世界の教養:ボヴァリー夫人

今回紹介するのは、「ボヴァリー夫人」(1857年)です。

フローベールの小説「ボヴァリー夫人」は、満たされない女性が不倫に走る写実主義的な描写で、当時としては斬新だったそうです。このあらすじに人々は憤慨し、フローベールと出版社は風紀紊乱(びんらん)の罪で訴えられました。

1789年のフランス革命後、貴族に代わって実業家や商人から成る中産階級が勃興してきました。知的エリートとして育てられてきたフローベールは、この新興成金の物質主義的な価値観を毛嫌いしていました。この嫌悪感が特にはっきりと表れているのが「ボヴァリー夫人」だそうです。

主人公のボヴァリーは、修道女から教育を受けた田舎育ちの娘です。ブルジョワ医師と結婚したものの、結婚生活の現実は、夢見ていた理想の姿とはまるで違って退屈きわまりないと感じていました。娘を産んでも母になっても気分は高まらず、ロマンチックな恋を求め、2回不倫をします。一つは男に捨てられ、もう一つは腐れ縁として惰性で続きます。ボヴァリー夫人は、次第に金遣いが荒くなり、かさんでいく巨額の借金を返すため、ついには体を売ることまで考えます。最後は何もかもが空しくなって、自殺してしまいます。


現代のドラマでありそうな内容で、150年以上前に既にこのような作品があったたんだ、と興味深かったです。近年の日本でも週刊誌等で不倫の話題がよくあがっていますが、ボヴァリー夫人の頃のフランスと同じような空気感になっているのかもしれないですね。


参考文献
デイヴィッド・S・キダー, ノア・D・オッペンハイム, 小林朋則 訳, 文響社, 1日1ページ読むだけで身につく世界の教養365, 2018年, 288p

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