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先週のMVPはティキンナゲット

こんにちは。江戸餅しゅんと申します。
田舎町にある小さな幼稚園に勤めています。3歳から6歳までの子ども達が同じ教室で毎日を一緒に過ごしています。

ティキンナゲット

大人の腰よりちょっと高い位の園庭の木製のゲートが最近歪んでいます。
その歪んだ所に出来たスペースから園で飼育している野放し鶏が、やたら園庭に入ってくる様になりました。どうやら園庭の土の中にいるミ○ズが目的の様です。
子ども達はこの鶏の訪問が大好きですが人一倍絶叫し向い入れる子がいます。サンダルちゃんです。

サンダルちゃんは鶏を何故がチキンナゲットと名付け園庭で見かける度にフレンドリーに話しかけてますが、ネーミングがフレンドリーではないのがシュールだなといつも感じます。
呼びはじめた時やんわりとミセス・サンシャインが他の名前を提案しているのを耳にしましたが、アーティスト気質なサンダルちゃんは自分の感性を貫いた様です。
発音がハッキリ出来ないサンダルちゃんはチキンナゲットをティキンナゲットと呼びます。
最近では私もこの鶏を見かけると「あ、ティキンナゲット。」とこの始末。



今回の登場人物(☆印は初登場)

ミセス・サンシャイン
うちのクラスの担任の先生。60代のおばあちゃん先生。
こんな大人がいるのかと驚くほど無邪気で誠実。ユーモアもありまさにクラスの太陽のような人。声を上げてよく笑います。

☆ミズ・フローラル 
20代。ミズ・コットンの後に私達のクラスに仲間入りした新しいアシスタントの先生。自宅でお花を育ててそれを売り、副業にしている。
長い髪が美しい母性の塊の様な女性。物静かで優しさに溢れ柔らか〜いオーラをまとっている。←素敵!

サンダルちゃん
5歳の女の子。なかなか個性的。アイーティストタイプとでもいいましょうか…。絵がとても上手で、色の配置のセンスが抜群。その時の心のありようでバラのように愛らしくもあればトゲトゲの時もある。そのギャップがまた魅力。靴や長靴よりサンダルが好き。

ビー玉君(びーだまくん)
6歳の男の子。どの年齢の子に対しても優しく慕われるクラスのリーダー的存在。
ビー玉って手元にあるとなんかウキウキした気持ちになります。この子は皆んなにとってそんな存在なんじゃないかなぁと勝手に想像してこの名前をつけました。

のれん君
仙人と同い年の5歳の男の子。仙人の親友。よく笑う。先生の注意も暖簾のようにひらりとかわす。暖簾に腕押しからこの名前をつけました。おちゃらけおしゃべりキャラ。
いつもニコニコしていて「人生楽しく生きましょう〜。」と身体から滲み出ているイメージの子です。

仙人(せんにん)
悟りを開いたまさに仙人のような大人びた5歳の男の子。寡黙な時とおしゃべりな時とあります。よく私の隣にそっとやってきてお天気の話や家での出来事をお話ししてくれます。

☆リス子ちゃん
3歳の女の子。仙人のご近所さんで仙人家族のオススメでうちの園に来ました。おままごとよりも冒険ごっこの方が好きな女の子。
 


先週のお天気

うちの園は大自然の中にあります。なのでお天気チェックはとても重要です。お天気にそってその日の予定を決めていきます。
先週は曇続きでしたが、風がそよそよ程度で午後の外遊びの時間には動き回ると半袖になりたい気温の日が続きました。


ある日の午後(アフタヌーン)

お昼ご飯を食べ、子ども達にウケの悪いお昼寝の時間をやっと(抗議が殺到)終え午後の外遊びの時間がやってきました。
午前中でクラスの三分の一の子が帰るのでこの時間は気持ちゆったりです。そしてそのまま保護者が迎えに来るまで遊びます。
この日はサンダルちゃんもビー玉君も眠りについたので園庭はいつもより静かでした。

のどかな雰囲気の中、子ども達を見つつ園庭の日陰に設置してあるピクニックテーブルにお絵かき用のクレヨンバスケットを持ち出しました。
この日はミセス・サンシャインにクレヨン掃除を命ぜられていました。
鉄で出来た手のひらサイズの小さなボールに少しだけキャノーラ油を出し、ボロ切れにちょんっとその油をつけ、その布でごちゃ混ぜの中でぶつかり合って汚れたクレヨンの汚れを綺麗にします。

