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『学級経営の教科書』

『学級経営の教科書』白松賢 2017年 東洋館出版社


 「学級経営についてのオススメの本は?」と聞かれたとしたら、私なら真っ先に本書を推薦します。
 まさに、ありそうでなかった本という感じです。どういう意味かというと、学級経営に関する実践レベルの本は、世の中に溢れています。私自身もそういう本は読んできましたし、とても役立って今の教育実践にいかされているものもたくさんあります。ただ、そうした実践レベルで書かれたノウハウは、各々の教師がもつ教育観や学級経営のイメージに大きく影響を受けたものになっていますので、特定の学級経営に関するハウツー本のみを鵜呑みにしてしまうのは、視野を狭めてしまう危険性もあります。

 また、大学で学級経営について学ぶ機会というのは、授業論などに比べて少なく、現場に入ってからベテランの教師から学ぶことが多いと思います。当然、それも欠かせない有意義な経験なのですが、初任者でいきなり学級を任せられるとなった時に、常にベテランの先輩教師がそばについていてくれるわけではありません。

 そのため、学級経営についての理論を体系的に学ぶことのできる学級経営の「教科書」というのは、まさにありそうでなかった本なのです。大学生や若手教師だけなく、中堅以上の教師にとっても、改めてこれまで行ってきた学級経営のあり方を見直すためにオススメの本です。

本書は、主に教育社会学や特別活動論をベースに書かれたものではありますが、アカデミックな記述に終始するのではなく、むしろ現場の実践知を織りまぜながら記述されているため、納得感があります。
 特に、次のようなトピックに関心のある人がオススメかもしれません。

  • 学級経営とは何か?といった定義や背景を知りたい場合

  • 学級経営の指導スタイルや、「きまりごと」、なぜその指導や「きまりごと」が必要なのか?といった考えを深めたい場合

  • 学級経営の観を鍛えたい場合

  • 「ルール」「規律」「自尊感情」「黄金の3日間」など、一般的に無批判に語られがちな言葉の問題点を捉え直したい場合

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