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【読書感想文】エーリッヒ・フロム『自由からの逃走』日高六郎訳

言わずと知れた社会心理学者の古典的名著である。私がまず気づいたのは、基本となる論理のラインがマックス・ウェーバーの「プロ倫」と重なることだった。中世期の身分制が解体し、孤独な個人となった近代人が自由の重みに耐えかねて、ナチズムなどに主体性を譲り渡してしまうという論理。もちろん、プロ倫では、それが資本主義の資本の蓄積に走る原動力となるというようにポジティブに捉えられてはいるが、どこか似ていると思った。また、もう一つ強く印象付けられたのは、時代の制約があって、ナチズムとの対決姿勢が鮮明だということだった。ナチズムもだいぶ遠くなった今の時代にあっては、フロムは何というだろうか。興味深い。最後に、もう一点気になったのが、フロイトとの関係。師弟関係にあったようで、それなりに評価しているが、汎性主義のフロイトに対し、社会的性格という概念を重視している社会心理学者としての側面が顕著だし、秀逸であると思った。何分、重厚で、私の手に余る読書ではあったが、幾分私なりの理解もできたのではないかと思い、読んでよかったと思った。

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