見出し画像

(12)〝デジ力〟の前に〝読書の筋力〟―「よく読む子」に育つ5歳頃からの本好き大作戦 ~ハリポタ読破編~


 つづきです。

 私がハリポタを勧めてから1年後、長女が4年生の時にミラクルなことが起こりました。
 

〈ハリー・ポッターが長女に起こした読書の奇跡〉

 ある時、読む本がなくなった長女が突然「ママ、私もう一回ハリポタ読んでみる」と1巻を手に取り出したのです。
 この1年間、ハリポタの話は特にしていませんでしたが、本棚にはずっと置いてありました。
 
 期待はしませんでしたが、黙って見ているとその日から数日間、長女は放課後、食事中、寝る前とほとんどしゃべらずに1巻を読んでいました
 
 食事中に本を読むことの是非はあるでしょうが、驚異的な集中力で読んでいる娘に対し、「ご飯の時くらいやめなさい」と叱ることはできませんでした。
 同じ本好きとして「本の中を旅して」いるのがわかり、少なくともこの時は「読ませてあげたほうがいい」と直感が働いたのです(とはいえ各ご家庭でご判断ください…)。
 
 そうして数日後、長女は私に「今から2巻読むから」と事も無げに言いました。
 さすがの私も興奮し「お・・・おもしろかったんだね?」と聞くと、「うん。2巻読むから」と淡々と本棚へ向かいました。
 
 1年間のうちに習った漢字も増え、読書は続けていたので筋力もついてきたのでしょう。そして読みたい時に本棚にそれがあった。これが「家に本、本棚がある」ことの効用でした。
 ―しまわなくてよかった。
 
 この日から長女は、1週間に1冊のペースでハリー・ポッターシリーズを読破
 ちょうどコロナ禍で放課後のお友達遊びが思うようにできず、習い事もお休みになる時期と重なったので放課後に読みふけり、1冊500ページ程ある本を全11冊、3カ月ほどで読破してしまいました。
 
 この期間の集中力は振り返っても驚異的だったと思います。
 
 私も「いい加減に寝ないと…」「早く食べて」「学校の用意しようよ・・・」などの注意をせざるを得なくなるほど、長女は物語の世界に没入。

 登場人物と一緒に泣き、笑い、ラストですべてが解決した時には文字通り飛び上がって
「ハリー良かった! やった!!」
 と喜んだ
のです。ソファーがミシミシいいました。
 その時の姿を今でも覚えています。
 物語の魅力が体中にいきわたっているような輝かしさでした。
 

〈「本の中でハリーと一緒に生きてるみたいだった!」〉

  いうまでもなくこれはハリー・ポッターシリーズがいかに素晴らしい物語であるかの証明であり、私の手柄の話ではありません。
 本好きにとってハリー・ポッターの凄さは常識で、勧めた私は「ハンバーグはおいしいよ」という程度の紹介しかしていないのです。
 
 そしてまた、これは長女にとって
「親に勧められたから読んだ本」ではなく、
「本棚にあった本を自分で選んだ」という体験になりました
 
 自分で選んだら、おもしろかった。
 自分の心が、そうなんだと確信した
 
 ―これに尽きます。
 
 「どんなところがいちばんおもしろかった?」と、少しだけ聞くと長女は「とにかく自分が本の中に入ってハリー達と一緒に生きてるみたいだった」と答えました。
 「2巻でトム・リドルの日記の中にハリーが吸い込まれていった時みたいに?」と聞くと、
「そう! そう! そんな感じ」

 ―まさにこれが読書の魅力で、本好きは多かれ少なかれ誰でもこの体験をしています。
 それ以来、「もっとおもしろい本が読みたい。何かない?」と長女が頻繁に尋ねてくるようになり、私は本を勧める親としてひとつの仕事を終えたと感じたのです。
 
 ちなみにハリー・ポッターの映画ですが、1巻を読み終えた週末にその映画、2巻を読み終えた週末にその映画・・・というように、ご褒美的なタイミングでDVDを上映しました。
 読破済みの本の映像作品を見るのは本好き人間の大きな楽しみなので、先に映画を見せたくなかったのです。
 
 長女の感想は「映画は映画で楽しいけど、いろいろエピソードが省略されているから、本のほうが好きかな」というものでした。
 映画も素晴らしいのですが、これは同感。
 あのエピソードは削ってほしくなかったな・・・という部分がけっこうあります(個人的には、最終巻最終章直前の校長室のシーンとか)。
 
 

〈それぞれの子どもに合ったシリーズ本の開拓を〉


  ハリー・ポッターの話をしたのは、みんなに同じものを読んでほしいからではありません。
 子どもの興味やタイミングに合わせて、シリーズもの(でなくても比較的長い物語)の開拓をお勧めしたいからです。
 
 前述したように、何冊も読む体験を積むには「内容自体の推進力」が必要で、「次はどうなるの?」とグイグイ引っぱられるのはやっぱり物語。それも同じ主人公が活躍する本が何冊もあれば子どもにとって大きな娯楽になり、親にとっては本選びの苦労が軽減されます
 好きな作家を見つける、というのもいいでしょう(多作な方がいいですね)。
 
 本好き大作戦(7)(8)で書いた本選びの話と少しかぶりますが、小学2~3年生になって読書習慣が身に付いてからも、それはそれで本選びに悩むことがあると思います。
 

〈アニメのノベライズや、大手出版社の児童文庫もお勧め〉


 我が家では「これ」というものが見つからない時、ふだん見ているアニメのノベライズを買ったり借りたりして読んでいました。
 馴染みのある絵がそのまま挿絵になっていますし、好きなキャラクターが登場すれば情景がすぐにイメージできて読みやすいようです。
 
 また、大手出版社が力を入れている児童文庫もおもしろい話ばかり。
 海外や古い年代の作品と違い、登場人物の名前や会話、日常風景の描写も「今の日本を生きる子ども達」の感性に即していて、「難しい小説を読んでいる」と感じないまま夢中になってしまいます。
 
 あとは、学年的にまだ習っていない漢字に読み仮名がふってあるかどうかも確認してあげてください。子どもにとっては大切なことなので・・・。
 
 親としては「せっかくだからもっと大人っぽい本を」と思うこともあるかもしれませんが、読書の筋力を鍛えている段階では、「苦もなく文章を読める」ことを優先したほうがいい時もあります。
 
つづきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?