(31)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~
お手紙、つづきです。
「家にある本で、デジタル漬けになる前に『読む』習慣を」
・・・というお話をしています。
低学年までは動画やゲームがなくても家で楽しく過ごせます。
「みんな見てる」「そういう時代」は少し横においといて・・・
読む楽しみとすんなり出会える時期を大切にしたいなと思います。
・お手紙(30)はこちらからどうぞ。
(30)5歳頃から〝積読本〟と暮らすことが「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
今日は
「本読む子のため、親として『しない』と決めたこと」
・・・というお話です。
さて、シオリさん。
このお手紙も、最後に近づいてきました。
これまで長々と、私が10年間で感じたことをお話してきました。
それはほとんどが、子どもが本好きになるために私がしたことや、
「したらいいと思うこと」の提案だったと思います。
私は、出版に携わった経験はありますが、今はただの本好き主婦です。
だからこれらの提案は「うちはこうでした、よかったら試してみてね」
というものにすぎません。
それでもこのなかで、私が真剣に、自分なりの確信を持って
「これはしない」と決めてきたことがあります。
それは、
「子どもを早い段階でデジタルの虜にしない」
・・・ことです。
本当は、子どもを本好きにするために、親として「自分も読書する姿を見せること」をお勧めしようと考えていました。
ーーが、それよりもっと大切なことに気づいたのです。
具体的には、次のことに気をつけて生活していました。
(1)早い段階でゲームの虜にしないこと
(2)早い段階で動画視聴を家庭の文化に取り入れないこと
(3)外出先で親のスマホを暇つぶしの道具として与えないこと
(4)親が子の前でスマホを使う時は、必要な「連絡」「調べもの」をする
と伝えること。娯楽に使う姿を子どもに見せないこと
――これを、リアルな子育てをしているパパ、ママに「ぜひしてみてください」と自信を持って伝えることはできませんし、しません。
なんの否定も、批判もするつもりはありません。
それぞれの子育てで、いいと思います。
ただただこれは、私が個人的に大切にしてきたことです。
なので「子どもを本好きにしたい」と願うシオリさんには、お伝えしたいのです。
私がこれをしたのは、デジタルが嫌いだからではありません。ただ、
「子どもがデジタルに触れるのは、本を好きになった後でいい」
・・・という、考えひとつです。
そして私は、あるひとつの自信がありました。
それは、素晴らしい育児をする自信ではありません。そんなものは一度も持ったことがありません。ただ、
「絶対に本はおもしろい、おもしろいんだ!」という自信
・・・です。
そして、子どもという発達途中の頭と体を抱える生命体はきっと
「先に動画やゲームより、先に読書を覚えたほうがうまくいくだろう」
という感覚。
――それだけでした。
だから私は、お話してきたように、まず長女が平仮名を覚え始めた5歳から一緒にたくさんの本を読み、彼女の「好きそうな本の傾向」を探りました。そうして、好きそうなジャンルの本を集めました。
もちろん家で読書だけしていられるわけもないので、子ども向けのテレビ番組やアニメ、映画はたくさん観ました。
「インターネットの動画とテレビ番組やアニメは、同じ映像作品じゃない? どこが違うの?」と人に聞かれることもありましたが、私はまったくの別物だと感じています。
インターネットの動画は、子どもに万能感を与えます。少なくとも私はそう感じました。勘のいい子ならすぐに仕組みを理解し、「あれもこれも!」と無限に広がる世界に入り込んでいこうとします。
そしてまた、子ども向け番組やアニメ、映画には「今日はこれで終わり」という、子どもにも理解できる区切りがあり、また子ども向けに作られたものである以上、一定の教育性やメッセージ性があります。
インターネットの動画にもよいものはありますが、子どもが操作を覚えればすぐに、親として「あまり見せたくないもの」にたどりついてしまう危険性があります。
そして子どもは、知ってしまえば欲しがるようになり、親が抑制すればそこにストレスが生まれてしまう・・・と考えていました。
幼児期に動画やゲームにハマることに関して、
「いまどき普通だし、おとなも楽しんでいるものを子どもに与えないなんて、可哀想じゃない?」という意見をテレビなどで目にしたこともあります(身近な人から言われたことはありません)。
――が、私は、子どもが可哀想と感じたことはありませんでした。
だって、知らないのですから・・・仮に知識として知っていたとしても、身近に感じていないので、子どもはなんとも思いません。
家には、選べるだけの映画やアニメ、自分の興味や年齢に合った本がたくさんあるので、それで十分。お気に入りのEテレ番組を毎日録画して、半日エンドレスでかけていることもありました(それがいいかどうかは別として)。
それでも騒いだら・・・それはデジタル娯楽に飢えているからではありません。子どもだからです。何をどうしたって、完璧な育児なんてないのですから・・・。
きょうだいの趣味が違ってモメることは日常茶飯事でしたが、音楽をかけたり、シールブックや工作や折り紙やブロックをさせたり、なんやかんやとやり過ごしているうちに、時間は過ぎていきます。
そして、毎日を過ごしていて感じたのは、
小学2年生くらいまでは、なんだかんだ言っても家庭の影響が大きい
・・・ということです。
家庭で、動画視聴やゲームを楽しむ習慣があまりないと、子どもは「別にそんなもの」と感じます。
外出先で、よその子が親のスマホを与えられて動画視聴している様子を見ても、自分の親がやっていなければ「自分も!」とは言いません(うちはそうでした)。
私がやれば、高い確率で「自分も!」となるのはわかっていたのでやりませんでした(基本的には)。
また、低学年の場合、放課後は公園遊びが中心だったり、児童会館などで過ごすにしても、そういう場ではゲームや動画視聴はほぼありませんから、積極的にデジタルに触れる機会はまだ少ないんですよね。
学校で1人1台パソコンを与えられても、あくまで学習のためという発想を家庭でも持っていれば、それで遊ぼうとは思いません。
だから一度、親として「ゲームや動画には早いうちに触れさせない」
と決めてしまえば、特に不便も感じず、比較的穏やかに(とはいきませんが)・・・少なくとも、デジタルの手を借りずに過ごすことができたんです。
だって、昔はみんなそうしていたんですから。
ーーでは、最初にお話した
(1)早い段階でゲームの虜にしないこと
(2)早い段階で動画視聴を家庭の文化に取り入れないこと
・・・の「早い段階」っていったいいつのことでしょうか?
