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入社3年以内に読んでほしい推し本って?|エディマート座談会『5人の本』

こんにちは!エディマートのありまです。
 
突然ですが、何かを継続する際に「3年の壁」ってよく聞きませんか?「三日三月三年」なんて言葉もありますよね。
私は常々疑問に思っているのですが、どうして「3」なのでしょうか…?もはやミステリーです。
 
さて、エディマート座談会『5人の本』も第三弾を迎えました!
今回のテーマは、『入社3年以内に読んでほしい推し本って?』です。
 
覚えることも学ぶことも失敗も多い新入社員。最初はつらいのが当たり前かもしれないけれど、できることなら早く仕事の楽しさに気づきたいし、やりがいを感じたい!
 
そんなもどかしさを解消するべく、今回は各世代の先輩方に「若いうちに、とりあえずこれ読んどけ!」という推し本についてお話いただきました。

ファシリテーターを務めたのは、入社2年目のありまです。エディマートには大学4年時にアルバイト入社。祖母の口癖は「三日三月三年」。三日坊主な私は「3」という数字が怖くなりました。
 
それでは今月も、編プロ社員のイチオシに触れる座談会『5人の本』、スタートです。
 
▼前回の記事、『編集のプロはどんな本を選ぶ?大人の読書感想文。』はこちらから。100いいね💓達成!ありがとうございます!!!


『入社3年以内に読んでほしい推し本』で集まった5冊の本は…

――今回セレクトいただいた本の紹介をお願いします!

きとう:僕が選んだのは『雑誌づくりの決定的瞬間 堀内誠一の仕事(マガジンハウス/木滑良久 責任編集)』。これは堀内誠一さんという数々の雑誌を手がけたアートディレクターの、雑誌作りに関する仕事が詰め込まれた一冊。

今でこそ、専用ソフトウェアを使った雑誌作りが主流だけど、僕が若いころは版下というものを手作業で作成して、それを製版会社に渡して雑誌を作っていたんだよね。当時の雑誌制作が分かる堀内さんのラフスケッチなどが載っていて、彼が手がけた作品や作品が完成するまでのプロセスを見ることができる。僕の憧れが詰まった本でもあるかな。

みずの:私は『「やりがいのある仕事」という幻想(朝日新聞出版/森博嗣)』を持ってきました。森博嗣さんは小説やエッセイをたくさん書いている、私の好きな作家さんです。
 
この本の初版が発行されたのは2013年なのですが、確かそのころは就職氷河期で、仕事を理由とした自殺が社会問題になったんです。そういった問題も背景にあるのか、「仕事が人生のすべてではない」ということを伝えてくれています。森さんが考える、仕事との向き合い方がつづられた一冊ですね。

ほった:僕が持ってきたのは『月と六ペンス(新潮社/サマセット・モーム 金原瑞人 訳)』という小説。駆け出しの若い小説家が画家のゴーギャンをモチーフに、ストリックランドという画家を追いかけ、彼の半生をつづったと言われているお話です。
 
ストリックランドは、証券会社に勤めていて妻子もいる、裕福な上流階級の人間。そんな彼が、あるとき急に画家になると言って仕事も家族もすべて捨てて行方をくらませる、というところから始まる物語です。空前のベストセラーとなったサマセット・モームの代表作で、世界的に有名な小説ですね。

すざき:私は『重版出来!(小学館/松田奈緒子)』という漫画を持ってきました。出版社に入社した主人公の女の子が、漫画編集部に配属されてお仕事に奮闘する、いわゆるお仕事漫画ですね。黒木華さん主演でドラマ化もされ、少し前に最終巻となる20巻が出て完結しました!
 
主人公が漫画編集者なので、漫画家はもちろんのこと、印刷会社や書店員、出版営業など、漫画に関わるあらゆる職業人たちが登場します。出版や編集の仕事を志す人はもちろん、お仕事を頑張るすべての人に、ぜひ読んでほしいです!

もりなが:私が持ってきたのは『佐久間宣行のずるい仕事術(ダイヤモンド社/佐久間宣行)』です。佐久間さんはテレビ東京の元プロデューサーで、私が好きな番組「あちこちオードリー」など、たくさんのテレビ番組を手がけています。
 
この本では、仕事との向き合い方が佐久間さん自身の経験談を踏まえてつづられています。内容は、「仕事術編」「人間関係編」「チーム編」「マネジメント編」「企画術編」「メンタル編」の6章に分かれていて、ビジネス書初心者でも気になるところからサクッと読み進められますよ。

その本を選んだ理由は?

