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リーダーシップ:6つのスタイルとその効果的な使い分け

こんにちは、広瀬です。前回は「部下のやる気を削ぐリーダーの5つの行動」というタイトルで、リーダーが避けるべき行動を5つ取り上げました。あなたも、リーダーとして、または部下として、そのような行動に遭遇したことはありませんでしたか?

今回の内容も前回同様、リーダーシップに関するものです。リーダーシップについての知識は、仕事を効果的に進める上で非常に役立ちます。リーダーシップの原則やスタイルを理解することで、次のような多くのメリットを享受できます。

まず、チームやプロジェクトを成功に導くための戦略を立てやすくなります。リーダーシップの知識を持つことで、メンバーの強みを引き出し、適切な役割分担やタスクの割り当てを行うことができます。これにより、チーム全体のパフォーマンスが向上し、目標達成がスムーズになります。

さらに、リーダーシップスキルは、効果的なコミュニケーションを促進します。リーダーシップを理解していると、他者の感情や意見を尊重しながら、自分の考えを明確に伝えることができるようになります。このようなコミュニケーション能力は、誤解や対立を避け、チームの協力関係を強化するのに役立ちます。

また、問題解決や意思決定の際にもリーダーシップの知識は不可欠です。リーダーシップ理論を学ぶことで、複雑な状況や予期せぬ問題に対処するための柔軟な思考と戦略的な視点を養うことができます。これにより、困難な状況でも冷静に対応し、最善の解決策を見つけることができます。

最後に、リーダーシップの知識は、自己成長とキャリアアップにも貢献します。リーダーシップを学ぶことで、自分自身の強みと弱みを理解し、自己改善のための具体的な行動を取ることができるようになります。これにより、リーダーシップのポジションに昇進する機会が増え、キャリアの発展につながります。

以上のように、リーダーシップについて知っていることは、仕事を効果的に進めるための重要な要素であり、個人と組織の両方にとって大きなメリットをもたらします。

今回は、リーダーシップ研究の世界的権威であるダニエル・ゴールマンが提唱するリーダーシップ論に焦点を当て、その中でも特に6つのリーダーシップタイプについて詳しく考察します。これらのタイプがそれぞれどのような特徴を持ち、どのような状況で最も効果的に活用できるのか、また、これらのスタイルをどのように使い分けるべきかについて探っていきます。そして、リーダーシップスタイルの選択と適用がどのようにチームや組織に影響を与えるのかを明らかにしていきます。でも、ひょっとするとあなたは無意識のうちに、これら6つのリーダーシップのタイプを使い分けているかもしれません。


リーダシップに対する疑問

あなたはリーダーシップについて考えたことはありますか?
あなたはリーダーでしょうか?
もしリーダーだとしたら、どのような役割を果たすべきだと思いますか?

いきなり3つ質問をしましたが、即答できましたか? これらの問いに答えるために、リーダーシップに関する以下の疑問点について考えてみましょう。

  1. リーダーシップとは何か?

  2. リーダーとは誰のことか?

  3. なぜリーダーシップが必要なのか?

  4. リーダーじゃない人もリーダーシップを知る必要があるのか?

  5. なぜ経営の世界でリーダーシップが研究されているのか?

これらの疑問点を通じて、リーダーシップの本質と重要性を理解するための手がかりを提供したいと思います。それでは、各項目について詳しく見ていきましょう。

1.リーダーシップとは何か?

リーダーシップとは、他者に影響を与え、動機づけ、指導する能力です。これは、個人やグループが特定の目標を達成するために重要な役割を果たし、協力とコミュニケーションを促進します。リーダーシップは、単なる指示や管理を超えて、ビジョンの共有、チームの団結、そして個々の成長を促進する包括的な振る舞いです。

2.リーダーとは誰のことか?

リーダーとは、組織やグループの目標達成に向けて他者を導く人を指します。リーダーシップは、役職や肩書きに限定されず、どのような立場にあっても発揮されるべきものです。リーダーは影響力を持ち、他者に対して前向きな変化を促し、方向性を示すことで、共通の目標に向かって進むための道筋を提供します。

3.なぜリーダーシップが必要なのか?

