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みちのく一人旅 〜気仙沼 2023 夏〜

気仙沼に行きたい。Kさんに会いたいなぁ。

15年ともに暮らしたねこ息子の平九郎、たいせつな母、最愛のオット、そして大好きだった上司までが相次いで他界してしまった、伊豆暮らしの数年間。
心にぽっかりと大きな穴を開けたままの私に、電話口でいつもほん〜わかと優しい、静かなKさんにまた会いたい。
一時期健康を害されたという年賀状を受け取って以来、その思いはいよいよ強くなっていて
昨年栃木の父のもとに越し、東北が近くなってからは、この夏にきっと行こうと決めていました。

車で行こう、と。

そしてもうお一人。
生前原が敬愛してやまなかった、M先生を仙台に訪ねよう。
熱い正義漢で、まっすぐで。ご著書やお便りをずっと枕元に置きお慕いしていた彼がどんなにか会いに行きたかったであろう先生のところへ、連れて行きたい。

私の申し出とちょうど時を同じくして、GWの帰省の帰路、M先生ご夫妻はお線香を上げにわざわざ栃木に立ち寄って下さり(涙)
つかの間の語らいで奥さまのお人柄にもすっかり魅了された私は、6月の終わりの仙台での地酒、もとい、再会を約束したのでした。

2014年にはまだ市内のあちこちで嵩上げ工事が盛んに行われ、街の体を成していなかった気仙沼には、整然と新しい道路が走り
朝ドラの『おかえりモネ』で話題となった気仙沼大島に車で渡れる橋が湾を跨いでいました。
そもそも三陸道の整備によって、気仙沼の街なかまで高速のままアクセスできる便利さに驚きました。これならオット教官の高速講習卒の私でもだいじょうぶそうです。

前回訪ねた時話してくれたように、嵩上げ後の土地に建てられたりっぱな市営住宅の高層階で、Kさんは新しい暮らしを始めていました。あれから9年が過ぎていました。

お互いがわかるかしら?とおそるおそるの再会。
まずは何よりも、病を得たと聞き案じていたKさんの病状がお薬で落ち着き、お元気に朗らかに生活されていることをとても嬉しく感じました。
体調を心配していながら、強く勧められるままにお泊まりすることにした(おい。)のですが
お部屋の中は今も、趣味のよい、でも決して華美でない調度品や布小物、トトロやキティちゃんのお茶目なグッズなどに彩られ、ご近所の方たちと支え合い穏やかな毎日を送っていらっしゃる様子がうかがえました。
ほんとうに来てよかった!

さてどこへ行きましょうか?ということになり
目指したのは、大島。
免許を返納してしまっていたKさんを今回は私が乗せて、安全運転で向かいます。

肌にまとわりつくような蒸し暑さの、梅雨の晴れ間。
潮の香りを感じながら、おいしいサンドイッチとアイスコーヒー。

ホヤぼーやとの記念撮影(笑)

車がなくなり不便でしょう?お買いものでもどこでも行きますよ?と言うと
志津川にお気に入りのスポットがあるとのことで、海沿いの道路をのんびり南へ下って行きました。

「なかなか着かないねぇ。うふふ」とおしゃべりしながら、小一時間ほど走ったでしょうか?
見えてきたホテルらしい建物……は目印で、その麓に小さなカフェがあるのだそう。

果たして……

絶景かな。絶景かな!

「うにが好きだったよね?」
Kさんはちゃんと覚えていて下さり、私においしいうにを食べさせようと、お店のお兄さんが潜って獲ってきたというできたての塩うにをおすそ分けしてもらいました。

ひとさじのうにと、添えられた不思議なおやつをおともに、淹れたてのコーヒー。

南仏の鷹の巣村のように、入り組んだ海岸線の絶壁にしがみつくようなカフェの建物。
いろんなものが全部流されたのだとお兄さんは話してくれました。

何でも自力で直したり拵えたりしてしまうらしく、DIY作業中の現場がそこかしこ。
お兄さんとわんちゃんが営むこのすてきな場所が、ずっと元気でありますように。

……そもそもお互い、歳はいくつなのだっけ?(笑)
いろんなことがあった歳月。話したいことをぽつりぽつりと。聴く方は深く掘り返さず語るに任せ……
そんな居心地のよい午後が優しく過ぎていきました。

晩ごはんにはこんなごちそうが!
しかも、Kさん曰く「お刺身を買うのが上手」というご近所さんがマンボウを差し入れして下さって、生まれて初めてマンボウを味わいました。
つるんと口当たりよく爽やかな蒸し鶏のよう。美味です。

ふんわりと温かいおもてなしのお陰で、気仙沼への心の距離はぐんと縮まりました。
海を望むベランダから明るい陽が差し、甘ずっぱいぶどうパンと熱いコーヒーで始まった爽やかな朝。

またきっと会いに来よう。この土地と、Kさんに。

さて、仙台へと移動です。

(続く)

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