「雑誌づくりの決定的瞬間 堀内誠一の仕事(マガジンハウス/木滑良久 責任編集)」

きとう:入社3年目というのは、ひと通り仕事を覚えてから、もうひと化けする前の壁を感じる時期だと思ってる。そんな壁にぶち当たったときに「こうなりたい」「これやりたい」が詰まった本を開いて、いつか抱いた憧れと夢を再確認してほしいと思ってこの本を持ってきました。
 
僕がこの本と出合ったのは、地元の出版社に入社をして1年が経ったころ。ずっと携わりたいと思っていたエリア情報誌の編集部に異動し、僕の後に入ってきた同僚と互いに闘志を燃やしながらも仲良く仕事をしていたんだけど、ある日その同僚が「鬼頭さん、僕これ読んでるんですよ」とか言ってこれを持ってきた(笑)。
 
裏を見ると分かるけど、この本5,000円もするんだよ。「こいつ5,000円の本読んでんのかよ」って驚きながらもパラパラ見てみると、かっこいいグラビアばかりで「うわ、こいつ先を行ってるな。僕は勉強の時点で負けてるじゃないか」ってすごく悔しかった。しばらくは借りて見させてもらってたな。

きとう:当時は、版下の文化が半分くらいは残っていて、書体や文字の行数・Q数などを手書きした指示書とワープロなどで作った原稿データを写植屋さんに渡してイラストや写真、文字を組み立ててもらってページを作っていたんだよ。

みずの:そうだったんですか!?

ほった:じゃあ、デザイナーさんは何をするんですか?

すざき:どこに何を配置するかを指示するんじゃない?

きとう:そうそう。僕らも指示書を作っていたけれど、堀内さんのものと見比べると指示の細かさが全然違って、「売れてる本はここまでやるのか」っていう衝撃がすごかった。僕はキャリアを積んだ今でも、あのとき受けた衝撃や感動を忘れないように、刺激をもらうためにこの本を開くんだよ。
 
憧れや夢を思い出せる特別な本を見つけて、それを原動力に走り続けてほしい。そんな若い世代に対する思いが、僕とこの本のつながりを通して伝わるといいな。

「『やりがいのある仕事』という幻想(朝日新聞出版/森博嗣)」

みずの:「やりがいのある仕事がしたい」って、よく聞く言葉かと思うのですが、社歴が浅いうちはやりがいが何かを見つけるのが大変ですよね。だからまずは、やりがいが何かを漠然とイメージするところから始めてほしいと思ってこの本を持ってきました。他者の価値観や考え方に触れると、自分の思考の幅も広がって働きやすくなる気がするんです。
 
森さんは、仕事の目的は生きるためにお金を稼ぐことだから仕事は何だっていい、という考えを持っている人。ただ、稼ぐために自分が差し出さなければいけない条件は、自分に適したものを選択しなければならない、と言っています。時間なのか、我慢なのか、プライドなのか。

自分が差し出すものと得られる賃金が見合っていれば、職業や立場は気にする必要がないという考え方に、共感しましたね。

みずの:第2章の「『上手くいかない』のも仕事のうち」という提言は、印象的だった内容のひとつです。仕事って最初はできないことばかりで、「何でこんなにできないんだろう、時間がかかっちゃうんだろう」とか思ってしまうんですけど、それって当たり前で会社側はそれを計算に入れて計画を立てている。
 
だから、そんなときは「これは上手くいかない研修なんだ」と割り切ることも大事なのだとか。すると、どうすれば上手くいくのかを冷静に考えられるし、実際に上手くいったときに達成感を味わえるんですよね。
 
ありま:なるほど。確かに「しょうがない!」と割り切るだけで、一人で悩んだり自分を追い詰めたりする精神的な負担が減るかもしれませんね。
 
みずの:うんうん、ちょっと違う考え方をしてみるっていいと思う。この話の締めには「とにかく、そんなに恐れたり、思い悩んだり、落ち込んだりするほどのものではない、と考えて良い。ただ、あっけらかんとしていると良い印象ではないので、思い悩んでいる振りくらいはしておこう。」と書いてあって(笑)。なんだか少し、心が軽くなるような気がしませんか?

