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わたしのおやつ紀行

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美味しいものを食べることがなによりのご褒美です。条件は自分のために買うこと。自宅のキッチンで食べること。わたしが見るおやつの世界。
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薄氷と薄氷

薄氷と薄氷

さむい。

朝、起きて窓を開けると白い息がでるようになってきた。

空気が澄んで高くなった空に冬の訪れを知る。

冷え体質のわたしとしては寒さはかなり身体に応えるが、冬の濃く、真空されたような空気が好きだ。

寒さで身体が丸くなるように、気温の低さに比例して、空気までもがぎゅっとちぢこまって密度が濃くなっていくような気がする。

寒い。起きたくない。いやでも。といくばかりかの葛藤を繰り返し、熊のよ

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新宿と月餅

新宿と月餅

新宿ほど混沌とした街はほかにないと思う。

新宿にある学校に通い、その後勤め先も新宿だったこともあり、18歳から20代前半のほとんどの時間を新宿で過ごした。

新宿という街はとても深ーく、わたしのような若輩者が語れるような場所ではないが、

朝の南口で、皆同じような靴を履き、同じようなスーツを着こみ、これまた皆同じように少し沈んだ表情で足早に甲州街道を下っていく出勤中のサラリーマンの波を「バイオハ

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季節の移ろいに食べたいお菓子

季節の移ろいに食べたいお菓子

いつの間にかじっとりとした汗をかかなくなり、日が暮れると鈴虫の音が聞こえるようになった。

いつものごとくあっという間に過ぎて行った夏はぐったりと体に疲労感をへばりつかせ、特別なにかがあるわけではないのだけれど、新しい季節を迎えるために心がそわそわと落着きがない。
季節の変わり目になるといつも思い出すのが「美しくいるためには季節とともに生きること」というどこかで目にした本の一節だ。

はっきりと季

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栗おはぎと十三夜

栗おはぎと十三夜

ここ数日で朝晩がすっかり涼しくなり、装いも秋のものを選ぶようになった。おとついは秋になったら履こうと出待ちしていたブーツをおろした。

良い感じの弾力あるしなやかな皮が歩く足に遅れて付いてきていて、まだ馴染んでいないところが正直すこし疲れるけれど新鮮で心地がいい。きっとこの先この靴とは長い付き合いになりそうだ。未来を予感させる靴と出会えたことで自然と心がはずむ。

秋。秋のファッションもときめくが

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お土産とウエスト

お土産とウエスト

柳の木の側で立ちつくしてしまった。

連日飽きもせずに本領を発揮している太陽と、きれいな石畳の歩道はたっぷりと日差しを受け、目玉焼きでも焼けるんじゃないだろうかと思うくらいの熱気を放っていた。たまに来る風も爽やかからは程遠く、まるでオーブントースターのなかにいるようだと思った。立っているだけでじっとりとした汗が背中をつたう。

あまりの暑さにわたしの頭はなにかを考えることを手放してしまったようだ。

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