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「スペインではトレーニングを3日間もサボっても得点したら評価されます」スペイン女子プロサッカー選手の先輩・後輩が女川で対戦≪6/4-10開催!ヨコハマ・フットボール映画祭2022≫

サッカーは、映画等のカルチャーを媒介にしながら、その土地の生活慣習と融合し、世界中の人々と不思議なご縁を結んでくれます。

みなさん、こんにちは。ヨコハマ・フットボール映画祭note公式マガジン第60回を担当します、石井和裕です。よろしくお願いします。WE Love 女子サッカーマガジンの主筆でもあります。

かつて監督をしていた、岡田武史さんは「練習で、グラウンドにコーンを並べてその周りを選手に走らせるとき、コーンの外側を回ることが自然ときっちりできるかどうかが勝負の明暗を分けると思う」と言いました。日本は「勝負の神様は細部に宿る」国だから、コーンの外を走ることが勝利に結びつくと考えられています。では、情熱の国と呼ばれるスペインでも、選手は同じようにコーンの外を走るのでしょうか。今回はそんなお話です。

早稲田大学ア式蹴球部の先輩・後輩がスペイン視点で語ります

今回のnoteでは2人のフットボーラーの対談をお届けします。1人目は後藤史さん。早稲田大学ア式蹴球部女子部監督です。プレーヤーとして早稲田大学ア式蹴球部女子部で活躍。2007年にジェフユナイテッド市原・千葉レディースに加入し活躍。2010年にスペイン女子サッカー1部リーグのラージョ・バジェカーノへ移籍。日本人として初のスペイン女子サッカーリーグのプロ契約選手となりました。どのようにプロ契約をしたのかを聞いてみれば「窓のないホテルに泊り、ファストフードを食べて生活しながら4日間くらい練習に参加したら『Fumi OK !』と言われました(笑)。生活できる年俸で契約しました。」と答えが返ってきました。前例がない環境で道を開いた先駆者でした。

2人目は千葉みのり選手。千葉選手は6シーズンをスペインでプレーするプロ選手。今シーズンは1部BリーグのC.D. Femarguín SPAR Gran Canariaでプレーしています。ホームタウンはカナリア諸島にあります。千葉選手も早稲田大学ア式蹴球部女子部出身。後藤監督の後輩にあたります。

千葉みのり選手(前列左)

欧州組集結チャリティマッチin女川で対戦

後藤監督と千葉選手が日本で対戦します。千葉選手の声がけにより欧州でプレーしている日本人女子サッカー選手がプロタゴニスタ(PROTAGONISTA スペイン語で主役・主人公という意味)という1日限りのチームを結成し、早稲田大学ア式蹴球部女子と対戦するのです。

第2回欧州組集結チャリティマッチin女川
プロタゴニスタ VS 早稲田大学ア式蹴球部女子
開催日:2022年6月19日(日)
会場:女川スタジアム 15時キックオフ

※ヨコハマ・フットボール映画祭2022では、2022年6月4日(土)と5日(日)に開催するフットボールエキスポでプロタゴニスタの展示をする予定です。

三陸で心を動かす試合をする

後藤--実行委員長の震災復興への想い、海外で活躍する選手への想いを強く感じて対戦が実現しました。海外へ行く勇気と行動力がなければ海外のリーグでプレーする夢は実現しません。そういう力を持った選手たちと試合をできる機会はこれから進路を選ぶ大学生にとって貴重な経験になると思います。

千葉--今回は、(スペイン移籍の先駆者の後藤さんと対戦する)すごいご縁だと思います。

後藤--海外には日本とは違う当たり前がありますね。シュートレンジが広かったり、強度、ボールを奪うタイミング……日本との違いを体感し成長につながると思います。それから、今の大学生は東日本大震災が起きた10年前は小学生です。今回、女川でチャリティーマッチをプレーすることで、何か、心を動かすことになれば試合の価値が生まれると思います。一所懸命に試合をしようと思います。

千葉--被災地に何かをしたい、でも何をしたら良いのだろう……と思う人は多いと思います。去年、石巻で試合をしたら、現地の人に『元気をもらった』『楽しかった』と言っていただきました。サッカーを一所懸命にプレーすることで人に元気を分けることができると初めて感じることができました。

後藤--私たちはプレーするだけではなく、東日本大震災遺構を訪問する予定です。女川の皆さんと交流する機会もいただいています。大学生である選手にとっては、学ぶこと、気づくことがたくさんあると思います。