「月と六ペンス(新潮社/サマセット・モーム 金原瑞人 訳)」

ほった:編集の仕事をしていると、ビジネスの場ではもちろんのこと、飲み会などでも誰もが知っているだろう名作の話になることがあるんです。その話題に乗れるようにするためにも名作は読んでおくべき!という意味で、今回はこの小説を持ってきました。
 
とは言うものの、この本を初めて読んだときの感想は「意味が分からない」でした(笑)。「月と六ペンス」というワードは作中で一度も出てこないですし、最初に買った旧訳書の理解が当時の僕には難しかったんです。

タイトルに関して旧訳書では、月は「夢」で六ペンスは「現実」を表しているとされており、新訳書では月は「美」で六ペンスは「世俗の安っぽさ」、あるいは月は「狂気」で六ペンスは「日常」を表していると述べられています。
 
2014年に出されたこの新訳を読み終えたとき、画家の人生を通して夢と現実という対照的な事象が描写されていることを理解できました。読み込んで分かる内容の深さも魅力ですね。

ほった:ストリックランドは、家族を捨てて行方をくらませた理由を「わたし」(駆け出しの小説家)に問われたとき、「おれは、描かなくてはいけない、といっているんだ。描かずにはいられないんだ。」と答えるんです。衝動にかられたら何が何でもやりたいと突き進む彼の旅を読んで、やると決めたらやらなきゃいけないシーンって僕らの日常にもたくさんあるなって思いました。
 
ただ、「決めたらやりきる」精神って必ずしも正解ではなくて。ストリックランドは画家という夢を追いかける過程で、ホテル代を踏み倒したり、同居人の妻をたぶらかして自殺に追い込んだりと多くの人に迷惑をかけているんです。
 
そうなると結局、周囲の人間から見た彼の旅は、自分がいいと思うことに傾倒しすぎた身勝手極まりない行動ですよね。自分が選んだ道を信じて進むことは一見すばらしいことに見えるけれど、それが評価されないことは大いにあり得る。すごく難しいんですけど、彼の生き様って社会人生活に通ずるところがあるような気がしていて、ぜひ読んでみてほしいですね。
 
ありま:人生って、難しいですね。
 
ほった:うん、僕も他人の人生がつづられた物語の魅力を説明するのは難しかったよ(笑)。小説って、理解が難しいものほど「これってどういうことだったんだろう?」と考えるよね。
 
もちろん読む人によってとらえ方は変わるから正解や不正解はないのだけれど、難しいものを自分なりに解釈することは考え方の幅も広がるし、『月と六ペンス』に限らず名作は読んでほしいな。

「重版出来!(小学館/松田奈緒子)」

すざき:働き始めのころって、目の前の仕事をこなすことに精一杯で追い詰められがちなのですが、私たちは決して一人で仕事をしているわけじゃない。それにできるだけ早く気づいてほしいと思って、この漫画を持ってきました。
 
物語は、けがによって柔道でオリンピックに出場するという夢に破れた黒沢心という主人公が、「柔道以外で心から熱くなれる場所はここしかない」と言って出版社に入社するところから始まります。この心ちゃんがとにかく芯が通った子で、新人なのに堂々としすぎているんですよ(笑)。初めて読んだときは「こんな新人にはなれないよ…」という嫉妬の気持ちが強かったのを覚えています。
 
なので正直、主人公にはあまり共感できなかったのですが、編集者が仕事をするうえで出会う人たちの職業や本作りの流れを知れることが魅力的で読み続けていました。例えば漫画制作だと、編集部や校閲、DTP、印刷会社、書店といったさまざまな仕事がリレーのようにつながっている。
 
私は校閲という仕事をこの漫画で知りましたし、製版所のDTPオペレーターが編集部から印刷前の原稿を受け取るシーンで「この瞬間が一番好き」と目を輝かせる姿に感動したんです。どんな仕事にも熱い思いがあるんだなって。

すざき:「重版出来!」では、会社や業務内容が違っても、たくさんの職業人がそれぞれに思いを持って働いていることが分かりやすく描かれています。1巻に出てくる「『売れた』んじゃない。」「俺たちが売ったんだよ!!!」という彼らの熱い言葉はとても印象的で、私もこのチームの一員になりたいって思ったんです。
 
