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(大人向け)タイトルが気になる昭和のお色気映画 第2回「スケバン株式会社 やっちゃえ!お嬢さん」

 動画配信サービスの普及により、これまでなかなか見る機会のなかったジャンルの作品が、気軽に鑑賞できるようになりました。こちらではタイトルが気になりすぎて、筆者が思わずクリックしてしまった昭和のお色気映画の鑑賞レポートをお届けします。

※紹介する作品はすべてR15+もしくはR18+指定で、今日の観点からすると不適切な表現も含まれます。紹介作品をご鑑賞の際は、その旨ご理解ください。また、配信が終了している場合もあります。ご容赦ください。

※今回、都合により画像は掲載できません。想像でどうにかするか、どうにもできない人は各自で捜索するなど、各自で対応をお願いいたします。

<第2回>「スケバン株式会社 やっちゃえ!お嬢さん」(R18+)(1984/にっかつ/小原宏裕監督)

 Amazon Prime Video、ひかりTV、TSUTAYATV、FANZAなどで配信中

 はい、今回は“日活ロマンポルノ”からの1作です。昔のエロティックな映画といえば“日活ロマンポルノ”と、映画ファンだったら当時を知らない世代でも耳にしたことのあるレーベルですよね。単なるポルノでは即物的で身も蓋もない感じですが、頭にロマンと付くだけで、なんだか若者には簡単に手の届かない淫靡な世界が繰り広げられていそうです。

 そんな大人のためのレーベルですから、「濡れた唇」「わななき」「私の中の娼婦」など、格調高い官能小説のようなタイトルも目を引きます。が、しかし、全くエロティックなムードを感じさせない、異質な1作を発見しました。それが今回の「スケバン株式会社 やっちゃえ!お嬢さん」、1984年(昭和59年)の作品です。

 筆者にとって、“スケバン”は、ヨーヨーやヌンチャクなどアイコニックな武器を携帯し、反社会的な行動をとっていた女子高生という認識ですが、当時は日本経済が好調だったので、不良の若者の起業意識も高かったのかもしれません。現代風に変換すると「スタートアップJK」みたいな感じでしょうか。彼女たちがどんな事業を展開したのかが気になります。

 ご家庭のPCブラウザで鑑賞する方は、「東洋経済オンライン」などのタブを隣に開いておけば、万が一背後から家族に覗かれても、仕事の情報収集の一貫だと言い訳できそうですね。

 それでは本編を見てみましょう。

 映画は誰もが耳にしたことのあるクラシックの名曲「乙女の祈り」のピアノ演奏から始まります。弾いているのは“聖子ちゃんカット”が似合う、清純そうな制服姿の女子高生。副題に「お嬢さん」(同名の邦題のパク・チャヌク監督作は国家間の緊張をエロスとユーモアで解きほぐす傑作でしたね)とありますが、どうやら本作は秘密の花園めいた女子高の“お嬢さま”を描くようです。

 主な登場人物は、ピアノを弾いていた主人公の笙子(しょうこ)、そして彼女を取り巻く二人の友人である同級生の知子と後輩のナミ。恵まれた環境に育ったからゆえの反抗心が芽生えたのか、笙子は「あたくしたち、これからスケバンになるのよ。非行に走るの」と宣言。

 「非行したら補導されるわ」と心配する友人に「このまま優等生で終わるのは青春の無駄遣いよ」「どうせならビッグにスケバンをやりたいの!」「スケバン株式会社を作るのよ!」と、優等生らしく三段論法で説得します。

 で、次のシーンからもう都心の雑居ビルの一室にオフィスを構えています。潤沢な資金力のある会社のようです。そして、まずはスタイルからスケバンを目指す彼女たち、制服のスカート丈をくるぶし近くまで長くしたり、グランドの土を均すローラーで皮のカバンを平たくしたりと、当時のスケバンファッションの美学が興味深いです。

 そしてみなさん、映画が始まってわずか3分45秒、ここでお嬢さまたちによる最初のサービスショットです。横並びの‌3人が一斉にスカートをまくり上げ、揺れるヒップから、純白のパンティをするすると脱ぎ始めます。レースやフリル、サイドをリボンで結ぶタイプなど、それぞれ下着のデザインが異なるのも“みんなといっしょがいいけど、被るのはイヤ!”な女子高生の気分が見事に出ています。

