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株式投資で危険な「5つのリスク」を回避する戦略と考え方を解説

株式投資はリターンをもたらす可能性がありますがリスクも伴います。「株なんてやらなきゃよかった」と後悔しないためにも、株式投資におけるリスクの種類とその対策を理解し、適切な戦略を立てることが重要です。そこで本稿では、株式投資におけるリスクとその回避方法について詳しく解説します。

まず、株式投資の基本である「価格変動リスク」を始めとする「5つの主要リスク」について説明し、それぞれのリスクが投資にどのように影響を与えるのかを見ていきます。次に、これらのリスクを効果的に管理し、最小限に抑えるための具体的な戦略として「分散投資」や「ポートフォリオのリバランシング」などを紹介します。

株式投資におけるリスクとは何か

リスクとは「危険」を意味する英語ですが、投資の世界では「予想できないこと」(不確実性)を意味する言葉として使われるのが一般的です。

特に株式投資においては「価格の振れ幅」が不確実性の指標とされ、「価格変動リスク」とも呼ばれます。下落した場合、振れ幅が小さければ少ない損失で済む可能性が高いですが、振れ幅が大きいと損失が拡大し、資産形成に大きな影響を与えてしまう可能性があります。

価格変動は市場の需給バランスや政治経済、業界動向などさまざまな外部要因によって起こり、その振れ幅が小さいほどローリスク・ローリターンで、大きいほどハイリスク・ハイリターンの商品となります。

基本的に振れ幅の上下は均等であり、ローリスク・ハイリターンの商品はありません(ローリスク・ハイリターンに近づけるための高度な投資戦略・手法は存在します)。

危険度の高い金融商品とは

ハイリスク・ハイリターンであるほど危険度の高い金融商品となりますが、危険度は損失が投資した資金を超えるか、超えないかで大きく異なります。

例えば投資家が株式を購入し所有する「現物取引」では、株価がゼロになった場合、投資した資金がゼロになってしまいます。しかし、投資した資金以上の損失を被ることはありませんので最悪の事態(投資した資金がゼロになること)は事前に想定することができます。

一方、レバレッジ(てこの原理)を利用して投資した資金以上の額の取り引きを行う「信用取引」では、損失が投資した資金を超える可能性があります。特に、空売り(株価の下落を予想して行う取り引き)の場合、損失は無限大になる可能性があります。

株の空売りだけでなく、「外国為替取引(FX)」や「先物取引」なども想定以上の損失になる可能性があります。投資家は価格変動リスクを理解し、許容できる振れ幅の商品に投資を行うことが重要です。

株式投資における「5つのリスク」

投資家にとって最大のリスクとなる「価格変動」はさまざまな要因によって引き起こされます。その要因となる代表的なリスクとして、以下の5つが挙げられます。

  1. 信用リスク(倒産リスク)

  2. 流動性リスク

  3. 金利変動リスク

  4. 為替変動リスク

  5. カントリーリスク

1. 信用リスク(倒産リスク)

株式投資における信用リスクとは、投資対象となる企業が金融上の義務を履行できなくなるビジネスリスクを指します。具体的には、「利息の支払い」「元本の返済」「契約上の約束を守る能力」などが挙げられます。

それらに問題が起き、企業の信用力が低下すると事業継続に支障をきたして最悪の場合は倒産する可能性があります。特にスタートアップ企業はすべての能力が発展途上であり、市場の変化や経営判断の誤りで急速に資金繰りが悪化する可能性があります。

2. 流動性リスク

流動性リスクとは、投資した資産を望む時に、望む価格で、迅速に売買することができないリスクを指します。株の売買は売り手と買い手の双方がいて成立しますので、どちらかに偏った状態では取り引きが行えません。不祥事や経営悪化の報道があると多くの人が売りに殺到するため、売りたいのに買い手がつかず売れない状況になってしまいます。

例えば非上場のスタートアップ企業の株式は、自由に売買することが極めて難しいうえに保有期間が数年から10年前後になる流動性が極めて乏しい金融商品です。基本的にイグジット(IPOやM&A)するか、清算して価値がほぼゼロになるまで保有し続けなければいけません。

ポートフォリオが流動性の低い資産に偏っていると、急に資金が必要になった際に「資産はあるのに現金がない」という状態になってしまいます。投資家は流動性のバランスに気を配り、生活に支障をきたさないポートフォリオを作ることが重要です。

3. 金利変動リスク

株式市場において金利の上昇は企業の借入コストを増加させ、利益を圧迫して株価に悪影響を与える可能性があります。一方で、金利が低下すると企業の借入コストは減少し、経済活動が刺激されるため株価が上昇する可能性があります。

