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束の間の晴れ間嬉しき二月かな
春泥や波紋絶えざる潦
無数のシャッターを切る代わりに
インターネットで鳥の写真を見た。カヤクグリという名の小さな鳥。一見スズメに似ているがもっと地味で、かわいらしい顔をしている。
こんな写真を撮れるなんて羨ましいな、と一瞬思うが、すぐさま自分にはその気がないと知る。写真とは、結局は誰かに見せるためのものだ。それがたとえ未来の自分一人だけだったとしても。私は誰かに、良い瞬間を見せたいとは思っていない。
よく晴れた早春の午前、私は双眼鏡を手に外
過ぐ人の煩わしさよ春隣
篠鳴きや吾つひに友を得られず
寒椿葉陰に海の小径かな
寒椿靴見つめ合ふ二人かな
此の世から彼の世へと消ゆ名残雪
湯漬け食ふて五分ばかりは温かし
湯漬け食ふて吐息つくまで温かし
勤め人なれば二日を元日とす
二年目も撫牛マスク付けてをり
正月に顔見せぬ甥の悩みかな
雲早く飛び遊ぶけふ大晦日
屋根を打つ霰みぞれに変わりけり
幸いに屋根と壁ある吹雪かな