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お盆の夜に「生きる」と向き合う絵本を

死んでしまったおばあちゃんのことを、
どんなふうに子どもに話したらいいのか、
よくわからないときがありました。

「どうして寝ているの?」
「もうおしゃべりできないの?」
「どうしてみんな泣いてるの?」

子どもに「死」を教えることは難しいことで
「そういうものなんだ」と言われても、ピンとこないかもしれません。
人はいつかは死を迎えるものですが
悲しいけれど、それは必ずしも不幸なことじゃなくて
故人の残してくれたものに感謝するきっかけでもあって
自分の人生を大切にするための経験でもあるように思います。

死を教えたいのではなくて
日常にある死というものを感じて、前を向くことを知ってほしい。
そういうふうに死を扱った絵本がいくつかあります。

『わすれられないおくりもの』(スーザン・バーレイ作)という絵本は
子どもより大人のほうが、心に沁みる作品かもしれません。
人生経験豊富なアナグマが死んでしまうのですが
生きていた頃に彼が教えてくれた
友人の素晴らしさ、生きるための技や知恵、そして思いやりについて
残された動物たちの心にずっと生き続けていることを描いています。
絵本としては少し長いですが、心がぽっと温かくなるお話です。

また『おじいちゃんがおばけになったわけ』(キム・フォップス・オーカソン作)も名作です。
こちらは子どもが主人公で、
おじいちゃんが亡くなったと言われてもピンときていないところに、
おじいちゃんがおばけ(幽霊)として現れるお話です。
ところどころにユーモアがきいていて
子どもが「壁を通り抜けてみてよ!」とか「あのときは楽しかったよね」と
おばけのじいじと夜を楽しんでいます。
でも、おじいちゃんがおばけになってしまった本当の理由は…。
ちゃんと「ありがとう、さようなら」という儀式を通して、
身近な人の死を乗り越えていく子どもの姿が描かれています。

人の命がなくなることは、とてもデリケートなことでもあるのですが
わたしたちは「死」ということを、
悲しくて嫌なものと捉えることが多いです。
でも「死」は「生」を考えるということでもあるんですよね。

最近、『宇宙兄弟』という漫画も読んでいます。
その中に、生死ととなり合わせに生きている宇宙飛行士として
ベテラン飛行士が「死ぬ覚悟はあるか」と問う場面があります。

宇宙飛行士を目指してはいても、死ぬ覚悟はできていないと言う主人公。
替わりに、ギリギリまで生きたいと思う、と答えます。
自分に不幸が訪れたとき、「死」が残るか、「生」が残るかで
その人にとっての人生の価値が問われるのかもしれません。

ときどき切なくなるけれど
亡くなってしまったあの人がいてくれたおかげで、
人生は豊かなものになっているんじゃないでしょうか。
無理して前をむく、ということが大事なわけじゃなくて
ちゃんと悲しんで、少し思い出して、
これからも心の中でことあるごとに支えてくれる
そういうあの人に、感謝する行事が「お盆」なのかもしれません。

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