個人的には、やっぱり「幼児期」だと考えています。
そして、少なくとも小学2~3年生くらいまでかな・・・と。
さらに、「子どもがデジタルに触れるのは、本を好きになった後でいい」という部分なのですが、これも
「いったい何を基準に、子どもが本好きになったとわかるの?」と思うかもしれませんね。
もちろんこれに、はっきりとした答えはありません。
それでも、我が家では子どもを観察した結果、次の様子で
「あぁ、本好きになったな・・・」と感じることができました。
それは、
(1)文章メインの本(児童書)を、年齢に応じて日常的に読むようになった。
(2)家にいて暇な時間、本を自分から手に取って読むようになった。
(3)(小学生なら)学校の図書室から、自分で本を選んで借りてくるようになった。
(4)「今どんな本読んでるの?」と聞くと、自分の言葉で伝えてくれる(親子で本を通したコミュニケーションができるようになった)。
(5)「こういう本を読んでみたい」「これを買ってほしい」
と本に関して自分からアピールをしてくるようになった。
(6)「本屋、図書館に行こう」と言うと喜ぶようになった。
・・・こうなってきた時、「もうしっかりと心の中に『読書の引き出し』ができた」「読書の筋肉がついた」と感じるようになったのです。
けれど、「どうせ将来的にデジタルを使いこなす人間になるんだから、幼児期からスマホやゲームに触れていたって同じだろう・・・」と言う人もいるかもしれませんよね。
その意見が正しいか、まちがっているか私にはわかりませんし、何かを返答する立場にもありません。
けれど私は、
10歳くらいまで本をたくさん読んだ子に、パソコンやスマホを与えたら、驚くようなスピードで使いこなしてしまう
・・・と思うんです。
子どもって本当に、奇跡のような柔軟性を持った生き物です。それまでにどんな土台を積み重ねてきたか・・・に、私は期待をします。
スマホやゲームは、子どもにとって魅力的なものですよね。
幼児期にそれを体験すると、もう夢中になってしまいます。
少しくらいならいいでしょうが、積み重なると、依存や中毒につながりそうです。早ければ早いほど、「やり過ぎはダメ」なんて理屈は通じませんよね・・・。
子どもにしたら、与えられて、大好きになってから、『時間を守って』と叱られるのは、辛いことではないでしょうか・・・?
――そんなわけで我が家では、
「子どもを早い段階でデジタルの虜にしない」
「子どもがデジタルに触れるのは、本を好きになった後でいい」
・・・という考えをベースに、「子どもと読書の関係」を築いてきました。
それもこれも、「子どもを賢い子にしたい!」と息巻いていたからでは、もちろんありません。
ただただ、「本は人類最高の娯楽のひとつ」という、私自身の本に対する信じる気持ちから取り組んできたものです。
自分にとって楽しいものを、子どもに伝えたい、基本はそれです。
それに、ゲームも動画も与えないわけではありません。
与える時期を2~3年後ろにずらしただけです。
ーー振り返れば、長女が5歳頃からの3年ほどは、もしかしたらデジタルに頼ったらもう少しラクだったのかもしれないと・・・思う場面はあったかもしれません。
けれど乗り越えてしまえばあっという間で、
子どもの人生全体で見れば、ほんのわずかな幼少期の日々。
子どもの長い人生を1日にたとえるなら、朝起きた時に「おはよう」と言って抱きしめるくらいの、ほんの一瞬の手間・・・だったのかもしれないと、今は思います。
なので私は、
「しない」ことを、して良かった
・・・と今思っているんです。
我が家の子どもは、本読む子になりました。
とはいえ、今時の子どもは
いくら本好きでも、本だけ読む人間にはなりません(なったらすごい)。
その点、スマホもパソコンもSNSもチャットGPTも使いこなすようになっていくでしょう。ただそのなかで、
「読書も楽しめる」人間になることが、スペシャル
・・・だと私は思います。
――ここまで、長い間読んでくださって、ありがとうございます。
シオリさん、次で最後です。
お手紙、続きます。
〈眠い目をこすりつつ読む7歳のあなたも本も生まれてよかった〉
・お手紙(1)はこちらからどうぞ。
(1)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
・お手紙(32)はこちらからどうぞ。
(32・終)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
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