リーダーシップは、組織やチームが成功するために必要不可欠です。リーダーは以下のような役割を果たします。

  • ビジョンの提示
    リーダーは明確な目標や方向性を示し、メンバーが共通のビジョンに向かって努力するように導きます。

  • モチベーションの向上
    リーダーはメンバーのやる気を引き出し、彼らが最大限のパフォーマンスを発揮できるように支援します。

  • チームワークの促進
    リーダーはメンバー間の協力を促し、効果的なコミュニケーションと調整を行います。

  • 問題解決
    リーダーは課題や問題を迅速に特定し、解決するための戦略を立て、実行します。

4.リーダーじゃない人もリーダーシップを知る必要があるのか?

リーダーシップスキルは、正式なリーダーの役割を持たない人々にとっても重要です。以下の理由から、すべての人がリーダーシップを理解し、実践することが求められます。

  • 個人の成長
    リーダーシップスキルは、自己管理能力やコミュニケーション能力を向上させ、個人の成長を促進します。

  • チームの成功
    リーダーシップを理解することで、チームの一員として効果的に貢献し、チームの成功を支援することができます。

  • キャリアの発展
    リーダーシップスキルは、キャリアの発展において重要な要素であり、将来のリーダーシップポジションへの準備にも役立ちます。

5.なぜ経営の世界でリーダーシップが研究されているのか?

経営の世界でリーダーシップが研究される理由は多岐にわたります。

  • 組織のパフォーマンス向上
    リーダーシップは、組織の効率性と生産性を高める重要な要因です。優れたリーダーは、組織の目標達成に向けた戦略を立案し、実行する能力を持っています。

  • 変革の管理
    経営環境は常に変化しており、リーダーはこの変化に適応し、組織を効果的に導く能力が求められます。

  • 人材の育成
    リーダーシップは、次世代のリーダーを育成し、組織の持続可能な成長を支援するために不可欠です。

  • 文化の形成
    リーダーは、組織文化の形成において重要な役割を果たし、組織の価値観や行動基準を確立します。

以上の点から、リーダーシップは経営において極めて重要な研究テーマであり、その理解と実践は組織の成功に直結します。

いかがですか? 今まで漠然と思っていたことが、こうして書くことで整理され、スッキリと理解できたのではないでしょうか。リーダーシップについての理解が深まることで、日常業務や人間関係においても新たな視点を持つことができるでしょう。

ダニエル・ゴールマン(Daniel Goleman)

ダニエル・ゴールマンは、リーダーシップにおける感情の重要性を強調し、その影響力を科学的に解明することで知られる心理学者です。彼の業績は、従来のリーダーシップ論に新たな視点を提供しました。ゴールマンは、単なる知的能力だけでなく、感情の理解と管理がリーダーシップに不可欠であることを示唆しました。彼の提唱するエモーショナル・インテリジェンス(EI)の概念は、リーダーが自己認識、自己管理、共感、そして効果的な対人スキルを発展させることによって、チームや組織全体のパフォーマンスを向上させることを可能にします。このNoteでは、ダニエル・ゴールマンの「結果を出すリーダーシップ」と言う論文を参考に、エモーショナル・インテリジェンスの概要と、6つのリーダーシップのスタイルについて述べていきます。

エモーショナル・インテリジェンス
(IE: Emotional Intelligence)

エモーショナル・インテリジェンス(EI)、または感情知能は、個人が自分や他人の感情を認識し、理解し、適切に管理する能力を指します。EIはリーダーシップの効果において重要な要素とされ、ダニエル・ゴールマンが広く普及させた概念です。EIは以下の4つの主要な要素から構成されます。

1.自己認識
(Self-Awareness)

  • 自分自身の感情や反応を正確に認識する能力。

  • 自分の強みや弱みを理解し、それに基づいて行動する。

  • 自分の価値観や信念を明確にし、それに基づいて自分を正直に表現する。

2.自己管理
(Self-Management)