大人が何か作業をしていると見ればわかるのに聞かずにいられないのが子供です。

テーブルに仙人、のれん君そしてリス子ちゃんがやってきました。

「何してるの〜?」×3

「クルヨンをお風呂に入れてるんだよ〜。」

するとのれん君が笑いながら答えました。

「きゃは!本当だ〜裸クレヨンだ〜!」

綺麗に汚れが拭き取られたクルヨンの事を裸と表現したのでしょう。裸という言葉に仙人もリス子ちゃんもケラケラ笑っています。

リス子ちゃんが絵を描きたい!と申し出ました。その提案に仙人ものれん君も乗っかります。
「教室にミズ・フローラルが居るから、お絵描きの紙の入ったバスケットを下さいって言ってここに持ってきてくれる?」
3人は「わかった!」と駆け出して行きました。

しばらくして3歳児のリス子ちゃんでも一人で持てるほどの大きさ、重さのバスケットをのれん君が真ん中、その左側にリス子ちゃん、右側に仙人と器用に3人で運びながら戻ってきました。

仙人は両手でしっかりバスケットを支えながらも奇妙な蟹歩き状態です。リス子ちゃんは自身の右手でバスケットを持っている様に見えますが、ぶら下げているだけの様です。
その為気合の入った仙人側は上がり、重みのあるリス子ちゃん側は下がり真ん中ののれん君はバランスを保とうとしているのでしょうがフラついてます。
酔っ払った千鳥足のおっさん状態です。

お絵描き準備を整え終えると、3人揃って裸のクレヨンを使いたいと申し出てきました。
その時点で私はまだ2本目を拭いている最中でした。
「お風呂は少し時間がかかるから、裸クレヨンは1人1本。この中から好きなの選んで私に頂戴。」
リス子ちゃんはオレンジ。仙人は赤。のれん君は赤紫を選びました。
3人は暫くの間私の近くに座っていましたが1分程で、誰からともなく「ちょっと出かけてくるからよろしく!」と園庭に駆け出して行きました。

私の前にはお風呂の順番待ちの赤ちゃんの様にその3本が並んでいます。

とっくにその3本磨き上げてしばらくしてから3人が息を切らして戻ってきました。
3人「「「私の/僕の裸クレヨンは!」」」
私「……。うーん…。まず水飲みなさい。」
3人の顔は真っ赤かでした。
裸クレヨンを待っている間長めの柄(え)のついたプラスチック製のスコップを1人2個持ち何かの遊びをしていた3人。
すぐ横にある休憩、外でおやつやお弁当を食べる時に使うスペースに置いてあるそれぞれの水筒に向けて(またもや)走って行きました。
そこに子供では動かせない程の大きさの切り株がいくつも置いてあるのですが、そこに腰掛けた3人はこれまた時間をかけて水を飲んでいました。

大人顔負けに談笑タイムです。(流石ティータイム文化の国です。)

そんなこんなしているうちに帰りの会の時間になってしまいました。
せっかくお風呂に入り待っていた裸クレヨンは結局使われる事なくまたバスケットへ戻りました。

この日はそのまま切り株の森で帰りの会をする事に。ビー玉君もサンダルちゃんもとっくに起きて来ていました。

歌も歌い終わり保護者が到着するのを待っている間ぼ〜っとしていた仙人が「あ!ちょっとみて!」と話しかけてきました。
仙人の方に目をやると仙人は自分の右手を切り株の後ろにやり自身の長靴を取り出しました。
そしてその中に何か入っている様です。
すると仙人は「あ!ちょっとみないで!」とさっきとは真逆な事を言ってきたので慌てて目を逸らしました。

「OK!」と言われ視線を戻すとそこには長靴を両手で持つのれん君と仙人の姿が。
そして長靴の中にギュッと押し込んだ自身の水筒(ストロー付き)から、水を飲んでみせたのです。顔を見合わせて笑う2人。

その後クラス中が真似した事は言うまでもありません。

迎えに来た保護者もミセス・サンシャインも誰も汚い!とか下品!とか言わないでニコニコしているのをみて私の中の【ここではそれくらい良いらしいリスト】に新しくこのページが加わりました。

コメ○珈琲のあのグラスをプレゼントしたいなと思ったってお話しでした。


読んでくださりありがとうございました! 

ごめんあそばせ〜☕️








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