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人との出会い、本との出会いが人生を広げる 岡田有利子

こんにちは!note更新担当のたぬ子です。

当財団が毎年刊行している、機関誌『文化愛媛』。
毎号、様々な方に文化にまつわるお話を、執筆いただいています。
そんな中、「原稿内に収まりきらなかった、想いがあるのではないか!」と思い、最新刊第85号の執筆者インタビューを始めることにしました。

第4弾は、コンテンポラリー・えひめ『「本」と「人」が出会う場所』を執筆されました、いよ本プロジェクト代表の岡田有利子おかだゆりこさんです。

本と人が出会う場所をつくりたい

写真提供:岡田有利子

― いよ本プロジェクトでは、普段どのような活動をされていますか。

 私設図書館ビブリオAAの開館と古本交換会、いよ本プロジェクト交流会(以下、交流会)を毎月行っています。
 そこに+αで講演会や、普段とは違う場所での古本交換会をしています。

― ビブリオAA、古本交換会、交流会は、それぞれどのようなきっかけで始められましたか。

 いよ本プロジェクトを始めたきっかけにもなるんですけど、まず交流会を始めました。2019年1月のことです。
 それまで伊予市の図書館で働いていたんですけど、退職したあとも本と人が出会う図書館の仕事が好きだったんですね。
 個人でもそういうことができないかなと考えた時に、月に1回でも本と人が出会う場所、時間をつくろう。
 そして、それを続けようと思ったのが、交流会の始まりです。

 2019年8月には、私設図書館ビブリオAAを始めました。

 古本交換会は、2020年3月から始めたんですけど、実はその前に古本“市”を2ヵ月に1回やってたんです。
 少しずつ本を持ち寄って、古本販売しようという企画だったんですけど、あんまり上手くいかなくて。
 「じゃあ、どうしよう」とみんなで考えた時に「古本“交換会”にしちゃえば、いいんじゃないのか」という話が出て、交換会を始めました。
 それから、月に1回手づくり交流市場『町家』で続けていて、最近では松山や大洲へ呼ばれることもあります。
 私設図書館ビブリオAAがある伊予市上野地区の公民館でも、定期的に古本交換会をやっていて、3回目がこの間終わったところです。

人と人をつなぐ本

写真提供:岡田有利子

― 著書の中で“「本」の説明と同時に「人」の紹介にもなり”とありますが、何故「本」を説明することが「人」の紹介になるのですか。

 本を紹介する時に、タイトルだけではなく理由まで伝えていただくので、「こういう面があるんだな」「こういうことに関心があるんだな」「こんな作家さんに興味があるんだな」と、紹介した人の中身を知ることができます。
 普段は、そういう内面の話を初めて会った人にしないじゃないですか(笑)
 仲良くなってから徐々に話すことを、本を通すことで、話す方も構えることなく、聴く方も「なんで、こんな話をいきなりするんだろう」と怪しがることもなく、ポンっと話すことができるんです。
 そういう不思議な力を持っているところも「本って、おもしろいな」と思いますね。

― 好きな本や作家さんを伝えるのは、少し照れますもんね。

 普段だと内面を見せるようで、ドキドキするんですけど。
 交流会のテーマという設定にすると、みなさん自然に紹介して、自然に聴いているんですよ。
 だから、日ごろなら接点が無いような人同士でも、本を通して「共感できるかも!話しかけてみようかな」ってことが、起きますね。

― 好きな本が同じだったり、同じような考えの方がいると、年齢や職業関係なく話したくなりますね。

 なりますよね。本当は、そっちの方が大事ですけどね。
 年齢とか職業とか、結婚しているとかしてないとか、そういった情報を省いた1対1の人間として惹かれるとか、話してみたいとか

読書の最終目的とは…

写真提供:岡田有利子

― “「本」によりそれらが輝き、互いに尊重されることが、私たちのもう一つの特徴です。”とありますが、他の特徴について教えていただけますか。

 みんなで黙々と読んでいるのではなくて、笑い声に溢れて、賑やかで温かいところですね。
 一風変わった趣味を持っている人もいるんですけど、キラキラした個性を互いに尊重していて、一人一人が活き活きしています。

 「この本読んでないの?」とか、比べられることも無いですし。
 交流会に持って来られる本の幅もすごく広くて、「自分は本を見るんだ」と、図録や画集を紹介される方もいます。