  • 自分の感情や衝動を効果的に管理し、冷静で理性的な行動をとる能力。

  • ストレスやプレッシャーに対処する方法を学び、それに基づいて行動する。

  • 目標を設定し、それに向かって集中し、自己規律を持って行動する。

3.社会的認識
(Social Awareness)

  • 他人の感情やニーズを理解し、それに敏感に反応する能力。

  • 非言語的なサインや文脈を読み取り、相手の立場や視点を理解する。

  • 組織や社会の文化や政治的な動きに敏感であり、それらを考慮に入れて行動する。

4.社会的スキル
(Social Skills)

  • 効果的なコミュニケーションを築く能力。これには、話す能力だけでなく、傾聴やフィードバックの能力も含まれる。

  • チームビルディングや協力を促進する能力。

  • リーダーシップ、交渉、対人関係管理のスキルを持ち、それらを実践することで組織内で影響力を持つことができる。

エモーショナル・インテリジェンスの重要性

エモーショナル・インテリジェンスは、単に個々の感情を管理する能力を超えて、組織全体の成功に寄与する重要な要素です。リーダーはこの能力を磨くことで、より効果的なリーダーシップを発揮し、チームの成果を最大化することができます。

  • 人間関係の強化:EIが高いリーダーは、良好な人間関係を築くことができ、チームメンバーとの信頼関係を強化します。

  • 効果的なコミュニケーション:感情を理解し、適切に伝えることで、誤解や対立を減らし、効果的なコミュニケーションが促進されます。

  • ストレス管理:自己管理能力により、リーダーはストレスやプレッシャーに対処しやすくなり、冷静な判断が可能です。

  • モチベーション向上:EIの高いリーダーは、自己および他者の動機づけを理解し、適切な方法でモチベーションを高めることができます。

  • チームのパフォーマンス向上:共感と社会的スキルにより、リーダーはチームのニーズを理解し、サポートすることで、全体のパフォーマンスを向上させます。

リーダーシップの6つのタイプ

ダニエル・ゴールマンによるリーダーシップ理論は、組織やチームの成功において多岐に渡るリーダーシップスタイルの重要性を強調しています。彼の提唱する6つのリーダーシップスタイルは、それぞれ独自の特性と目的を持ち、異なる状況や組織のニーズに応じて適用されます。これらのスタイルは、リーダーが自らの個性や状況に応じて使い分けることで、チームのモチベーションや成果に大きな影響を与えるとされています。強制的権威主義協調的民主的ペース設定コーチングの各スタイルは、リーダーが組織のビジョンを達成するためにどのように指導するかについて示唆を与えるものです。以下に、それぞれのスタイルの特性と適用例について詳述します。

1.強制的スタイル
(Coercive Style)

  • スタイルの特性:指示命令型で、短期的な目標の達成を重視し、結果を求める。

  • スタイルの特徴的な表現:俺の言う通りにやれ!

  • EIの基盤:自己管理

  • 適用する状況・環境:緊急時や危機管理、極端な結果が求められる時。

  • チームへの影響:長期間このスタイルを行使すると、チーム全体のモラルを低下させる傾向があり、創造性や自己責任感を損なうことがある。一般的には、緊急時や危機管理の峠を越すまでの短期的なリーダーシップのタイプである。

2.権威主義スタイル
(Authoritative Style)

  • スタイルの特性:ビジョンを示し、魅力的な未来像を描くリーダーシップ。方向性を示し、チームを鼓舞する。

  • スタイルの特徴的な表現:一緒に来い! または 一緒にやろう!

  • EIの基盤:自己認識、社会的認知

  • 適用する状況・環境:ビジョンや方向性が不明確な時、チームを統合し、目標に向かって進ませたい時。

  • チームへの影響:ビジョンの共有と透明性を高め、チームのクリアさと責任感を増大させる。

3.協調的スタイル
(Affiliative Style)

  • スタイルの特性:チームの人間関係を重視し、人々の感情や関係を育む。共感とサポートに焦点を当てる。

  • スタイルの特徴的な表現:人が第一!

