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みちのく一人旅 〜仙台 2023 夏〜

ゆっくりと手を振る Kさんに見送られ

一路仙台を目指します。
間もなくという手前で、「松島」の表示を目にして
ああ。名高い松島は、いつか行きたいねぇと話していた松島はここなのかー。
吸い込まれるように駐車場へ。
あいにくの曇り空の下ではあったけれど、しばし湾の景色を眺めながら辺りを歩き、利久でお土産も求めました。

この歳(半世紀超)にして、仙台を訪ねるのはほぼ初めてです。
ドナルドダックのようなおむつの子が母と手をつないだセピア色の写真で、七夕に家族旅行をしたらしいことを知るのみ。

今回はお食事の前に、M先生がお気に入りのお散歩道(カント先生みたい♡)を案内して下さるとのことで、とてもとても光栄に思い、原がどんなに喜ぶかしらと楽しみにしていました。

仙台駅近くの宿でお元気そうなご夫妻とお目にかかり、奥さまとは一旦別れて、大学のある駅へ。お初仙台。お初地下鉄。
先生のお車で仙台の街を一望する青葉城址へと登って行きました。

眼下には、一瞬地上に顔を出すさっきの地下鉄から見えた牛越橋。緑の中を悠々と蛇行する広瀬川……

伊達さまにも初めてごあいさつ。月並みですが、カッコいい馬上のお姿です。こんにちは!

さて。お散歩の本番はここから。
車を置きに戻り、アップダウンの細道を抜けて広瀬川に出ると、その名の通り幅広の川辺をゆっくりと、街の中心へと徒歩で辿りました。

梅雨の時期だったこともあり、”ゆかしき瀬音”はなかなかの勢いを得て
鬱蒼と生い茂る緑の中、対岸の段丘に宮城県美術館の凛とした建物が見えます。設計は前川國男さん。隣接の佐藤忠良記念館は、大宇根弘司さんの手によります。
大好きな「崖の上の美術館」とご紹介下さいました。

初夏の汗ばむような湿り気を心地よく吸い込みながら長い長い川沿いを歩き、車道に上がって美術館の敷地へと入って行きます。
大規模改修に向け既に閉館中ですが、辛うじて「アリスの庭」の愛称で親しまれる中庭や、美しい建物を愛でることができました。

こちらのブログが美術館の魅力を詳しく伝えているので、引かせていただきます。

宮城県美術館は、行政による移転の計画が持ち上がったものの、市民の皆さんが 17000筆を超える署名を集め断念させた(今在るものの価値を生かし、今在る場所で必要な改修を行う)貴重な文化遺産で
先生ご夫妻も、全国的にも快挙と言えるその運動の大きな一翼を担われたのでした。
運動に関しては、克明かつ読みものとしても大変内容の濃い冊子『みんなでまもった美術館』に丁寧にまとめられていますので、ご興味のある方はぜひ手に取ってご覧いただきたいと思います。

特に素晴らしいと感じたのは、さまざまな分野の学者さんたち(敢えて学者と言いたい)が横断的に手を携え、とりわけ哲学の先生方が運動を牽引されたことです。
行政に対しただ闘争的になるだけに終わらない豊かなアイディア(エコバッグがもたらす連帯感など)もとてもよいと思いました。
そして実際に、美術館と、そこにたしかに生き続ける自分たちの記憶を守ってゆこうという思いは市民の間にどんどん広がり、浸透していったのでした。

そんな愛着のある美術館、そして空へと大きく背を伸ばす美しい並木道の、やはり同じ移転計画に含まれていた県民会館、メディアセンターと順に建物を巡り
杜の都の落ち着いた佇まいと文化の香りをいっぱいに吸い込んだ午後。
メディアセンターのブックストアで、先述の『みんなでまもった美術館』をお土産にいただいてしまいました。

メディアセンターのガラスに映る並木が茜色に染まる夕暮れ時。
奥さまも合流し、近くの小さなお寿司屋さんへ連れて行って下さったのです。

お寿司屋さんで日本酒を傾けるのが何よりも好きだった原も、嬉しそうに見えます。

お魚やお寿司のおいしさは言葉に尽くせぬほど。予告されていた(笑)宮城の地酒も、みんなで5種類ほどいただきました。幸せいっぱいです。

チェックアウトの際受け取れるようにと、フロントにそっとお土産を預けて下さった奥さまのお心遣いに感激しました。

ほんとうに来てよかった。
ねこの剣之助を乗せていない(お留守番でゴメンね!)初のロングドライブは、上々の、嬉しい再会の旅路となりました。


(8月の福島編に続きます)

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