 本作わずか65分ですが、暴走族やヤクザの抗争、ロストバージン、リビドーを持て余した未亡人……など刺激的なエピソードがてんこ盛り。その一方で、女子高生たちの胸キュン純愛ストーリーがコメディタッチで進行するんです。

 このまま、話の流れを追って紹介していきたいところですが、時間も文字数も限られていますので、お色気シーンを中心に見どころをピックアップします。

(※ここからネタバレあります)

▽スケバンのVIO処理

 初仕事前に、なぜかオフィスで大股開きの笙子社長。「土手焼きの練習よ」「これくらい我慢できなきゃスケバンにはなれないわ……」とライターの火に苦悶の表情を浮かべます。光やレーザー脱毛がなかった時代、ワイルドな直火でのVIO処理がスケバンの通過儀礼だったことに驚くでしょう。

▽笙子の婚約者

 親が決めた社会人の婚約者がいる笙子。部屋で2人きりになったとたん笙子を押し倒した婚約者は、ズボンに手をかけながら「こんなつまらないものだけれど、誕生日の贈り物にしたいんだ」と。粗品贈呈ということでしょうか。理性を失った状況でも謙虚さを忘れない上流階級の品格を感じます。目的を果たす前に、サイダーのように沸き上がってしまった婚約者の欲望がエレガントに演出されているのが見ものです。

▽「一足お先にさよならバージン!」

 ある日、「スケバン株式会社」に風俗嬢あっせん依頼の電話がかかってきます。そんな仕事は受けられないと、笙子社長は憤るのですが、スケバンであることと処女であることの矛盾に耐えられなくなった、という知子が請け負うことに。「それでは皆さま、一足お先にさよならバージン!」と、キュートな名ゼリフを残し、オフィスを後に。知子のさばけたビジネス感覚が、スケバン株式会社の未来を握っています。

▽ナミの過去と恋心

 笙子を「お姉さま」と呼んで慕うナミ。実は中学生時代にスケバンだった過去があり、正真正銘のお嬢さまである笙子に憧れ、心機一転し女子高に入学。「お姉さまには汚れてほしくない」と恋心を打ち明けた後、体育館の倉庫らしき場所で、篠山紀信風の光に包まれながら美しいラブシーンが繰り広げられます。

▽屋根の上で横笛を吹く青年

 フェアリーな雰囲気の青年が唐突な登場をします。気になりませんか?

▽笙子の初体験

 とある事件がきっかけで、恋に落ちた笙子。ぎこちないキスから始まり、愛の力と本能に任せて求めあう若いふたり。筆者はついつい「笙子お嬢さま、初体験からそのポジションですか!?」と突っ込みたくなりましたが、ふたりのその後の力関係を示唆するものでした。「セーラー服と機関銃」のオマージュのような展開の後、単車の後ろに彼氏を乗せ爆走、恋愛をリードしていく笙子の姿が爽快です。


 鑑賞前は正直なところ、起業を夢みる高校生の性を大人が搾取するような話だったら嫌だなあ……という心配もあったのですが、そのようなシーンにはきちんと物語としてフォローが入り、家柄や世間体に縛られず、若者は好きなことをして生きていいんだよ、というメッセージを感じる、愛とエロスと笑いたっぷりの青春映画でした。

 女子高生たちが自分の意思でセックスを経験をしながら、それぞれの幸せを見つけるほほえましい快作で、80年代のファッションも素敵です。はっ! 肝心のスケバン株式会社の事業報告を忘れていました。こちらはぜひ本編でご確認ください。

追記

本作、平成ガメラシリーズや「デスノート」の金子修介監督が、助監督および脚本を担当されています。金子監督の劇場公開初監督作の日活ロマンポルノ「宇能鴻一郎の濡れて打つ」(84)は、現在開催中の「国立映画アーカイブ」の上映企画「1980年代日本映画――試行と新生」にラインナップされています。スポ根少女漫画「エースをねらえ」をパロディ化した笑える学園もので、エッチ度も高め。日本映画の殿堂の大スクリーンで、ロマンポルノを堂々と楽しむのも一興かもしれません。

 コラムは映画.com本体でも配信中。第1回は、「セックス喜劇 鼻血ブー」を紹介しました。

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