見出し画像

ケヤキ

病院へ行った。娘の薬をもらいに行くためで、昨今の事情もあって診察はすぐに済んだ。ちらつく雪。敷地には大小さまざまな樹木が点々と植えてあって、名前を説明する小さな看板が各々に付いている。

何気なく見ていると、「ケヤキ」に目が留まった。ホウキをさかさまにしたような形の枝に……と始まって、「今では山に大きな木も少なくなりました」と結んである。他の木にはそうした情感のこもった一文はない。

これを作った人は、ケヤキを好きだったのだろうか。単に、ありふれた木だから書くことがなかったのではあるまい。説明文に主観は不要だ、と批判することもできるが、冬の日に病院の用事を終えた後で、私はむしろその批判をこそ批判したいと思った。

 欅 に も 雪 降 り 積 も る 降 り つ も る

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?