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桂離宮 《1》

時間を遡る。
去年(2022年)の10月初旬、京都に旅行した。
コロナ禍がだいぶ収まって、政府・自治体の旅行支援もいよいよ再開か、と騒がれていた時期だ。
結局、旅行支援はスケジュールの関係で対象外となり、そのうえ、国鉄時代から連綿と販売され続けたJRフルムーン夫婦グリーンパスも突如廃止されて、予算面の目算が狂ってしまった。
それでも、早割の切符やら宿やらをネットで探し回って、まあまあ悪くない数字に収めることができた。

何よりありがたかったのは、人出が本当に少なかったこと。
桂離宮、東寺、東福寺、伏見稲荷大社、建仁寺等々を巡ったが、あちこち立ち止まってカメラを構えても、誰からも文句一つ言われなければ舌打ちもされない、信じられない空き具合だった。
たぶん、二度と経験できない、ピンポイントなタイミングでの京散歩だったのだろう。

というわけで、noteでは珍しくも何ともない、京都旅行記です。
桂離宮(かつらりきゅう)を数回に分けてご紹介したいと思います。

江戸時代の初め、とある皇族の別荘として造られた桂離宮。
「日本美の極致」と評されることもある。
だが、いくら評判を聞いても、文章や写真で確かめてみても、実際にその場に足を運び、その場の空気を吸ってみないことには、決して伝わりきらないものがある。
そこにこそ、旅の存在価値は、ある。

阪急京都線の桂駅を降りて、しばらく歩いた。
公式には徒歩20分。疲労困憊する距離ではないが、途中、経路が斜めになっていて方向感覚を保ちづらいこと、車通りの割に歩道の狭い箇所があること、入場時刻の指定があるため気持ちが焦りがちなことなど、タクシーに頼る方がストレスが少なくてよいかもしれない、と思った。
景色はごくごく普通の、現代日本の郊外の町並みだし。
あるいは、帰り道だけ、のんびり歩くとかね。

桂離宮は、皇室用財産(国有財産)として、宮内庁が管理している。

参観希望者は事前にWebサイト等で予約する必要がある。
試しに覗いたら、今日(2023年4月13日)時点の予約状況は、6月一杯までほぼすべての枠が埋まっていた。
おそらくこれが通常運行なのだ。
僕が訪れたときは、入り口の脇に机を出して当日券を販売していたけれど、今は果たしてどうなのか(参観要領を読む限り、当日券枠は一定数、確保している?)。
ネットがなかった時代は、往復ハガキを送るか窓口で直接申し込むかしかなかったので、面倒だったろうな。
「往復ハガキの行った来たでOKが出たらようやく観ることのできる桂離宮」を知っているせいか、桂離宮の存在が、自分の中で一段と神秘化されている……気がしないでもない。
なお、参観料の支払いは、現金のほか、クレジットカードや主だった交通系電子マネーが使用可能。

桂離宮の観覧は約一時間コースで、宮内庁職員の方がグループごとに丁寧に案内してくださる。
逆に言うと、コースを外れて好き勝手な場所に立ち入ったり、順路を逆行したり、いつまでもその場にたたずんで建物や庭園に見惚れるといった贅沢は許されない。
説明の係の方とは別に、不届き者を見張る役目の方がグループの最後尾をつかず離れず歩く。

宝石のように大切に扱われている場所、それが桂離宮なのである。

(訪問日:2022年10月2日)


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