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『資質・能力ー理論編』

『資質・能力ー理論編』国立教育政策研究所(2016年)東洋館出版社

「資質・能力」とは、そもそも何なのか? 
なぜ資質・能力の育成が必要なのか?
どうやって資質・育成を育むのか?

こうした疑問を理論的に解説してくれている本です。
ここでいう「理論」のベースになっているのは、認知科学や学習科学の知見がメインになっています。
特に「コンピテンシー」「メタ認知」「熟達化」「建設的相互作用」などが重要なキーワードになっていると思います。

個人的にハッとさせられたのが、

「多様性があればそれでよい(みんなちがってみんないい)」ということではなく、「多様性が一人一人の考えを深めることにつながるとき、その良さが生きる(みんな違って、みんなが考えざるを得ないから、みんないい)」

という建設的相互作用の考え方です。「みんなちがってみんないい」というのは、学校現場ではよく常套句になってしまっているので、対話的な学びのあり方を考える上で大変重要だなと感じました。


もう1つ個人的に面白いなと思ったのは、

最初の問いは教員などの大人が出して、その問いを解決するところから次の問いが生まれるという展開があってもよい

と、疑問の生成に関する認知研究をもとに、問いのあり方について示唆しているところです。子どもたち自身に問いを生成させる実践は多いですが、最初からオープンエンドな問いばかりに取り組ませることが必ずしもよいことではない、と。探究的な学びを考える上でも重要な指摘かなと思いました。


学習指導要領やその解説を読んでいても、資質・能力の裏側にある理論や研究について学ぶことは難しいと思います。学習指導要領の背景を学ぶ上でも良書だと思いました。

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