の仕事が進んでいないのか不機嫌に二人を注意した。
「チュウ、チュウ」
「Squeak-Squeak」
 すでにネズミなってしまった徳田とRichは慌ててカタカタとキィボードを叩き始めた。

 ところ変われば品変わるではないですが、美しい月を観ながらという日本の風習が彼の地では全く受け入れられないことに驚いたものでした。
 でも、この「月を観ることを忌み嫌う」「月を観ると精神に異常をきたす」という迷信は、実は欧米だけのものだったのではないようで、調べてみると平安時代までは日本でも同じようなことが言われていたようです。
 竹取物語のなかに「月の顔を見るは、忌むこと」というかぐや姫をたしなめるシーンがあったり、源氏物語に「月見るは忌みはべるものを」という表現があったりする。
 確かに月夜には人を不安定にさせるものがあるのかもしれません。

「でも、人間が月を観てると不安になるのはなんでなんだろうねぇ」
 と徳田が拘る。
「でたな。なぜなぜボーイ」
「ボーイって歳じゃないけどね」
 ふたりは手を休めずに続きを話し始める。
「Rich説は?」

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