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保険契約の更新にまつわる問題を掘り下げる

火災保険を小刻みに更新する理由

毎年、家の火災保険の更新手続きをしている。損保会社から来る更新書類には「5年契約での更新がオススメですよ」と毎回付箋が貼られているのだが、あえて私は1年更新をしているのだ。

5年契約の方が1年契約よりも毎月の保険料は安くなるのだが、代わりに中途解約をすると経過期間に応じて解約返戻金が目減りするリスクを負うことになる。

毎年の更新手続きは面倒だし、目先の保険料が安くなることは魅力的だが、全国転勤ありの仕事なので、5年間のうちに異動を言い渡されることをリスクにはしたくないのだ。

加入時の保険期間をどれぐらいの長さにするかは深淵かつ難しいテーマである。

10年更新の契約にすると、更新後の保険料はざっくり倍ぐらいになる。保険料が途中で変わってほしくないという心理から、60歳ぐらいまで保険料が変わらない全期型を選ぶ人もいる。

保険料が変わらないので家計簿の計算しやすく、トータルの支払額も少なくなるが、途中のライフスタイルの変化には弱くなる。

最近の保険業界のトレンドは保証期間の短期化

どっちが良いのかは一概に言えないが、最近の保険業界のトレンドを見ると、保険期間はどんどん短くなる傾向のようだ。

合理的な保険設計を追い求める世の中の流れを反映しているといえるだろう。

新型コロナの流行から収入が減ったり、廃業するなど、大きく生活が変わった人もいるだろう。こういったとき、更新を期に改めて保障プランを見直せる柔軟性は良い点である。

一方で、更新を小刻みにすると保険料が徐々に上がっていく。それに、更新するかの意思表示を頻繁に求められれば、人間心理としては契約の離脱可能性も上がるだろう。

生命保険は家電製品などと違って売って終わりの商品ではない。販売した後に利益が出ないとみなされれば売り止め(新規契約の受付停止)になりかねないのである。

あまり目立たないが、保有として少数残り続けている商品は事務の維持保守コストがバカにならない。

合理性を徹底的に追求した保険設計は今後も進むだろうが、損益分岐点をうまく捉えられるかどうかが会社としての勝負どころだ。

保険料とリスクの対応関係について

生命保険契約は継続していれば病気になっても同額の保障で更新することはできるが、一度離脱してしまったら再加入には審査が必要になって加入お断りの可能性が出てくる。

保険料には「保険期間中に支払事由に該当するリスク」があらかじめ組み込まれているので、保険料を納めて契約を継続している限り、途中で病気になってから更新したとしても保険会社が抱えるリスク量には変化がない。

ところが、解約などしてお金を精算した後だと、その後の新規加入は「保険会社が受け入れる新たなリスク」とみなされるのだ。

契約を下取りに出して別の保障に加入する「転換」でも同じような考え方が適用される。もともとの保険料にあらかじめ組み込まれているリスク範囲内であれば、「転換前契約に相当する部分の保険金は支払います」といった救済措置がとられる場合もある。

保険におけるこのような「受益と負担」の対応関係は多種多様で複雑だが、加入者救済のためには必要なものだ。

生命保険の根幹である相互扶助の思想はこんなところにも息づいているのである。

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