【映画】『恋人たちの予感』は教えてくれた…「I love you」は大事なんかじゃない、急務なんだってこと
長年の友だからこその最高の告白!
【恋人たちの予感】(1989年/アメリカ/監督ロブ・ライナー)
■ジャンル/恋愛、コメディ
■誰でも楽しめる度/★★★★☆(18歳以上がいいかな・・・)
■後味の良さ/★★★★★(最高!)
(個人の感想です)
※以下、映画の内容にふれます
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ラブコメ、というジャンルの映画は数え切れないくらいあるけれど、私がいちばんと言っていいくらい好きなのは、この『恋人たちの予感』。
原題は『When Harry Met Sally…』で、こちらのほうがしっくりくる気もするけれど、まぁいいか(直訳がすべてではないし)。
(1)ざっくりあらすじ・・・〝男女間に友情は成立するか〟がテーマ、でもあまり深く考えずに観て大丈夫
この映画が大好きな理由はいろいろある。
まず、主人公サリーを演じるメグ・ライアンがものすごくチャーミングで、ずっと観ていられる。いやいやそんなことかい! と思われるかもしれないが、ラブストーリーは基本的に1組の男女が出ずっぱりなので、役者が魅力的じゃないと気持ちが入らないのだ。
これを機にブレイクして「ラブコメの女王」とも呼ばれるようになったメグ・ライアンだけど、この作品がやっぱり超絶カワイイ。
もうひとりの主人公ハリーを演じるビリー・クリスタルもいい。決してイケメンではないけれど、いやむしろそこが良く、どんな「バカ男」発言をしても憎めない。それでいて繊細なのも魅力的で、画面に登場すると明るい気持ちになる。こういう存在感は重要だ。
さて、この映画は公開時「男女間に友情は成立するか」がテーマということで話題になったのだけど、話の軸はもうひとつ、「出会いから10年以上かかって結ばれる男女の物語」・・・で、ハリーとサリーがどんなエピソードを積み重ねていくのかが見どころ。
「男女間に友情は・・・」というテーマも、現代においては古いと思う人もいるかもしれないけど、私はいつも、お互いを思いやる人間同士の話として観ている。
さて、映画は20代前半の彼らがシカゴの大学を卒業してニューヨークへ向かうシーンからスタート。
行き先が同じだったハリーとサリーは、友人の紹介で1台の車を交替で運転しながら18数時間のドライブをすることに。縁と言えば縁だけど、この時点ではお互いに運命の出会いとはまったく思っていない。
長旅なので仕方なくおしゃべりするが、内心でサリーを可愛いと思っている下心満々のハリーとは対照的に、サリーはハリーのガサツさが気に入らない。恋愛観もまったく合わず、会話も弾まず、ニューヨークに到着して笑顔で別れるものの、(特にサリーは)「もう会うこともないだろう」と思っている。
(2)みどころ・・・本音の連続、根暗男ハリーの発言の数々に笑う
ところが5年後、2人は空港でばったり再会。飛行機の中で(サリーはイヤイヤ)会話をすることに。
意外にも「結婚することになった」と語るハリーに、サリーは「あなたが? 意外ね」と返すが(半分バカにして笑っているところが面白い)、ここでも彼女は「もう会わないだろう」と思って、つれなく別れる。ハリーは食事をしたがったのに・・・(笑)。
この時点ではお互いにパートナーがいて、まぁハリーのほうも特別な感情は抱いてないのだけど、さらに6年後、今度は本屋で再会。ここからが友情の始まで、物語はどんどん展開していく。
興味深いなと思うのは、社会に出て10年くらい経った時、お互い大人になり、そりが合わない相手にも人間的な魅力があることを感じ、友人として歩み寄ることができるようになっているところだ。年代によって、「あ~わかるわかる」と共感できる人もいるだろう。
じつはハリーは離婚を経験(あの飛行機で話した相手と別れてしまった)、サリーも恋人と別れて傷ついている時だった。2人はたびたび会い、友人としてお互いに恋愛相談をするようになる。
なんといっても、2人の会話がハイテンポで面白い。
お互いを恋愛対象として見ていない分、本音がポンポン飛び出す(特にハリーから)。例えば結婚を決めた理由を「独り暮らしにうんざりしたから」と話すハリー。
なんというか、ミモフタもない(笑)。そんなハリーを、思いっきり眉間にシワを寄せて見つめるサリー。・・・とこんな感じで、2人の会話が始まると笑いながら画面に釘付けになってしまう。
とはいえ、サリーも完璧な女性ではない。
美人で頭も良いけれど、今風に言うとかなり「クセが強い」のだ。
特に飲食店でのオーダーの仕方が独特で、たとえばこんなふう。
・・・と毎回こんな感じで、周囲はあっけにとられるが、本人はまったくおかしいと思っていない(ハリーは次第に慣れていく)。
ハリーはハリーで、離婚の痛手から立ち直れずに情緒不安定。幸せそうな友人夫婦に「君らは今にこの皿を奪い合うようになる」(つまりいずれ離婚する)と、ひどい言葉を投げつけてしまったりもする。
ひとりだったら修復不可能だろうけど、そこでサリーがフォロー。このシーンもすごく好き。
「言っとくけど、その時々の感情をその場で口にすることはないのよ」とたしなめるサリーに、ハリーは「君がエチケットの大家とは知らなかった」と言い返し、お互いの恋愛の傷を深掘りして大ゲンカになるのだけど、最後はハリーが「ごめんよ」と素直に謝る。
じつはこの頃からもう、かけがえのない存在になっているのだけど、友人関係が長すぎて気付かない2人(気づいても、いやそんなはずはない・・・という顔をお互いにしているのがまたイイ)。
(3)後半の急展開・・・起こるべくして起こったアクシデントで、2人はどうなる?