  • EIの基盤:社会的認知、関係管理

  • 適用する状況・環境:チームのモラールを高めたり、信頼を築く必要がある時、危機管理後の回復期間。

  • チームへの影響:チームの連帯感を強化し、コミュニケーションや柔軟性を促進する。

4.民主的スタイル
(Democratic Style)

  • スタイルの特性:意思決定を共有し、参加を奨励するリーダーシップ。意見を尊重し、共感を生む。

  • スタイルの特徴的な表現:みんなで考えよう!

  • EIの基盤:社会的認知、自己管理

  • 適用する状況・環境:意思決定の参加を重視し、チームの共感と信頼を構築したい時。

  • チームへの影響:チームの創造性と責任感を高め、参加意識を促進する。

5.ペース設定スタイル
(Pacesetting Style)

  • スタイルの特性:自らが模範となる高いパフォーマンス基準を設定し、その達成を要求する。

  • スタイルの特徴的な表現:私にもできるから、あなたにもできるはずだ!

  • EIの基盤:自己管理

  • 適用する状況・環境:高い自己モチベーションと能力を持つチームが必要な時。

  • チームへの影響:高いパフォーマンス基準を設定し、結果指向の文化を醸成するが、ストレスや負担がチームに影響する可能性がある。

6.コーチングスタイル
(Coaching Style)

  • スタイルの特性:個々の成長と発展を促進するために、長期的な目標設定や個別の指導を行う。

  • スタイルの特徴的な表現:君にはできる、頑張れ!

  • EIの基盤:自己認識、関係管理

  • 適用する状況・環境:個人の成長やスキルの向上が必要な時、学習意欲が高いチームに対して。

  • チームへの影響:個々の強みを最大限に活かし、長期的な発展と責任感を促進する。

ケース・スタディー

次に、6つのタイプを使い分けるケース・スタディーを3つ紹介します。どういう状況の時に、どのタイプを使用するのか、どのタイミングで異なるタイプに切り替えるかが参考になると思います。

1.システム開発プロジェクト

プロジェクト背景
広瀬さんはITコンサルタントとして、経営コンサルタントチームと一緒に顧客の要件分析を行いました。その後、正式にシステム開発に入ることになり、広瀬さんが開発チームのプロジェクトマネージャにアサインされました。メンバーは気心の知れた5人の若手精鋭で、広瀬さんは性格上争う事は好まず、話し合いで解決していこうというのが基本的な信条です。広瀬さんは経営コンサルティングチームと良好なコミュニケーションの維持、顧客との真摯な対応、メンバー5人とは気心も知れているため、和気あいあいと、しかしレビュー時は厳正に対処しようと考えています。
さて、広瀬さんはプロジェクトの各フェーズで、どの様なリーダーシップのタイプを取り入れてプロジェクトを進行していくのか見てみましょう。

  1. プロジェクト開始時のビジョン共有

    • 権威主義スタイル:一緒に来い! または 一緒にやろう!
      広瀬さんはプロジェクト開始時に、プロジェクトのビジョンとゴールを明確に共有するために権威主義スタイルを採用します。全員が目指すべき方向を理解し、一致団結して進むことを重視します。若手精鋭メンバーは高い意欲を持っているため、明確なビジョンを提示することでモチベーションを高め、全体の方向性を統一します。

  2. プロジェクトのコミュニケーション

    • 民主的スタイル:みんなで考えよう!
      広瀬さんはミーティング開催時にはいつも民主的スタイルを採用します。定期的にミーティングを開き、メンバーからの意見やアイデアを積極的に取り入れ、また、経営コンサルティングチームとも頻繁に情報交換を行い、良好なコミュニケーションを維持します。広瀬さんは話し合いで問題を解決することを好むため、メンバーの意見を尊重し、協力的な雰囲気を作ることで、チームの結束力を高めます。

  3. プロジェクト進行中のフィードバック

    • コーチングスタイル:君にはできる、頑張れ!
      広瀬さんはコーチングスタイルを採用して各メンバーの強みと弱みを理解し、個別にフィードバックを提供します。定期的に1対1のミーティングを行い、個々の成長を支援します。若手精鋭メンバーは成長意欲が高く、広瀬さんのコーチングを通じてスキルアップを図ることができ、長期的なプロジェクト成功につながります。

