横山青路

三十五歳、三児の父。俳句を交えたエッセイを書いています。応援頂くと、息子にポケモンのお…

横山青路

三十五歳、三児の父。俳句を交えたエッセイを書いています。応援頂くと、息子にポケモンのおもちゃを買ってやれます。どうぞよろしくお願い致します。 #俳句 #エッセイ #文章 #育児 #アウトドア #キャンプ #バードウォッチング ※アイコンは水元さきのさんのフリー素材から

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  • あおいみち・two

    横山青路が書いたこと。いずれも原稿用紙一枚(4枚のエッセイが1品)。記事数10。育児、日常、時事、商品、文学など。

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    横山青路が書いたこと。いずれも原稿用紙一枚。記事数13。育児、日常、時事、商品、文学など。

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句を詠む人

先日、妻と食後のお茶を飲みつつ、手元の辞書を開いた。「胚胎」の項などを面白く読んでいると、ふと「俳人」の語が目に入る。それには、「俳句を詠むことをライフワークと…

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句を詠む人

句を詠む人

先日、妻と食後のお茶を飲みつつ、手元の辞書を開いた。「胚胎」の項などを面白く読んでいると、ふと「俳人」の語が目に入る。それには、「俳句を詠むことをライフワークとする人」とあった。

さすがは、独特の解釈で定評のある新明解さんだ。「なりわい」や「職業」でないところが良い。現代では俳句だけで喰っている人はいない、とも取れるが、素直に、俳句を楽しんでいる人が俳人なのだ、と受け取った。

何かに親しむとき

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束の間の晴れ間嬉しき二月かな

春泥や波紋絶えざる潦

無数のシャッターを切る代わりに

無数のシャッターを切る代わりに

 インターネットで鳥の写真を見た。カヤクグリという名の小さな鳥。一見スズメに似ているがもっと地味で、かわいらしい顔をしている。

 こんな写真を撮れるなんて羨ましいな、と一瞬思うが、すぐさま自分にはその気がないと知る。写真とは、結局は誰かに見せるためのものだ。それがたとえ未来の自分一人だけだったとしても。私は誰かに、良い瞬間を見せたいとは思っていない。

 よく晴れた早春の午前、私は双眼鏡を手に外

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過ぐ人の煩わしさよ春隣

摘むれば冷たき熱の木の芽かな

力無く東京に戻る二月かな

掌に燗の熱さや父偲ぶ

砂時計

砂時計

砂時計の良くもあり悪いところは、途中でそれを止めることができないところだ。陸上の人たちが使うストップ・ウォッチであれば、カチッと指で押して中断することができる。が、砂を止める術はない。

この銀色の砂時計――砂の色は青――を手元に置いているのは読書のためだ。ある本に、最低でも十五分は集中して一冊を読め、とあった。だから妻に頼んで、十五分を計れるものを買ってもらったのだ。

ある晴れた休日の午後。早

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篠鳴きや吾つひに友を得られず

ケヤキ

ケヤキ

病院へ行った。娘の薬をもらいに行くためで、昨今の事情もあって診察はすぐに済んだ。ちらつく雪。敷地には大小さまざまな樹木が点々と植えてあって、名前を説明する小さな看板が各々に付いている。

何気なく見ていると、「ケヤキ」に目が留まった。ホウキをさかさまにしたような形の枝に……と始まって、「今では山に大きな木も少なくなりました」と結んである。他の木にはそうした情感のこもった一文はない。

これを作った

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寒椿葉陰に海の小径かな

寒椿靴見つめ合ふ二人かな

此の世から彼の世へと消ゆ名残雪

湯漬け食ふて五分ばかりは温かし

湯漬け食ふて吐息つくまで温かし

勤め人なれば二日を元日とす

二年目も撫牛マスク付けてをり

正月に顔見せぬ甥の悩みかな

雲早く飛び遊ぶけふ大晦日