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(16)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~

 
  お手紙、つづきです。 

「家にある本で、デジタル漬けになる前に『読む』習慣を」

                  ・・・というお話をしています。

  低学年までは動画やゲームがなくても十分楽しく過ごせます。
 「みんな見てる」「そういう時代」は少し横においといて・・・
 〝読む楽しみ〟にすんなり出会える時期を大切にしたいなと思います。
 
                
・お手紙(15)はこちらからどうぞ。
(15)5歳頃からの積読本が「本読む子」への最短ルートでした~10年前に出会ったママさんへ~|涼原永美 (note.com)
 
 
 今日は、

「二度と戻らない子ども時代に物語を『読む』ということ 

                           その4」

というお話です。
 
 
 さて、シオリさん。
 
 日々、目の前のことに追われていると忘れてしまいそうになりますが、

子ども時代って短いな

・・・と思うことはありませんか?

 
 第一子が生まれてから10年以上子育てに取り組んできて、気づいたらもう、長女は思春期の入り口になってしまいました。
 
 子どもが本当の意味で「子ども」でいられる期間って、物心つくのが5歳くらいだとしたら、15歳くらいまでのせいぜい10年間かな

 ・・・と思ったりもします。
 
 成人は18歳とはいえ、高校生にもなれば親が口出しできることは減りますし、見守るくらいしかできなくなることでしょう・・・寂しいですが。

 子どもの日常や、情緒を育てることに親がダイレクトに関われるのは・・・ たぶん10年。
 

 子どもの長い人生のうちで、たったの10年。

 
 おとなになってからの人生は割と長いものですが、
子ども時代は特別で、人生の土台をつくり、そして二度と戻りません。
 

 ――二度と戻らない子ども時代に、どんな日常をおくるか。
 それはどんな「人生の土台」をつくるかという意味と同じではないでしょうか・・・。

 それで、考えます。

 
 おとなになってからの人生は長いーーのと同じニュアンスとして、私は、

スマホを持ってからの人生は長いんだから、そんなに急がなくても

 ・・・と感じることがあるんです。

 
 子どもが1人1台端末を持つようになって、良くも悪くも自分の判断で世界とつながって行動するようになったらそれはもう、親の手から段階的に離れていくことを意味します(というか、あっという間でしょう)。

 現代の子ども時代って、「スマホ以前」か、「スマホ以後」にわかれるのではないでしょうか。
 
 ――だから私は、「スマホ以前の子ども時代」に、たくさん本を読んで過ごしてほしいなぁ・・・と思うのです。

 ーー飛躍して聞こえるでしょうか?
 私のなかではつながっているんです・・・。

 
 とくに、子ども時代にたくさん読んでほしいのは物語・小説です。
 

 私は
 

物語をたくさん読む子は絶望しづらいのではないか

・・・と思っています。

 実際に私のように、本に助けられて生きてこられた人間がここにいるから、そう思うのです。

 
 ーー伝えたいです。
 
 少なくとも、時に死にたくなるような無責任な情報がのっていることもあるインターネットを、人格形成の段階でしょっちゅうのぞき込むよりは、希望に溢れているよ! と伝えたいです。

 物語・小説は、たとえ想像の産物ーーフィクションーーであっても、
生きている人間が書いたものである以上、リアルな感情、リアルな癒し、リアルな回復のパターンが・・・そこにあるんですよね。
 

 
 物語をたくさん「読む」子は心が強くなる・・・
 あくまで私の実感ではありますが、この理由はもう、いくつもあります。
 
 
 1つ目は、

困難を乗り越えるヒントや、考え方のバリエーション

がそこにあることです。

 言葉で書かれている、それを「読む」ことで特に染み込んでいく・・・
のではないでしょうか。
 
 物語には、いろんな困難や問題を抱えた人が登場します。
 これは当然で、課題がなければ物語は生まれませんよね。
 
 そして例えば主人公は、さまざまな考え方や具体的な行動でそれを乗り越えていきます。
 

 また、物語には欠点や弱点を抱えた人が多く登場するもの。
 完璧な人が完璧な生活をする物語なんて読みたいと思いませんもんね。
  

 ――人間は完璧じゃないのが当たり前。
 ――生きていれば困難があるのが当たり前。


  突き詰めれば世界に数え切れないほどある物語って、そのことを繰り返し伝えているようなものかなと思います。

  とにかく頑張れ! ・・・ではないんですよね。
 
 それでも報われない人もいれば、ネガティブな人も、児童書であってもそれは登場しますし、それを否定するんじゃなくて、悩みながらも「それでも生きる」ヒントを与えてくれるのも物語の素晴らしさ。


 絶対に折れない、絶対に負けない ・・・だけじゃなく、 

心の強さって、考え方のパターンを持っていること

だとも思うんです。

 
 私は、物語や小説を書く方は、大半はそのことを必死に伝えようとしてくれているのだと感じます。
 
 特に児童書は、子どもの感性に届くように書いてあるものばかり。
 
 考えてみれば児童書って、ターゲットとしては6歳から15歳くらいの、一般書に比べればごくせまい年齢層に向けて書いているものですから、書き手の強いモチベーションあってのジャンルですよね・・・。
 
 本当に、素晴らしいと思います。
 いつもお世話になり、ありがとうございます!
 