  4. タスク遂行と結果のレビュー

    • ペース設定スタイル:私にもできるから、あなたにもできるはずだ!
      広瀬さんは自身の高い基準を示しながらペース設定スタイルを採用して、メンバーにも同様のパフォーマンスを求めます。特に重要なタスクやデッドラインの際には、自らも積極的に関与し、チームをリードします。プロジェクトの重要なマイルストーンにおいて、ペース設定スタイルはチームの集中力と効率を高め、期限内に高品質な成果を達成するために有効です。

  5. メンバーの士気低下時の対処

    • 協調型スタイル:人が第一!
      広瀬さんはチームの士気を高める時には協調型スタイルを採用し、日常的に感謝の意を示し、チーム全体の雰囲気を大切にします。特に困難な状況に直面した際には、チームメンバーをサポートし、共に解決策を見出します。広瀬さんの協調的な姿勢は、チームの結束力を強化し、メンバーが困難な状況でも前向きに取り組むための支えとなります。

  6. 緊急時の迅速な対応

    • 強制型スタイル:俺の言う通りにやれ!
      緊急事態や迅速な意思決定が求められる状況では、広瀬さんは事態が収まるまで強制型スタイルを採用し、メンバーに明確な指示を出し、必要な対応を迅速に行います。プロジェクトが危機に瀕した場合や重要な決定が求められる時には、強制型スタイルが効果的であり、迅速な問題解決が図れます。

結論
広瀬さんがプロジェクトマネージャーとしてリーダーシップを発揮する際には、状況に応じて6つのリーダーシップスタイルを使い分けることが重要です。特に、プロジェクトのコミュニケーション、プロジェクト進行中のフィードバック、タスクの遂行と結果のレビュー、メンバーの士気低下時の対処、緊急時の対応といった各フェーズで適切なスタイルを選び、プロジェクトを成功に導くことが期待されます。

2.部下のやる気を削がないプロジェクト進行

冒頭で紹介した「部下のやる気を削ぐリーダーの5つの行動」の記事で示した以下の失敗ケーススタディを、広瀬さんが6つのリーダーシップタイプを理解していたら、どのように行動が変わり、プロジェクトが成功裏に終わったかについて、理想的なストーリーを見ていきたいと思います。

背景
広瀬さんは、プログラミングスキルと管理能力の両方で社内外から高い評価を受けているプロジェクトマネージャーです。広瀬さんは、新しい大規模システム開発プロジェクトのマネージャーに任命されました。このプロジェクトには、スキルの高い若手エンジニアのA君と、プログラミングが苦手なB君がチームメンバーとして参加しています。

プロジェクト開始
プロジェクトが始まると、広瀬さんは毎日各メンバーの進捗を確認し、技術的なレビューとアドバイスを欠かしませんでした。特にA君には高い期待を寄せ、彼の能力を最大限に引き出そうと、他のメンバー以上に声をかけました。一方で、B君はロジカル思考が苦手で進捗に問題があったため、広瀬さんは他のメンバーにB君をフォローするように指示しました。しかし、フォローするメンバーの進捗が遅れることを恐れた広瀬さんは、最終的に自分がB君を直接フォローすることに決めました。

プロジェクト中盤
プロジェクトが中盤に差し掛かった頃、広瀬さんはチームの雰囲気に異変を感じ始めました。A君とB君の態度が明らかに変わり、他のメンバーも同様の状態でした。不安を感じた広瀬さんは、1 on 1ミーティングを実施し、各メンバーの意見を直接聞くことにしました。

1 on 1ミーティング
A君とのミーティングで、広瀬さんは驚くべき事実を知りました。A君は「広瀬さんのマイクロマネジメントのお陰で自分の思い通りに仕事ができず、やる気が無くなりました」と告白しました。広瀬さんの過度な管理が、A君の自主性と創造性を奪い、結果として彼のモチベーションを低下させていたのです。次にB君とのミーティングで、広瀬さんはさらに深刻な問題に直面しました。B君は「広瀬さんの直接のフォローに相当のプレッシャーを感じ、心が壊れてしまいました」と訴えました。広瀬さんの過度な期待とプレッシャーが、B君の精神的な健康を蝕んでいたのです。

