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aとtheの話① 冠詞の“感覚“をつかませる

最初の記事の内容は何にしようかな〜、と結構長いこと悩みました。
いろいろと考えた結果、一見簡単そうで見落とされがちだけど、英語において極めて重要な文法項目。それでいて、正確に教えるのがなかなかに難しい文法項目である「冠詞」を取り上げることにしました!

“感覚”を教える方法

英語に限らずどのような言語でも、理論を教えることよりも、感覚をつかませることの方がよほど難しいですよね。英語でいえば、関係詞のような理論系の文法よりも、前置詞のような感覚系の文法の方が授業がしづらいと感じる先生方も多いのではないでしょうか。

“感覚“をつかませたい時に私が心がけていることは主に2つです。
まず、「母語との比較をさせる」こと。生徒さんも当然母語の感覚は備えていますから、その感覚に引き寄せて外国語の感覚をつかんでもらおう作戦です。前置詞の感覚をつかませる時などには、この方法はある程度有効です。英語の前置詞は、日本語の後置詞(助詞)にあたりますから、日本語の助詞の感覚に寄り添いながら、前置詞が付属語である点、常に名詞とセットで現れる点など、前置詞の重要な感覚をつかませます。

しかし、もちろん英語の前置詞と日本語の後置詞は完全には一致しませんし、そもそも母語に該当する統語範疇や文法的要素がないようなパターンも存在します。その場合には作戦その2、「体を動かす、または絵を描く」ことです。“感覚”を頭だけでつかもうとしても限界があります。ですので、理想は体を動かしてみて、感覚を体で体験してみてほしいのです(スポーツと一緒ですね)。でも、適当なアクティビティがない場合もありますから、その場合には絵を描きます。つまり、視覚でつかませよう作戦ですね。
ここで特に注意してほしいのが思春期の男女!ハスに構えてますよね〜笑
「ダルい=かっこいい」というお年頃。うーん、わかりますよ。アクティビティには参加しないし、絵も描かないかもしれませんね。そこは先生が頑張って、説得してください!体を動かすこと、絵を描くことに意味があるんです。

冠詞の“感覚”のつかませ方

さて、今回のテーマとしている「冠詞」は、感覚をつかませる系の最たる例ですね。日本語には冠詞にあたる統語範疇はありませんので、これはなんとか体で覚えるか、絵で描くしかありませんな。

冠詞には、不定冠詞(a/an)と定冠詞(the)があるわけですが、この二つの教え方は先生によってかなりまちまちだなぁ、という印象を受けます。
私は、不定冠詞は「たくさんあるうちの1つ(ランダム)」、定冠詞は「みんなで“せ〜の“で指させるもの(共通認識)」と教えています。しかしこれだけでは感覚的でないので、まずは体を動かしてもらいましょう。

冠詞の“感覚”をつかませるアクティビティ

多くの場合が複数の生徒さんがいる教室での授業ですので、生徒さんたちにこんな指示をします。
「今から“せ〜の“で、生徒を1人指さしてね。はい、せ〜の!」
ここで「本当は人を指さすのは良くないけど、今だけ特別ね」とか言っておきます。それから学齢にもよりますが、1回の「せ〜の!」では指さしてくれない場合もあるので、その場合にはおいでやす小田さんになります(「ぅおーーーい!!!」)。そんなこんなで指ささせると、もちろんそれぞれの指がさしている生徒はバラバラになります。この「指がバラバラの感覚」が不定冠詞a/anの感覚ですね。

では次のステップです。
「じゃあ次。(小声で)ちょっと犠牲者を…(1人見つけて)あ、決めた。では、今から“せ〜の”で、今日教室に遅れて入ってきた生徒を指さしてね。せ〜の!」
当然ですが、ここでピックアップする生徒は、1人に絞れる何かしらのキャラクターを持った生徒でなければいけません。もうひとつ付け加えると、身体的特徴などでピックアップすることなどもってのほかです。クラスの人気者やひょうきん者、ナイスキャラなんかがいると良いですね。1人に絞れるなら「ボーダーの服」などでも良いですね(メガネの生徒とかはNGです)。
さて、今回は生徒たちがクスクス笑いながら、間違いなく1人の生徒を指させます。(選ばれた生徒にも感謝の言葉を忘れずに!)
このみんなの指がそろう感覚を覚えさせたいのです。言うもでもなく、この「みんなの指がそろう感覚」が定冠詞theの「共通認識」の感覚です。
こんな感じで体を動かすと授業空間も温まりますし、何より生徒が体の感覚を通して冠詞の正しい感覚を学んでくれます。

冠詞の“感覚“をつかませるために絵を描いてまとめてみよう!

さて、次に生徒たちのノートに何を残すかです。体の感覚は次第に薄れ消えてしまいますから、その感覚を正確に書き起こしたような絵を描かせるのが理想的で効果的です。私はこんな感じの絵を描きます。
…あ、もうお気づきかと思いますが、私には生来絵心がありません。でも先生として練習した結果がこれです。今も練習中ですので、どうか温かい目で。。。

とにかくつかませたいのは「指をさす」感覚です。この指さしの感覚は、冠詞を学ぶときに非常に重要な感覚なんです。というのも、定冠詞theにはもともと何かを指さす機能が備わっているからです。
重要なのは、みんなで“せ〜の”で何かを指さした時に、みんなの指が「バラバラのものを指さしている感覚」と「同じものを指させる感覚」なのです。私は上記のような(下手くそな)絵を描いてみせた後で、口頭でこんな話を付け加えます。
夜に外に出た時、「みんなでせ〜ので星を指さそうぜ、せ〜の!」ってやったらみんなバラバラになるよね。だから、a star。だけど、「みんなでせ〜ので月を指さそうぜ、せ〜の!」ってやったらよほどヤバい人じゃない限りみんな同じものを指させるよね。だから、the moon。じゃあ、昼に外に出た時の太陽は??
身近な例は多ければ多いほど納得感につながりますから。


冠詞という文法は、ここから少し話を広げて説明しなければいけないことがいくつかありますし、比較など他の文法項目を説明する時にもちょこちょこ顔を出してくる文法です。
冠詞にまつわるすべての理解の原点が、この「指さしの感覚」ですので、この感覚はしっかりと生徒たちにつかませたいところですね!

さて、次回はそんな指さし機能を備えた定冠詞theとはそもそも何者なのか、少しマニアックな内容に迫ってみましょう!

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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