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「みかんとひよどり」を読んで

私はヴィーガンではありませんが、あんまり肉を食べないベジ生活を送っています。これは別に思想の問題ではなく、単なる嗜好なのですけど。

とはいえ、「好き/嫌い」では済まされない場合もあります。アレルギーはもちろん、宗教上の理由もあります。日本人はその辺疎い人が多くてハラハラします。以前ちょっとご縁のあった事業所でも、外国人留学生をたくさん集めていろんな意見を聴く会を設けたものの、その場で出されたお弁当がいかにも日本的な幕の内弁当なので閉口しました。食材・調味料を厳密に考えるとほとんどNGだったのでは(味付けに日本酒とかみりんもつかっていそうだし)。

宗教ではなく、思想として肉を食べない生活もありますね。とはいえ「ベジタリアン」と言っても千差万別で、四つ足の肉でなければ大丈夫(つまり鶏肉はOK)な人もいれば、牛豚鶏羊はダメでも魚介はOKの場合もある。肉はダメでも卵と乳製品はOKとか、卵も乳製品も含めて動物性たんぱく質はダメとか、ホント、いろいろ。

動物愛護を第一に掲げる方の場合は、食べる以外に「身につける」も徹底していて、皮革製品を使わない。バッグ、財布、靴などなどね。

「フルータリアン」になると、植物性でも「命を奪うものはダメ」らしく、穀類(種子を食べちゃったら次の世代が生きられない)とか根菜(根っこを引き抜いちゃったらその植物が死んでしまう)はダメ。リンゴみたいに木になるものは収穫してもその木が枯れるわけではないからOKらしい。

「ローフーディスト」はraw foodだから生のまま、つまり加熱したらダメ。野菜や果物は生のままですが、ご飯とか豆腐みたいに加熱したものはNG。刺身は生ですが、ベジタリアンでローフーディストになると刺身もダメなんだって。

・・・とまあ、考え方によってホントに千差万別なわけで、どれが正しいのかわからないというか、それぞれの主張を聞くとそれぞれ正しいような気もしてきます。

最近は都会でも野生動物が出没するというニュースがありますが、これが田舎だとニュースにもならない「日常」です。家で育てていた野菜をかじられたり、庭の果実を食べられたりします。ただ趣味レベルではなくそれで生計を立てているような農家の場合、野生動物による被害は深刻です。

そういった「害獣」の狩猟について、この小説では真っ向から切り込んでいます。狩猟という行為そのものが「命を奪う」ことではないかという動物愛護の観点、害獣を駆除してもらわなければやっていけない農家の観点、依頼されて行っていることで恨みを買うハンターの観点、そしてジビエ料理を食べたいという消費者の観点、そしてジビエ料理を提供する料理人の観点、と、見る位置によって見え方が全く異なります。

私自身はジビエとはかなり距離があるのですが、ジビエと関わる人が私の周りには多いのです。なのでこの本に出てくるいろいろな人の意見も実際に身近で聞くことが多くて、改めて考えさせられました。どの考え方も正しいし、どの考え方も尊重したいと思うけれども、対立しあう考え方は両立できないのです。どうバランスを取っていくか、都会に住む人にも考えてほしいと思いました。

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