プロジェクトの結末
他のメンバーも同様の状態で、広瀬さんの孤軍奮闘が裏目に出てしまったことが明らかになりました。広瀬さんの意図は善意に基づいていましたが、結果的にチームの士気を低下させ、パフォーマンスを著しく悪化させてしまいました。プロジェクトは遅延し、品質も悪く、最終的には大失敗に終わりました。

「部下のやる気を削ぐリーダーの5つの行動」ケース・スタディーより抜粋
  1. プロジェクト開始時

    • 権威主義スタイル:一緒に来い! または 一緒にやろう!
      プロジェクト開始時は権威主義スタイルで、明確なビジョンと目標をチームに示します。チームの士気を高め、全員がプロジェクトの目的を理解し、共通の目標に向かって動くことを促進します。

  2. プロジェクト進行中

    • コーチングスタイル:君にはできる、頑張れ!
      自分の視点で経験を押し付けることなくコーチングスタイルで、各メンバーの個別のスキルやキャリアの成長に焦点を当てます。A君のスキルを最大限に引き出し、B君には適切なサポートと成長の機会を提供します。

    • 協調的スタイル:人が第一!
      チームの結束力に乱れを感じた時は協調的スタイルで、メンバー同士の信頼関係を後押しします。チームの雰囲気を和やかにし、メンバーが安心して働ける環境を作ります。

  3. プロジェクト中盤

    • 民主的スタイル:みんなで考えよう!
      プロジェクト中盤では多岐にわたる課題が発生します。民主的スタイルでチーム全体の意見を取り入れ、メンバーを意思決定プロセスに参加させることで、メンバーのエンゲージメントを高めます。チームメンバー全員がプロジェクトに対して責任を感じ、積極的に参加するようになります。

    • ペース設定スタイル:私にもできるから、あなたにもできるはずだ。
      特定の短期的な課題解決が必要なときにはペース設定スタイルを使用します。ただし、過度に振る舞うとメンバーにストレスを与えるので、他のスタイルと組み合わせることが重要です。チーム全体のパフォーマンスを一時的に高めるために使用しますが、持続的な使用は避けます。

  4. プロジェクト後半

    • コーチングスタイル:君にはできる、頑張れ!
      各メンバーの成長に焦点を当てるためにコーチングスタイルで臨みます。個々のメンバーのスキルや知識を向上させることで、チーム全体の能力を底上げします。これにより、メンバーは自信を持って最終段階に取り組むことができます。

    • 民主的スタイル:みんなで考えよう!
      プロジェクトの最終段階の調整に焦点を当てるために民主的スタイルで臨みます。メンバー全員の意見を反映させることで、チームの士気を高め、一体感を持って最終スパートをかけることができます。これにより、全員がプロジェクトの成功に向けて積極的に参加しやすくなります。

  5. プロジェクト終了時

    • 協調的スタイル:人が第一!
      プロジェクトの終了時には、協調的スタイルで成果を振り返り、チームの努力を認め合います。プロジェクト終了後の振り返りと感謝の表現により、次のプロジェクトに向けてのチームのモチベーションを維持します。

理想的なストーリー
広瀬さんが6つのリーダーシップタイプを状況に応じて適切に使い分けていたならば、A君とB君に対するマイクロマネジメントに陥ることなく、チームの士気を高め、個々のメンバーの成長を促進し、プロジェクトを成功に導くことができたかもしれません。
たとえば、プロジェクトの初期段階で広瀬さんが権威主義スタイルを使用して明確な目標と方向性を示し、次にコーチングスタイルを採用して各メンバーの成長を支援していれば、A君のモチベーションを保ちつつB君のスキルを向上させることができたでしょう。また、プロジェクト中盤には民主的スタイルを使ってチームの意見を取り入れ、全員がプロジェクトの進行に積極的に関与するように促すことができたでしょう。
プロジェクト後半には、ペース設定スタイルで高いパフォーマンスを求めつつ、協調的スタイルでチームの士気を維持し、最後にコーチングスタイルでメンバー一人ひとりの成長を見守りつつ、民主的スタイルで全員の意見を反映させて調整を行うことで、プロジェクト全体を円滑に進めることができたでしょう。
このように、広瀬さんがリーダーシップのスタイルを状況に応じて柔軟に使い分けていれば、プロジェクトは円滑に進行し、メンバーの成長とチームの成功を両立することができたはずです。