  
 

物語をたくさん「読む」子は心が強くなる・・・

2つ目は、視野・視界の広がり

 です。

 見えなかったものが、見えるようになります。
 
 本にはあらゆる世界、生きる場所考え方、悩みや困難、あらゆる過去、想像しうる限りの未来・・・に溢れています。
 
 ありきたりではありますが、悩みを抱える子どもにとっては
「1人じゃない」「別の角度から考えたらどうだろう」
など考え方のきっかけをいろんな方向から与えてくれます。
 

 どうしようもなくなると人は極端な思考に陥りがちで、
「こうなったら死ぬしかない」とか、
「すべて自分のせいだ」と考えるようになったら危険です。
 
 フィクション、ノンフィクション含めて読んでいて常々思うのですが、「ほんとに心底、自分の体験なんてまだまだだな」
 
・・・と思えるようなすごい人や経験が数え切れないくらい世の中には溢れています。
 
 今自分が見ている光景がすべてではないと、知ってほしいのです。 
 
 


   物語をたくさん読む子は絶望しづらい・・・

3つ目は、退屈しないということ

です。
 
 なんだそんなこと! という感じがしますね。
 
 世の中には途方もない数の本があって、

本好きな人なら大抵は、「死ぬまでに読み切れない・・・」と感じています。

 だから、時間さえあればおもしろそうな本を探します。
 

 人間ヒマだとよくないことを考えますが、
 本は私達にヒマを与えてくれません。

 
   
 ゲームや動画視聴なら何時間でも没頭できる!・・・という人もいると思いますが、子どもが1日中ゲームやネットに触れていれば親は叱りますし、体力的にも長時間やれば負担がかかります
 子どもの脳に与える影響も指摘されていますよね。

 いっぽうで、 

本――特に紙の本――は素晴らしい

と思うのです。
 
 カバンに1冊しのばせておけば、いつでもどこでも読めます。

  はい、確かに電子書籍ならスマホだけで何冊も読めますが、(ふだん忘れがちですが)電力がいりますよね(目も肩も疲れます・・・)。 
  

 読書は最強の趣味です。自分と本だけあればいい。

 子ども時代に、ぜひこのことを覚えてほしい・・・。
 そのあとでスマホを持っても、遅くはありません。

  
 特別な予定もなく、時間を持て余す日は陽気な本でも読んでみたらいいよーーと伝えたい。
 
 もしかしたら、ワクワク、ドキドキしながら過ごせるかもしれません。


 そして

4つ目は、想像力が磨かれること

です。

 ーー読書で得られる力としては、普通・・・と思うかもしれませんね。
 
 けれど、「想像力」というとファンタジー的な、現実にはない世界や出来事を想像する力のように思いませんか?
 
 もちろんそれも素晴らしい想像力なのですが、
 人間関係に必要な

「相手の心について考える」想像力

・・・も、子どもに育んでほしい大切な力ですし、また物語を通して、あなたは生きるに値する人間――と繰り返し語りかけてくれる本はたくさんあります。
 
 そして

「そうなんだ。私は大切なんだ」と感じられること自体、素晴らしい想像力

・・・だと思うんです。
 
  人は一人ひとりまったく違う人間で、生き方を決めるのは自分自身で、声をあげる権利が自分にはあり、相手もまた、同じようにものを考えている一人の人間であること・・・。
 
 そういうことを「感じる」のも、想像力だと私は思います。
 

 
 

5つ目は、「すぐに結論を出さない」ことを学べる

ことです。

 今の世の中すぐに「結論を出す人」が多いかな・・・と思ったりします。
 
 もちろん、人生のあらゆる場面で早く結論を出すのが必要なこともありますが、もう少し長い目で物事を考えてみたり、調整したり、挑戦してみてほしいな・・・と感じることがあるのです。
 
 子ども時代はそういう思考を学ぶ土台の時期ではないでしょうか。

 
 物語・小説にはそういう・・・「長い目で見る人」がたくさん出てきますし、長い物語を読むことは長い目で物事をとらえることにも、つながると思います。


(余談ですが、即断即決する格好いいビジネスマンのようなおとなは、長く考えること、情報を分析して検討することを人生で繰り返してきた土台があるから、それができるのでしょう。子どもが「即断」するのとはワケが違いますね)



 
 ーーまじめな話、私は子ども達に

死なないでほしい

と思っています。
 
 読書がすべてを解決してくれるとは思いません。
 けれど、時に本当に心を救ってくれることがあります。
 
 文章を読める人間は強いです。
 時間がある子ども時代に、本に没入してみてほしいです。
 
 
 デメリットはありません。
 
 ーーお手紙、つづきます。 
 
 
〈文字で得るしみじみとしたかんどうが明日も残ってわたしをつくる〉


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