投資家は日銀の方針やインフレ率、経済成長率などの指標から、金利動向に応じた投資戦略を考えなければいけません。

4. 為替変動リスク

グローバルに分散投資する場合や外国の企業に直接投資する場合、政治や経済、自然災害など多岐にわたる要因によって通貨価値が変動し、投資のリターンに影響を与える可能性があります。

あらかじめ為替レートを決めて取り引きを行う「為替ヘッジ」を利用することで為替変動の影響を抑えることが可能です。しかし、為替ヘッジにはコストがかかり、リスクがゼロになるわけではありません。

5. カントリーリスク

カントリーリスクとは、投資した国の政治的、経済的、社会的状況の変化により投資に損失が生じる可能性のリスクを指します。直接その国に投資している場合だけでなく、その国と経済的なつながりを持つ企業にも影響を及ぼすことがある点に注意が必要です。

例えば、ある国で戦争が起きた場合、その国からの燃料や原材料の供給が停止または遅延することで国内企業の生産活動に重大な影響を与える場合があります。

株式投資リスクを回避するための戦略

リスクを完全に避けることはほぼ不可能であるため、投資を始める前にはリスクを正確に理解し、自身のリスク許容度から外れていないかを確認することが重要です。リスクに対して適切な備えをするためには、以下のような投資戦略が有効です。

分散投資によるリスク管理

株式投資におけるリスク管理として「卵は一つのかごに盛るな」という格言が有名です。すべての資金を一つの銘柄や同じ種類の金融商品に投資するのではなく、いろいろな視点で分散することによって、特定の市場や銘柄の下落が全体のポートフォリオに与える影響を抑えられます。

主な分散方法としては、以下の3つが挙げられます。

1. 資産分散

株式や債券、不動産など異なる資産に分散して投資します。それらは異なる市場が形成され、各々が異なる要因で変動するため、一部の資産価値の変動をほかの資産価値の変動がカバーする可能性があります。

2. 地域分散

投資先を異なる国や地域に分散することで、特定の国や地域の経済的、政治的リスクによる悪影響が全体に及ぶのを抑えることができます。

3. 時間分散

一定期間にわたり定額を定期的に投資する方法として「ドルコスト平均法」が有名です。市場が上昇しているときは少ない株式を購入し、市場が下落しているときは多くの株式を購入することになり、長期的には平均購入コストを平準化させる効果があります。

一括で購入を行う場合、底値での購入が最も理想的です。そのためには購入のタイミングを見極める必要があります。しかしドルコスト平均法の場合は、底値での購入開始が最も運用成績が良くなるわけではありません。一括で購入する場合と比べて購入のタイミングを判断する必要がないという利点があります。

定期的なポートフォリオの見直し

市場の状況は常に変化しています。定期的にポートフォリオを見直し、偏りが起きてアンバランスになっていないかを確認することが重要です。必要に応じて過剰になった資産を売却し、不足している資産を購入する「リバランシング」を行い、理想と考える資産配分を維持します。

継続的な情報収集

長期投資であったとしても、市場の動向や投資先企業の業績は定期的に監視する必要があります。特に投資している企業が直面している業界のトレンド、財務状況、経営の決定など、将来の価値に影響を与える可能性のある要因を注意深く観察することが大切です。例えば投資した企業の急激な業績悪化に気づかず、損切りできずに大きな損失を被るケースが考えられます。

生活防衛資金を確保し、余裕資金で行う

投資金額は自身の収入、貯蓄、家計の状況に基づいて慎重に決定しましょう。特に日常生活で起こる急な出費に備えて生活防衛資金を確保することが重要です。少なくとも毎月かかっている生活費の半年分は絶対に手を付けない資金として確保しておくことで、もしもの事態が起きても乗り切ることができます。

生活防衛資金を確保したとしても、それ以外をすべて投資に回してしまうと長期的な資産形成に支障をきたす可能性があります。特に価格変動リスクの高い商品へ投資する場合は、損失が生じても生活に直接的な影響を与えない範囲の「余裕資金」で投資をすることが重要です。

まとめ

株式投資にはリスクが付きものですが、適切な戦略と心構えにより、リスクを管理し、賢明な投資を行うことが可能です。

分散投資によるリスクの分散、定期的なポートフォリオのリバランシング、長期投資の姿勢の維持、適切なリスク許容度の設定、そして継続的な情報収集は、株式投資におけるリスク管理の基本です。

さらに、生活防衛資金の確保と余裕資金での投資は、不測の事態に対する備えとして非常に重要です。これらの戦略を実践することで、株式投資のリスクを適切に管理し、長期的な資産形成を目指すことができます。

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