見出し画像

小規模書店の生きる道

Amazonでほとんどの本が手軽に買える現在、実店舗の魅力は「意図しなかった偶然の出会い」である。本屋をぶらぶらして、自分の中の検索ワードに引っかからない本に出会うことが最大の付加価値だ。

ただし、良いと思った本も電子書籍で売っていたら書店内でAmazonでポチる。紙の本でしか売っていなければ店舗で買う。

電子書籍はスペースを取らないし瞬時に手に入る。容赦のないタイムセールも行われるので価格も安くなる。紙の質感によほどのこだわりがなければ現物の本は勝ち目がない。

そういう意味では、紙の本でしか売らない出版社は実店舗にお金を落としてもらいたいという書店応援の気持ちがあるのかもしれない。

新刊における偶然の出会いにおいては、大型書店の方が圧倒的に有利である。単純に置いてある本の冊数が多いので、思わぬ発見が得やすい。

では、中小零細の本屋はどうやって生き残るか。一つの道は「絶版になったが一部のコアなファンがいる良質な本を仕入れる」である。

本好きにとって「一般に流通していない面白い本に出会う喜び」は何ものにも変え難い。

例を挙げると、私は「昭和の名文家」というテーマで一時期本を読み漁っていたことがある。

当時の文筆家は影響力が強く待遇もよかったため、その時代のトップレベルの知性が集まっていた。

その中でもさらに頭一つ抜けて文章が上手い人間は業界の中でも名を知られる人間となっていた。読んでみるとその文才に圧倒されるのだが、こういった人たちの本はとっくの昔に絶版となっている。

こういった名文家たちの本をセットで紹介すれば、一連のストーリーとして人々の需要を喚起することにつながる。

単発の面白い本の紹介から脱却し、一連のストーリーを編みながら複数の本を位置付けることで価値を生むのである。

売れ行きが好調ならばもしかすると出版元が復活させてくれるかもしれない。音楽の世界では昔流行った曲が一周回って流行る現象が起きているが、本の業界だってそれが起きてもいいはずだ。

本の世界における"The First Take"のような、新しい魅力を引き出す存在が出てきてもいいのではないだろうか。

こないだ古本屋の聖地である神保町に行ってきたが、正直あまり魅力を感じなかった。ただ単に古い本が積み上がっているだけで、棚の並びにこだわりを感じないのである。

「このジャンルなら品揃えはバッチリです」という特色を打ち出さないと消費者は食いついてこない。

特定のジャンルで買い手の心を掴み通って貰えば、将来的にこだわりの隠れた良書を売ってもらうこともできるかもしれない。

店主の目利きや営業活動に時間的限界があるなら、顧客のフィルターも活用する方策を考えるべきだ。

書店は10年間で3割減ったらしい。お店にきてAmazonで買うサイクルがあるから自然な流れではある。

キュレーション機能を担う小規模書店と、偶然の出会いを提供する大型書店の違いはこれからどんどん際立ってゆくだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?