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第15回:「ビーメラ星」で開花する、彼と彼女の意外な側面

 「宇宙戦艦ヤマト2199」第16話では、地球に近い環境の惑星・ビーメラ4へ、コスモシーガルが調査に向かいます。操縦席には古代、平田主計長、岬百合亜、それからAU09ことアナライザー。古代は、いつもよりどこか元気のない岬百合亜のことを気遣っています。このあいだ100式のなかで、同じ船務科の女子と会話していたときとはずいぶんちがう、紳士的な古代です。

コスモシーガルの操縦席は、線のなかがパッキリと色で塗り分けされた、古代たちと同じような質感の絵で描かれています。3DCGの外観とは風合いの異なったスタイルは、メカニック表現を追及した結果、というよりは、どちらかというと、制作途上、いかんともしがたい必要にかられて、結果的に生まれたものでした。 

「宇宙戦艦ヤマト2199」の戦艦や戦闘機の大半は、3DCGでつくられ、手描きでは難しい動き、アングルでの映像表現を可能にしています。いわば特撮映画のミニチュアや美術セットのような感覚で、3DCGは使われています。実在感たっぷりに画面にうつっているメカニックですが、映像にはうつらない部分、裏の面は、映画のセットがそうであるように、基本的には空洞で、何もありません。コスモシーガルもコスモゼロもコスモファルコンも、3DCGの濃い色の窓ガラスの向こう側は、空っぽなのです。 

それでも物語のなかでは、操縦席には人が乗っているし、窓の外側から操縦席の中を透かして見るという映像が必要になる場合もあります。ないものは描くしかない。ということから、操縦席まわりはすべてが絵で描かれることになりました。ちなみにTVシリーズのあいだは、ファルコンもゼロも、コンソール類にはCGのガイドのようなものはなく、その場面の担当者が、手描きで一から絵をつくっていました。 

第16話で、発進するコスモシーガルを正面からうつした場面では、窓の外側から操縦席のようすが見えます。この場面のシーガルは、翼のあたりから後部座席くらいまでが3DCG、操縦席の奥の壁から先はすべて絵で描かれています。古代と平田の前に広がる機首も、パッと見は3DCGのようですが、絵です。もともとは操縦席と同じ、パキッとした質感の絵なのですが、ブラシなどでCGの部分との違和感がないように、こまやかに加工されています。 

正面からのコスモシーガルがカッコいいこの画面、じつは側面からみると、空が描かれた絵の板があり、その手前の空間にヤマトと、機首がスコンと抜け落ちたところに、ペタペタと何枚か絵が貼られたシーガルが浮かんでいる、という状態だったりもします。なんならヤマトとシーガルにはピアノ線がついているぐらいの、そんな側面を秘めつつ、いくつもの異なる質感が同居した、風合い豊かな画面はつくられています。 

古代はビーメラ4で、ヤマトクルーたちの意外な側面を目撃することになります。特殊機動外骨格と一つになったアナライザーは、いつになく「男前」に大活躍。ふだんは紅茶を愛するような人物である平田主計長は、その姿に男の子ごころを熱く燃やしちゃっています。岬百合亜は、コスモシーガルの機内とはまたちがう、別人のような雰囲気をまとっています。そして冒険の果て、彼は、いままでケンカ友だちのような会話ばかりだった、もうひとりの船務科の「彼女」の意外な、女性らしい一面と出逢うことになるのです。

第16回:あの日のユキカゼの真実と、伝えられなかったその言葉

 ■枝松聖(えだまつきお)■
1977年(昭和52年)生まれ。 
血液型A型。東京都出身。
多摩美術大学造形表現学部卒業。 
05年、「ふしぎ星の★ふたご姫」の
各話美術設定で、初めてアニメ
の制作に参加。「ブレイクブレ
イド」(10年)「マギ シンド
バッド の冒険」(14年)ほか
アニメ、 ゲームの設定デザインなどを
担当、 現在フリーランスで活動中。
「宇宙戦艦ヤマト2199」には 
「レイアウト協力」「デザイン協力」
のクレジットで参加しています。

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