3.Effectuation理論Crazy Quiltの原則

Effectuation理論のCrazy Quiltの法則で、起業家が限られたリソースの中でパートナーや顧客を見つけるために、以下の6つのリーダーシップスタイルをどのように活用できるかを考えてみましょう。

  1. 強制的スタイル
    特定の緊急事態や決定が迫っている場面で有効です。例えば、顧客やパートナーとの交渉で迅速な結論を求める必要がある時に、強制的な意思決定を行うことで迅速かつ明確な方向性を示すことができます。ただし、このスタイルは長期的な関係構築には適していないことに留意する必要があります。

  2. 権威主義スタイル
    起業のビジョンや戦略を明確に提示し、パートナーに対してその魅力と将来の見通しを説明する際に有効です。ビジネスのリーダーとしての信頼性を示し、共感を得ることができます。

  3. 協調的スタイル
    感情的な絆を築き、信頼を深めることで、パートナーや顧客との間で協力的な関係を構築するのに役立ちます。共同作業や協力の精神を重視することで、相手にとって魅力的なパートナーとなることができます。

  4. 民主的スタイル
    意思決定に際してパートナーや顧客の意見やフィードバックを積極的に取り入れることで、共感を得ることができます。相手の意見を尊重し、共同での意思決定を通じて信頼関係を築くことができます。

  5. ペース設定スタイル
    高い基準を示すことで、業界でのリーダーシップや革新性をアピールすることができます。特にパートナーや顧客に対して、自身の業界の最前線での活動や成果を示すことで、彼らの関心を引くことができます。

  6. コーチングスタイル
    個々のパートナーや顧客の成長や発展をサポートすることで、彼らとの関係を深めることができます。彼らの課題やニーズを理解し、それに応じたアドバイスや支援を提供することで、信頼を築きながら共に成長していくパートナーシップを形成することができます。

これらのリーダーシップスタイルは、Effectuation理論の枠組みで考えると、異なる段階や相手との関係構築において柔軟に組み合わせて活用することが重要です。起業家は状況に応じて適切なスタイルを選択し、自身のビジネスの成長と発展を促進するためのツールとして活用できます。


まとめ

いかがでしたか?「リーダーシップとは、他者に影響を与え、動機づけ、指導する能力である」という堅い説明をしましたが、あなたも日常生活やビジネスの場で、無意識にこれら6つのリーダーシップスタイルを使っていたのではないでしょうか?
人には、これまでの経験から得た言語や文書で簡単に表現できない、無意識に持っている知識や技能が備わっています。これを暗黙知といいます。一方、教育や訓練、マニュアルなどを通じて共有・伝達できる、意識的に理解している知識を形式知といいます。
今回、6つのリーダーシップスタイルを形式知化することで、あなたの日常生活やビジネスの場でのリーダーシップがさらに効果的になることを期待しています。重要なのは、状況に応じて柔軟にスタイルを切り替え、最適なリーダーシップを選択することです。これにより、人と人のパートナーシップや顧客関係を築きながら、ビジネスの成長と成功が展開されるでしょう。

最後に、6つのリーダーシップスタイルを記憶に留めるために、一言で表現して終わります。

  1. 強制的スタイルは緊急時の迅速な決定に

  2. 権威主義スタイルはビジョンを共有するために

  3. 協調的スタイルは信頼と共同作業を築くために

  4. 民主的スタイルは多様な意見を尊重し合意形成を図るために

  5. ペース設定スタイルは高い基準を目指すために

  6. コーチングスタイルは個々の成長を促進するために

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
すこしでも、あなたの参考になれば幸いです。

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