相手の黒歴史も、クセの強さも知っている。それでもなお、いやそれを含めて、「その人」と認め合える。――結局、理想の人がこの世にいるわけじゃなくて、理想の関係を築ける相手がベストなんだろうなと、この映画を観ていると思えてくるのだ。
さて後半、2人にあるアクシデントが起こる。いやある意味で「起こるべくして」起こるのだけど、そのせいで気まずくなってしまう2人。
このアクシデントをどう捉えるかが、男女の違いをよく表現しているのだけど、はっきりしてほしいサリーに対して、煮え切らない態度のハリー。ついには大ゲンカになって、友情はおしまいか・・・と思うところで、一気にクライマックスへ。
2人の関係にどう決着をつけるのか、カギを握るのはハリーだということに、間違いはない。
思えば出会ってからの年月、より大きく成長したのはハリーの方で、サリーに比べてハリーはもともと子どもっぽかった。
でも、離婚で傷ついたり、ひとりの女性(サリー)と友人関係を築くなかで、本当に大切なものに気付いていく。ある意味でこれは、ハリーの成長物語なのかもしれない。
終始テンポ良く進む映画だけど、ハリーが決断するまでの心の動きが、甘いバラードとともにしっとりと描かれているところにメリハリが効いていて、やっぱりこれはラブ・ストーリーなんだなぁと、甘い気持ちにさせてくれる。
ーーさて、ハリーはどんな告白をするのだろう。
(4)胸いっぱいのラスト・・・長年の友だから言える最高の『I love you』はどんなもの
映画のクライマックスは、あくる年の大晦日。
自分の気持ちに気付いてサリーに会いに行くハリーが、果たしてどんな告白をするか、詳細について・・・はここで多くを語らないでおこうと思う。
でも、個人的には恋愛映画史上ナンバー1の告白シーンだ。
シーンというか、告白の言葉がいい。
なんとも素敵で、かつ長年の友情がこもっている。
ただ「愛してる」では足りないとき、こんな風に言われて嬉しくない女がいるのかな・・・(いや性別は関係ないよね)。
ーーひとつだけネタバレすると、サリーが
「大晦日で寂しいってことは分かるわ でも突然現れて愛してると言っても それで解決にはならないわ」
と、戸惑いながら怒ると、ハリーはここで一世一代の告白をして、最後にこう付け加える。
「寂しいとか大晦日は関係ない 残る一生を誰かと過ごしたいと思ったら 早く始めるほうがいいだろ?」
――私はこのセリフが大好きだ。
じつは自分の人生の折々で、大切な人に大切なことを伝える時、この言葉に後押ししてもらった。本当に、その通りだと思ったからだ。
クリスマスだとか、誕生日だとか、寂しいとかは関係ない(関係あるときもあるけど)。
人生いつまで続くかわからないんだから、大切な人には大切だと伝えたほうがいい。この先一緒に過ごせる可能性があるなら、1日でも1時間でも早いほうがいいじゃないか。ダメ元でも。
この映画のハリーだって、たとえこの時フラれたとしても、あんな告白ができたら、悔いはなかったろうと思う。
――あれ?
そういえば「男女間に友情は成立するか」の答えはどうなったのだろう。
まぁ、結論から言うとハリーとサリーは結ばれるので、「答えはノー」となってしまうのだけど、それまでの過程を考えると「イエス」でもある。
結局、答えはどちらでもいいのかもしれない。答えを見つける映画ではないから。
それに、恋愛に限らず、ずっと自分を見守ってくれていた人が一番大切な人だと気づくことって、現実でもあると思う。あえて答えをだすなら、最後は「人と人」かな。
ーー余談だけど、映画好きにはとても有名な「サリーがあの演技をする、デリカテッセンのシーン」で、最後にウイットに富んだセリフを言う老婦人は、監督ロブ・ライナーのお母さんなのだそう。
「うちの息子はなんちゅう映画を撮ってるんだい」と思っただろうな・・・(笑)。
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