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支払われた保険金は何に使われるのか

保険金を支払って保障が消滅すると、保険会社と加入者の関係性は切れる。そのため、支払われた保険金の使い道は現場の人間でないと分からない場合がほとんどだ。

今回は私が営業現場で見聞きした範囲で、保険金の使い道について書いてみよう。

使い道1:葬儀代

葬儀を開くと大体50万円ほどの料金を請求される。冠婚葬祭は一生のうちで何度も経験するものではないので、相場観も持ちづらく、突然大金が必要になってビックリする人も多い。

亡くなった方名義の預貯金は凍結されて手続きを踏まないと引き出せず、一家の大黒柱が亡くなった場合だと支払いが保険金頼みの人もいる。保険会社が心の底から感謝される場面の一つである。

保険金は受取人固有の権利なので相続争いの範囲外にあるため、これは生命保険でないと果たせない役割だ。

こないだ父親と話していると「人間は自分が死んだ時に何かを残したいという願望がある。人の感情面も考慮に入れないと保険のニーズを捉えることはできないだろうな」という話が出た。

お金には色がついていないというが、保険は不思議なことに「想いを乗せる」ことができる金融商品のようだ。

使い道2:会社の運転資金

法人契約で経営者が亡くなると、社長の存在を見込んでお金を貸していた銀行は態度を硬化させる。

借入金の一括返済を迫られた時に頼りになるのも保険である。ただし、法人に入る死亡保険金には法人税が先に課されるので、税金を差し引かれた上で返済できる保障金額にしておかないといけない。

一社が潰れると他の取引先にも影響が及ぶ。この場合、保険金支払は会社や取引先企業の命運を左右しかねない。

仮に会社を畳むとしても、事業の撤退にはお金がかかる。取引先に迷惑をかけずにキチンと手仕舞うことを、保険は手伝うことができるのだ。

使い道3:治療費

病気や怪我の治療費を賄うことで、間接的に貯蓄を守ることができる。高額な治療を行いたい場合には保険金の支払有無により選択肢が変わるため、ヘタをすると命に関わる。

やはり生活に余裕のない層ほどこんな時に保険のありがたみを痛切に感じるようで、手続のために現れた初対面の私でさえ何度もお礼を言われた。

なお、保険金の支払いがあるということは不幸があったということなので、直後はなかなか手続をする気持ちになれず、間が空くことがほとんどだ。

手続きをする際にもやはり気落ちしている場合が多く、そんな時に相手を気遣った言葉をかけることは非常に大きな意味がある。

「〇〇さんはお子さんたちが進学に不自由しないようにと想って保障を継続していたんだと思いますよ」

死人に口なしのため確かめようがないのだが、保険金を受け取った人が少しでも前向きになれるように、声をかける。

この役割だけはAIが代替する未来を想像できない。「向こう側に人間がいて優しい言葉をかけてくれる」という、極めて感情的な部分が受け止め方を左右するからだ。

以上、私が経験した「保険金支払いが感謝される場面トップ3」を書いてみた。

なお、意外なことに受け取った保険金の使い道がすぐにない人もそれなりにいる。

加入時は給料が少なかったがその後昇進を重ねて生活に余裕ができた場合や、社会保障のお陰で出費が抑えられた場合はこういうことが起きる。

結果論なところもあるのだが、こういう時に社会保障と生命保険の繋がりを肌で実感する。

生命保険は、お金のやりとりにとどまらず、医療や税金、人間の様々な感情まで絡む実に不思議な金融商品である。だからこそ奥深くて探究しがいがあるのだが。

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