「青が散る」を読んで
大学のテニス部を舞台にした、1982年に出た青春小説です。その後ドラマ化もされて話題になったものの、私はドラマを見ていませんでしたし、原作もこれまで読んだことがありませんでした。
当時の私は小学生ですからねえ。小学生からすると「大学生たちの話」というのはあまりに「オトナ過ぎて」、関心がなかったんですよ。
その後宮本輝作品を読む機会はたくさんあって、大学生になってから「優駿」や「錦繍」は夢中になって読んでいたのに、なぜかこの「青が散る」は手に取らなかったんですよね。
40代の頃に同年代の読書家の友人と話していたら、「なんだかんだ言って、人生の中での一番の愛読書は『青が散る』かなあ」と言うのです。へー、そんなにいいのか、と思う反面、それくらいインパクトの強い作品ならこちらも気合を入れて読まないとダメだよなとさらに先送りにしてしまっていました。
きっかけは先日、ある学生と話したこと。
「両親が昔からテニスをやっていて、その影響で自分もテニスをやっていた。自分の『リョウヘイ』という名前もテニスの小説から取ったらしい」というのです。「なんていう小説?」と聞いても「うーん、よく覚えてないんですよね」とあやふや。
テニス小説なんて私の中では「青が散る」しかないので、試しに検索したらやはり主人公の名前が「燎平」。そうかやっぱり影響を受けてる人が多いんだな。
…というわけで、満を持してようやく読みました! 上下巻ありますが、一気に読んじゃいました。
もちろん私の大学時代とは全然違うのですけど、でも学生の頃の「こんなことしてていいのかな」という気持ちと「今しかこんなことできない」という気持ち、あるいは将来何の役に立つのかわからない(あるいは何の役にも立たないとわかっている)ことにみんなで熱中したこと、眠れなくなるくらい考えたことなどなど、なんかぶわーっと思い出して胸が苦しくなりました。
これを、そのタイミングで読んでいたら、ああ確かに「この小説は何で私の気持ちをこんなにわかってくれるの」と思ったかもしれません。
悲しいかな、今の私はどこかで「大学教員としての目線」も持ったまま読んでしまうんですよね。「そこでそっち行ったらダメでしょ」と冷静にツッコんでしまう部分もある。ああなんてつまらない大人になってしまったのかしら。
といっても、今の大学生が読んでどれくらい共感できるんでしょうねえ。
どんなに練習したってせいぜいインカレにいけるかどうかというレベルだと自覚していたら、今の学生が大事にしている「コスパ」的には練習に打ち込むのは効率が悪いんじゃないでしょうか(苦笑)。