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読書記録:ヴァンパイアハンターに優しいギャル (GA文庫) 著 倉田和算

【光があるからこそ、闇が際立つ、二つはなくてはならぬ物】


【あらすじ】
「私は元、ヴァンパイアハンターだ」 

「……マジ?」

どこにでもいるギャルの女子高生、琉花のクラスにヤベー奴が現れた。

銀髪銀眼、十字架のアクセサリーに黒の革手袋をした美少女・銀華。

その正体は、悪しき吸血鬼を追跡する狩人だった。

銀華の隠された秘密を琉花は偶然知ってしまうのだがーー。


「まさか、あんた……すっぴん!?」

「そうだが……?」

琉花の関心は銀華の美貌の方で!?

コスメにプリにカラオケに、時に眷属とバトったり。
最強JKには日常も非日常も関係ない。

だってーーあたしらダチだから!

光のギャルと闇の狩人が織り成す、普通のギャルが美少女ヴァンパイアハンターと出会う所から始まる、日常と時々バトルなコメディ。

あらすじ要約
登場人物紹介


光のギャルである琉花の級友で、厨二病の様な格好をした銀華は実は闇の狩人で、相反する二人が混じり合う物語。


闇の眷属を滅ぼす為に産まれ、陽の当たらないアンダーグラウンドな世界で生きてきた。
そんな陰惨の中で彼女には夢があった。
異形を倒し尽くして、世の中を平和に出来たら。
それは学校に通う事。
一方で最強のJKたるギャルとして、順風満帆な生活を送っていた。
誰にでも別け隔てなく、博愛の精神で誰とでも仲良くなる。
そんな二人は、互いの事が何故か気になって惹かれていく。
そこから優しく尊い日常を織り成していく。
この世界には自分が素通りしていただけで、素晴らしい事がたくさんある。
吸血鬼狩り以外にも人生がある。

ずっと、闇の世界で血と泥に塗れる闘争の日々に明け暮れた銀華にとって、平和な日常というのは未知の時間であり空間であった。
果たして、そこで自分は今更馴染んでいけるのか。 闇の住人だった自分が、光の差す世界でまともに生きていけるのか。 
一抹の不安は常にあった。
そして、周囲との行き違いと齟齬や、実際に感覚や価値観が追いつかずにトラブルを起こしかけていた銀華を助けてくれたのが琉花であった。
戸惑う彼女に手取り足取り、この平和な日常においての学生生活の過ごし方、楽しみ方をただのギャルとしての日々へと指南してくれる琉花。

破天荒でお節介な振る舞いをする琉花。
異能持ち故に、理不尽に居場所を簒奪された銀華。
互いの存在が、光と影のように相反するからこそ、同時になくてはならない物で。
今まで全く違う環境で生きてきた二人が出会って心を通わせていく中で。
新しい生活になかなか馴染めない銀華の事を琉花が気にかけて、自然と一緒に過ごしていくうちに縮まっていく二人の関係。

日常を優しく紡いでいく少女達が過ごす学園生活と、人を襲う化け物であるヴァンパイアとの闘いが、日常の象徴としてのギャル、非日常の象徴としてのヴァンパイアハンターとして交互に描かれていく。 

誰にも称賛される事なく、世界の平和を守ってきた
ヴァンパイアハンターの銀華。
彼女は、非日常に身を浸しすぎて、世間をあまりにも知らなさすぎた。
そんな彼女に、真っ直ぐな性格のギャルである琉花が、世俗に塗れた女子高校生としての嗜みを教えていく。
ギャルと美少女ヴァンパイアハンターという、凸凹コンビに思われど、蓋を開けてみれば、自分にはない新しい視点をくれる相手の存在がかけがえのない物で。

もっと可愛くなる為の、女子力磨きをしながら、友情を育てた果てに、守る/守られるという関係を超越した尊い感情を芽生えさせていく。
自衛の為に様々な対策道具を貰うも、対策用の銀粉をネイルに加工するという前代未聞の事態をやらかしていく。

今まで陽の当たらない非日常の中で過ごしてきた銀華とそんな銀華を女子高生らしい優しい日常に連れ戻す琉花が培ったコミュニケーション能力を発揮する。
女子同士だが、百合ではなく、あくまで純粋無垢な友情を二人で一緒に紡いでいく。
それは種族という垣根を越えた、多種多様な人々が生活を共にする世界で。
相手をちゃんと承認して、その上で自分も受け入れて貰えるように歩み寄る、理想的な人間関係の築き方でもある。

相手を否定しないコミュニケーションは、自然と笑顔が増えるし、相手の異文化を自分にも取り入れたいと思えるようになる。

琉花という自分にとっての非日常の要素と関わっていく事。
そしてギャル、というのは時に自分の興味のままに、心のままに動く物。
銀華のメイクの下地としての良さに着目し、メイク道具を買いに引っ張り回したり。
時には友達の、ひなるやめいりと共に、カラオケに繰り出したりして。
それは影の中で不遇の時を過ごしてきた銀華にとっては、今まで失われていた時間。
琉花と共に失った時間を取り戻す矢先で。

阻むかのように現れるのは、事態の黒幕。
吸血鬼という大敵が無くなった組織を憂いたからこそ、この現代に吸血鬼を復活させんと企む者。
この事態を解決する為、琉花を置いて、再び闘争の中に飛び込もうとしていく銀華。

だが、もう放っておきたくないと言わんばかりに。大切な人達に背を押されて、琉花はその場に駆け付ける。
せっかく仲良くなった「友だち」を見捨てない為に。 ギャルだからこそ思いついた戦闘方法を携えて。 
それは、今までは、ずっと一人で戦ってきた銀華にとって、何よりも心強い物。
信頼できる仲間に背中を預けられる。
その安心感から、銀華は新たなる力を呼び覚まし、最強の頂きへと返り咲く。

女子高生らしさを知らない彼女にコスメやプリ、親友と一緒にカラオケする楽しさを教える琉花が、眷属に襲われて、陰謀に巻き込まれてもJKならでは、交渉術と創意工夫で銀華に協力して、眷属を追い払う様は、優しい友情の青春としての、ある種の到達点とも言える。
自分の専門分野外だから、知らないで終わらせるのでなく、専門分野外だからこそ、今まで自分の人生のバックボーンを参照にして、アドバイスを施して、共に乗り越えていく。

この限界突破の優しさが別世界に生きてきた彼女達を繋ぎ止める絆となっていく。
立場も人生も関係ない。
そこにあるのは相手を想う友情だけ。 

最強な彼女達の裏側では、まだ不穏が世界で胎動している。
しかし、そんな物は華のJKである自分達には関係ない。
どんな苦悩が押し寄せても、一度きりの青春をけして曇らせる訳にはいかない。
また、日常を始める中で二人にとっての夢を探し求める中で。

これからどんな夢を見つけていくのだろうか?
光と影が混じり合った先にある、青春の行方は?

かけがえのない大切な日常を取り戻した彼女達は、二人で最強の青春を紡いでいくのだ。



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