プロセスに価値を置くか、結果を出すか

後藤--スペインはサッカー選手のスティタスが日本よりもはるかに高いです。タクシーに乗って「私はラージョ・バジェカーノ・フェメニーノでプレーしている」と言うと、運転手が「お前、ラージョ!」と反応が返ってきて、そこから、日本から来た観光客とは違った現地の会話をすることができました。サッカーで自分を認めてもらったり、助けてもらったりしてきました。サッカーがなければ生まれない会話がたくさんありました。

スペインでの生活は自分自身の考え方を知り、自分の思い込みを捨てるきっかけになりました。サッカーは結局、ゴールをどれだけ多く奪えるかを争うゲームですが、スペインに行くことで、自分は「努力の美学」というか、プロセスを頑張ることで評価されようとしていたことに気がつきました。例えば、日本ではフィジカルトレーニングを頑張ると評価されます。でも、スペインではそれだけでは1ミリも評価されなくて、極端に言うとトレーニングを3日間サボっても得点したらちゃんと評価されます(笑)。

千葉--勝つことが一番ですよね。

後藤--そう、シンプルですね。プロセス(練習)に価値を置き、頑張っている自分に安心するのではなく、結果に重きを置き、結果の為のプロセス(練習)しかしない。結果を出せるチームメイトと自分との違いがそこにあると気がつきました。

千葉--ウチのチームではウォーミングアップでチームに分かれて競走するときがあるのですが、必ず誰かがズルをします。誰一人ちゃんとやる人がいないときもあります(笑)。最初の頃、ちゃんとやりたい私には葛藤がありました。例えば、2チームに分かれてリレーで走るのですが、一人が隠れて参加人数を減らしてタイムを短縮して「勝った!」と喜んだりします。「それって嬉しいの?」と私は思うのですが、勝つことに命を賭けている感じです。いつも、ウォーミングアップは「あっちがズルした!」「それは違う!」と揉めて終わります(笑)。それに慣れるのには時間がかかりましたね。

後藤--めっちゃわかります。ペナルティエリア内で5人がボールを持っていて5人がボールを持っていない練習がありました。ボールを奪って最終的にボールを持っている選手が勝ちというルールです。私は一対一の勝負の練習だと思っていたのですが、始まるとみんなが私に襲いかかってきました(笑)。弱い選手から複数人でボールを奪った方が勝てるからです。サッカーは認知、判断、実行の繰り返しです。勝つための判断の基準が、私とは圧倒的に違うと感じました。スペインだと、勝負がかかったら絶対にコーンの外なんて走らないですよ。

千葉--うちのチームも誰もコーンの外を走ったりしません。

女川スタジアム
女川スタジアム

女川スタジアムでプレーするのが楽しみ

後藤--海外でプレーしている選手と真剣勝負をできることを楽しみにしています。そして、できたばかりの女川スタジアムでプレーさせていただくのも楽しみです。見てくださる人の力になることを信じて、面白い試合になるように頑張ります。

千葉--女川スタジアムでプレーするのが楽しみです。女川は素敵な街です。スタジアムにいらした方は街を見ていってほしいです。欧州各国でプレーするSNSでしかお互いを知らない選手が日本に集まってプレーします。皆さんに、楽しんでもらえるように準備を進めていきたいです。YouTube配信も行います。永里亜紗乃さんが解説してくださりますので、お越しになれない方はぜひご覧ください。

ヨコハマ・フットボール映画祭でお会いしましょう

ヨコハマ・フットボール映画祭 フットボールエキスポ プロタゴニスタ(PROTAGONISTA)の展示ブースでは、刺繍アーティスト兼カメラマンとしてJリーグのサポーター撮影(#Jサポ撮り)で活躍しているmihoさんとプロタゴニスタの共同展示会を開催します。
当日は、プロタゴニスタをモチーフにした刺繍のアートワークや、mihoさんが今まで作成した海外のサッカー選手の刺繍を展示予定です。また、6月19日に開催するプロタゴニスタ 2022のチケット販売も行われます。ぜひ、お越しください。
※記事の写真はプロタゴニスタ提供。

女川の街

ヨコハマ・フットボール映画祭 2022」は6/4(土)-5(日)にかなっくホール(東神奈川)、6/6(月)-10(金)シネマ・ジャック&ベティにて開催します。

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