もりなが:さまざまな職業を知ったうえで、編集者というお仕事を長く続ける道を選ばれたんですね。
 
すざき:そうだね!漫画編集とエディマートの仕事は違う部分も多いのだけれど、この本を読んでいろんな職業を知ったからこそ、私は編集者として本作りに携わりたいと強く思い直せたんだよね。それに、自分がこれから関わるだろう職業をリスペクトする気持ちも持てた。
 
たくさんの人と仕事がつながって何かを生み出す感動を、早い時期に知ってもらえるといいなって思います。

「佐久間宣行のずるい仕事術(ダイヤモンド社/佐久間宣行)」

もりなが:ビジネス書って、難しそうだし手に取りにくいなと思っていたんですけど、この本は好きなテレビ番組のプロデューサーが著者ということで出版前から気になっていて購入しました。「ずるい仕事術」というワードに惹かれたのも事実です(笑)。
 
水野さんのお話を聞いていて思ったのですが、他者の経験や考え方ってすごく参考になるし、真似することで自分の成長につながることもあるんですよね。だから、自分と何か共通点がある人や自分が尊敬する人、あるいは自分がやりたいと思っていることに携わっている人の本を見つけたら、ぜひ読んでみてほしいという思いでこの本を準備してきました。
 
すざき:大事な部分は太字とマーカーで強調されているんだ!?読みやすそうだね!
 
もりなが:そうなんです!これなら私も、気軽に読んで学べる気がして(笑)。実際に読んでみると、佐久間さん自身が若手社員だったころの経験談や仕事の仕方が分かりやすくまとめられていて、数々の人気番組を作り上げた有名プロデューサーにも、思い通りにいかなくてつらい時期があったということを知れました。リアルな経験をもとに書かれているので、新入社員や若手社員にはなるほど!と思える発見が多いのではないかと思います。

もりなが:最近は、仕事で心が疲弊してしまい転職をするという若い世代が多い印象です。自分が選んだ仕事を楽しむために心の健康は大事ですから、ぜひ第6章の「『メンタル』第一、『仕事』は第二」を読んでみてほしいです。「心を壊してまでやるべき仕事なんてどこにもない。」「『真剣』にはなっても、『深刻』になってはいけない」など、頑張りすぎた心がすっと軽くなるような考え方が詰まっていますよ。
 
ただ、反対に第3章の「『ちょっと無理』する」も読んでほしい内容で。「できることだけ繰り返しても、意外な能力に気づくことはできない」から、若いうちに少し難しそうな仕事や未経験のものにどんどんチャレンジすべきだと佐久間さんが言っているんです。
 
ありま:マーカー部分の「僕も20代のときは、『声をかけられたらなんでもやる』と決めていた」って、すごいですね。
 
ほった:なるほどなぁ、そういう人って強いよね。すごく実用的な本だ。
 
もりなが:もう少し頑張るか、少し休むかのバランスって難しいですけど、自分の成長につながる「無理」もあると学べました。あと、第2章の人間関係編には「『コント:嫌いな人』でバトルを避ける」なんて面白い仕事術もありますよ。
 
例えばどうしても苦手な人と対面したときに、心の中で「コント:嫌いな人」と唱えてから接する。すると、自分と相手を客観的に見ることができてその場を面白がることができる。カッとなったり傷ついたりして感情が乱れる回数は減っていくのだとか。ぜひやってみてください(笑)。

今回の学びと特に気になる一冊は…

「入社3年」というキーワードをもとに、新人に読んでほしい推し本をご紹介いただいた今回の座談会。
 
今回私が特に気になった一冊は、『雑誌づくりの決定的瞬間 堀内誠一の仕事』です。
 
ラフ、写植、Q数…実は最近知った業界用語。
版下に限っては「なんぞや…?」と初耳だったのですが、きとうさんが語る今とは異なる編集スタイルに興味津々で身を乗り出す先輩方を見て、「これがプロの食いつき方!」とワクワクしてしまいました。
 
憧れと夢を持つ。他者から生き方や考え方を学び参考にする。知らなかった世界を知る。これらがすべて読書でできてしまうってすばらしいですよね!
 
編集に興味がある方、入社3年以内の新人・若手社員の方、気になる本はありましたか?
エディマート社員の推し本、ぜひ読んでみてくださいね!!

取材・執筆:有馬虹奈

写真:スタジオアッシュ(太田昌宏)

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