マガジンのカバー画像

ヤマト2199の「中」の話

30
「宇宙戦艦ヤマト2199」の『note』です。制作中の裏ばなしや、メイキングの話をお届けしています。全文無料です。
運営しているクリエイター

記事一覧

第1回:はじめてのコスモゼロ、赤と銀のその輝きの秘密

第1回:はじめてのコスモゼロ、赤と銀のその輝きの秘密

「宇宙戦艦ヤマト2199」第1話の後半、古代進と島大介は、最新鋭の零式52型空間艦上戦闘機、通称『コスモゼロ』を、地下都市の格納庫で、初めて目にします。機能的で美しいパネルライン、「警告」の文字の記された表示板、「00」の識別ナンバー。赤と銀の機体に刻まれたメカニカルなディティールの数々が、ふたりの男の子の心を駆り立てます。

古代たちを画面の右手に、存在感たっぷりにたたずむこのコスモゼロは、絵

もっとみる
第26回:完全新作劇場映画「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」、明日公開です。

第26回:完全新作劇場映画「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」、明日公開です。

明日12月6日から、完全新作劇場映画「宇宙戦艦ヤマト2199星巡る方舟」の全国ロードショーがはじまります。TVシリーズに引き続き、こちらの作品のメカニック作画のお手伝いをしております。よろしくお願いいたします。

映画冒頭には、地球の宇宙戦艦キリシマが登場します。TVシリーズの序盤、冥王星沖会戦等で、あざやかな赤を宇宙空間に刻んでいた大型艦です。映画冒頭、その艦橋周辺のようすがうつるカットは、3

もっとみる
「中」の話の、とりあえずの「あとがき」

「中」の話の、とりあえずの「あとがき」



『ヤマト2199の「中」の話』第25回をお届けします。TVシリーズ「宇宙戦艦ヤマト2199」についての話はここまでとなります。つたない話にお付き合いいただき、ありがとうございました。なんならもう一度TVシリーズを観てみようかな、なんて思っていただけたなら、幸いです。

いわゆる「ネタ」はまだあるのですが、それらはキチンと確認のとれていない、推論レベルのことであったり、ただの解説以上には話が広が

もっとみる
第25回:沖田が最後に語った言葉と、届けられた想い

第25回:沖田が最後に語った言葉と、届けられた想い

「宇宙戦艦ヤマト2199」第26話で、沖田は艦長室から地球を見上げます。深々と椅子に身を預ける彼の手には写真があります。沖田と彼の家族との写真です。その写真に何を想うのか、彼の心が言葉になることはありません。

艦長室の窓には、写真を手にした沖田の姿が映り込んでいます。後ろには、左側に出入り口、右側に収納式ベッドと、間取りとは逆の室内風景が見えています。通常の風景をコンピューター上の何か特殊なソ

もっとみる
第24回:デウスーラⅡ世の青いツノと、彼が銃をとる理由

第24回:デウスーラⅡ世の青いツノと、彼が銃をとる理由

「宇宙戦艦ヤマト2199」第25話で、デスラーはタランに銃口を向けます。今あえて関わる必要のなかったはずのヤマトに干渉した末の行動でした。その顔には、総統として君臨していた頃には考えられなかった種類の表情が浮かんでいました。

黄金の銃口越しにデスラーをとらえたこのカットの絵は、第七章としてイベント上映されたものとその後のバージョンでは、別のものになっています。構図はほぼ同じなか、デスラーの口元

もっとみる
第23回:「第七章」の、終わりなき戦い

第23回:「第七章」の、終わりなき戦い

「宇宙戦艦ヤマト2199」第25話では、ヤマトの機関室で、徳川たちがガミロイドと戦います。ドアを盾にしてはいるものの、周囲の壁には弾痕が次々と刻まれてゆきます。圧倒的に不利な、いつ果てるとも知れない戦いでした。

銃声とともに、ひとつずつ増えてゆく弾痕は、ドアのおおきさに合わせた別の素材がつくられています。ひとつずつ別々の素材、ではなく、何もない空間に、ボコボコにあいた穴が大量に描かれた一枚の、

もっとみる
第22回:古代が進む、闇の波間の静かな光

第22回:古代が進む、闇の波間の静かな光

「宇宙戦艦ヤマト2199」第23話で、古代はその身ひとつで宇宙空間を進みます。行く手では、大小さまざまな破片が、漆黒の空間を淋しげな色に染めています。ほんのすこし前まで、第二バレラスと呼ばれていた建造物の成れの果ての姿です。

ゆったりと空間を漂う破片はCGではなく、「背景美術」として仕上げられた絵です。その下描きはカメラから近いものから、遠いものまで、何枚かの紙に分けて描かれ、それぞれが別素材