― 小説以外を紹介される方がいらっしゃるんですね。

 本って言っても、小説だけでは無いですからね。
 実用書もありますし、雑誌も、コミックも。どんな本を読んでいても読書だと思っています。

 交流会をしていると、本以外のいろんな付随物が出てくるんです(笑)
 “私のこだわり”というテーマの時は「燻製にハマっていて、この燻製本が大好きなんです」と言いながら、ポケットからフッと燻製パウダーを出される方もしますし。
 日本の家紋が好きな方は「引手を趣味で集めてるんです」って、引手のコレクションを出される方もいます。
 油断していると、いろんなものが出てくるんです(笑)
 でも、それがおもしろいんですよね。上品な、規則でガチっと縛られた会じゃなく、こういうゆるゆるとした”なんでもありの交流会”なのが、楽しいですね。

― 交流会に来られる方は「伝えたい」という気持ちが本気ですね。

 「私はこれが好きです」って言える場所は、あまりないですよね。
 だからこそ、みんなの”好き”が本によって表現できたら、それは本当に幸せなことだと思っています。

 私は、本を読んで好きなものに出会ったり、深めたり、人生を楽しいと思ったり、活き活きと生きていけるようになったり、読書で人生が広がることを知っているので、読書の最終目的は”本を読むこと”ではないと思っているんですよ。
 人によって、それが映画や舞台、美術いろいろありますが、”好き”を表現できるものがあるというのは大事なことだと思います。

― 「読書が好き」と言うと、難しそうな本を読んでいるイメージを持たれがちですが、ただ好きなだけなんですよね。

 こういう活動をしていると「たくさんの本を読んでいるんでしょ」と言われることが多いんですけど、あまり読めていないので、その状況を活かそうと思って、積読つんどく読書会をやったんです。
 家にある積読本(買ったけれど読んでいない本)を持って来て、なんでこの本を買ったのか、なぜ読めていないのかって紹介してもらったんですよ。
 そしたら、みんな読んでいないはずなのに、まるでその本を読み終わったかのような説明をされて、おもしろかったし。
 積読の理由を聞くと「私もあるある」と思って、すごくおもしろかったです。
 積読は積読で想いがあるな。それも読書だなと(笑)

人生を豊かに広げてくれる出会い

写真提供:岡田有利子

― 同じ本をそれぞれが読み、感想を言い合う読書会は行われていないのですか。

 最初から、一人一人が持ち寄った本を紹介する”紹介型読書会”をメインに活動したいと思っていたので、今やっている交流会の形がいよ本プロジェクトの軸なんですよ。

 自分だけで本を選んでると、どんどん偏ってきませんか?
 人生も一緒で、だんだん考え方や感じ方が決まってきがちなんですよね。そうなると、閉塞感で苦しくなってしまって。
 それを解決するのが人との出会い、本との出会いの2つだと思っています。
 人と出会って「こういう考え方もあるんだ、こういう感じ方もあるんだ」と、自分の考えや世界を広げてくれるし。
 読んだ本の一文に救われたり「昔の人も同じこと考えてたのか」と、ホッとしたり。
 どちらの出会いも人生を豊かに広げてくれますよね。

 最近、私が朗読した本の感想を言い合う読書会を始めたんですけど、他人の声で文章を聴くと何度も読んだ本でも新たな発見があったり、朗読ということで読書のハードルが下がるみたいで、新たな出会いが生まれそうです。 

本を介して人と出会う

写真提供:岡田有利子

― 文中は”出合い”、タイトルは”出会い”と、漢字が異なりますが何か理由があるのでしょうか。

 タイトルを“出会い”にしたのは、本も人に出会うようなものだなと思ったからですね。
 本ができあがるまでには、作家や編集者、デザイナー、表紙を描いた人など多くの方が関わっています。
 そういった方々の手が入っている以上、本の制作に関わった人の想いが、どこかしらには介在していますよね。
 本も人も自分の考えを広げてくれる存在という意味では、その想いも含めて新たに吸収しているので“出会い”だなと。

 不思議じゃないですか?
 アドラー心理学を読むと、実際にアドラーと話しているわけではないのに、彼の考えを「なるほど」と読んでるから「これはもう、人と話しているのと同じじゃないのかな」って思いますね。

読書のイメージを変えたい

写真提供:岡田有利子

― どのような方に『「本」と「人」が出会う場所』を読んで欲しいですか。

 「読書のハードルを下げたい」という想いが、すごくあります。
 こういう活動してると「難しいことをしているんでしょ?」とか「高尚なことしてるんですね」とか言われる方がいらっしゃって、私はそれが悲しいんです。
 読書のもつ“文学少女”“文学青年”のイメージや、図書館は静かに小説を読んでいるとか、そういうイメージを少しでも変えたくって。
 だから、本好きの人にも読んでほしいけど、本は静かに一人で読むものと思ってる方やお堅いと思っている人に、読んでいただいて「結構いい加減な交流会もあるんだ。読書って高尚なものじゃないじゃん」と、読書のきっかけになるといいですね。


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