もっとみる
第21回:まだ誰も知らなかった「ヤマト2199」の「正解」

第21回:まだ誰も知らなかった「ヤマト2199」の「正解」

「宇宙戦艦ヤマト2199」の物語は、一隻の宇宙戦艦の姿とともに、はじまります。どこか青味がかった宇宙を、矢のように進む白と黄の艦。艦体側面には「ゆきかぜ」の文字。戦いの嵐の吹き荒れる直前の、静かな幕開けでした。

「ゆきかぜ」の文字をおおきく映すユキカゼは、チーフメカニカルディレクターの西井正典さんが「原画」を描いています。光線砲の砲台の根元のあたりには、滑り止めのために施された凹凸が、ひとつひ

もっとみる
第20回:歩みを停めたコバンザメと、渇いた大地の風の色

第20回:歩みを停めたコバンザメと、渇いた大地の風の色

「宇宙戦艦ヤマト2199」第21話で、フラーケンとハイニは、次元潜航艦UX-01の甲板で、ガミラス社会の現状について、話をします。二人の前には、収容所惑星の渇いた大地が広がっています。社会の闇から闇を、自由に渡り歩く彼らでさえ、皮肉めいた口調にならざるを得ない光景が、そこにありました。

フラーケンをはじめとしたクルーと森雪、ノランらが並んで立つ艦は、3DCGではなく、人物とおなじ質感の絵で描か

もっとみる
第19回:虚空に踊る赤い泡と、彼女と彼女が目覚めるとき

第19回:虚空に踊る赤い泡と、彼女と彼女が目覚めるとき

「宇宙戦艦ヤマト2199」第20話で、岬百合亜は艦内の通路に倒れる星名を見つけます。彼のまわりには、赤い、シャボン玉のような球体が浮かんでいます。星名の血でした。慣性制御が切れ、無重力状態になった艦内で、彼の身体から、命を運ぶ赤い液体があふれ出していました。

艦内の通路で、彼女が彼を見つけ、ふわりと倒れるまでの場面の「原画」は、アニメーターの馬越嘉彦さんが担当されています。完成映像では、鼻筋の

もっとみる
第18回:七色の前夜、「M」のかたちで彼は微笑む

第18回:七色の前夜、「M」のかたちで彼は微笑む

「宇宙戦艦ヤマト2199」第19話の終盤、ドメル幕僚団のゲットーは、バルグレイ艦長に見送られ、戦場へと向かいます。バルグレイの顔には厚い忠誠の心が浮かび、手は指の先まで力強い敬礼のかたちをとっています。彼の誠実な姿はそのまま、その誠意の向かう先であるゲットーの、人としての大きさを伝えていました。口元はいつだって「M」の字、第13話では爪を磨きながらゲールをあしらっていた男の、これまで描かれることの

もっとみる
第17回:炎上するモミアゲと、世界のかたちを決めるもの

第17回:炎上するモミアゲと、世界のかたちを決めるもの

「宇宙戦艦ヤマト2199」第18話で、ゲールはゼーリックの大演説を目撃します。おおきな手はエネルギッシュに動き、目からは涙が滝のように流れ、口からはアベルト・デスラーを悼む言葉がエモーショナルにつむぎだされてます。独特な節回しのついた声が、音声のみ、あるいはモミアゲを震わせる姿の映像つきで、バラン鎮守府につどう艦隊のあいだを広がってゆきます。

どこかの艦の格納庫では、名もなき兵士たちもその声を

もっとみる
第16回:あの日のユキカゼの真実と、伝えられなかったその言葉

第16回:あの日のユキカゼの真実と、伝えられなかったその言葉

「宇宙戦艦ヤマト2199」第17話では、真田志郎と古代守が、話をします。ヤマトが地球を飛び立つずっと前、守が冥王星へと出撃する直前のことでした。艦長として座乗するユキカゼの前で、けっして絶望しない気持ちを、守は親友に告げます。その決意を否定も肯定もしないまま、真田は中原中也の詩集をポケットから取り出します。

ふたりの背後に映りこんでいるユキカゼの着陸脚は、まるで写真のようにリアルな金属の質感を

もっとみる
第15回:「ビーメラ星」で開花する、彼と彼女の意外な側面

第15回:「ビーメラ星」で開花する、彼と彼女の意外な側面

「宇宙戦艦ヤマト2199」第16話では、地球に近い環境の惑星・ビーメラ4へ、コスモシーガルが調査に向かいます。操縦席には古代、平田主計長、岬百合亜、それからAU09ことアナライザー。古代は、いつもよりどこか元気のない岬百合亜のことを気遣っています。このあいだ100式のなかで、同じ船務科の女子と会話していたときとはずいぶんちがう、紳士的な古代です。

コスモシーガルの操縦席は、線のなかがパッキリと

もっとみる